第二話 相馬一の過去
第二話 相馬一の過去
「そう言えば、何でイマイチは『イマイチ』って呼ばれるようになったんだっけ?」
「イマイチって言うなっつってんだろが。ていうか、小3で俺が転校してきた時からずっとクラス一緒だっただろ。何でそのことを覚えてないんだ」
「いや、みんなが『イマイチ』って呼ぶから俺も呼んでたんだけど」
「ちょい待て。そもそもイマイチって最初に呼んだのマケルだろ」
「そうだっけ?」
「ああ、そうだよ!! 最初の自己紹介の時に黒板に“相馬一”って書いたらお前が『あ、いま、いち?』って言ったから、それを聞いたみんなが『あ、いまいち!!』っていうようになったんだろうが!」
「覚えてないや~」
「…………テメェ」
「でも、イマイチだったのは本当だろ。頭が良い訳でもなく、そこまでカッコいい訳でもなく、運動が凄く得意な訳でもなかったんだから」
「確かにそうだったけど!! そうやって言われると傷つくんだよ!?」
「あら、ごめんあそばせ」
「キモイ」
「今、俺も傷ついた」
「自業自得だボケが。俺はそれ以来、何かをする度に『やっぱりイマイチはイマイチだな』とか言われ続けたんだぞ」
「それを言ったら、俺だって勝負に負ける度に『マケルはやっぱり負けるんだな!』とかニヤニヤしながらお前に言われたんだが」
「俺だけじゃないだろ」
「そうだけど、一番イマイチに言われた気がする」
「イマイチって呼ぶな、ってのもお前に一番言ったな」
「「やれやれ」」
「「ってこっちの台詞だ!!」」
「「マネすんな、ゴラァッ!!」
「何ハモってんのよ、二人とも。漫才の練習?」
「その発言はおかしいぞ、塚井。誰がマケルと漫才なんかするかよ」
「だからこっちの台詞だっつってんだろが!!」
「んだと、ア゛ア゛ッ!!」
「だから、それが漫才に見えるってば」
「しょうがねぇ、緒世もこう言ってることだし。ここは大人な俺が引き下がってやるとするか」
「誰が大人だってー? ちゃんちゃらおかしいぜ、マケルくーん?」
「その態度を改めなさいって言ってるのよ」
「「うるせえっ、このおせっかいが!!」」
「何よ!! あんた達こそいい加減にしなさいよ!」
『……あの三人、コントの練習でもしてるのか?』
イマイチという言葉は「いまひとつ」から来ているそうですが、「今一番」という意味でイマイチ!と使ってはいけませんかね。「こちらの商品、イマイチの売れ行きです!」とか。ネガティブキャンペーンかな?