第十一話 富家鷹夫の休日
第十一話 富家鷹夫の休日
「おいマケル。もしかしてあそこにいるの富家じゃないか?」
「え? あのおじさんが? いや、あれは違うでしょ」
「でも富家って普段は制服着てるからごまかせてるけど、顔とか完全にオッサン顔だろ」
「いやいやいやいや。いくら顔が老けてるからって私服までおじさん服とは限らないよ」
「まあ、だよな。さすがの富家もあんなオッサンくさいダッセェ私服じゃないよな」
「うん。あのセンスは鷹夫君じゃないよ」
「…………あの、二人とも」
「何すか、オッサン」
「俺達になにか用ですか?」
「僕、富家鷹夫なんだけど」
「……まじで?」
「……聞いてた?」
「…………聞こえてた」
「すまん! まさか本当に富家だったとは思わなかったんだ」
「ごめん。いくら鷹夫君でもさすがにそんな服は着ないと思ってたんだ」
「二人ともフォローになってないよ」
「いやー、それにしても偶然だな。休日に街中で出くわすとは」
「俺達はゲーセンで遊ぶつもりだったんだけど、鷹夫君は?」
「実は僕もゲーセンに行く途中だったんだ」
「パチンコか? スロットか?」
「いやいや、競馬ゲームでしょ」
「どっちも違うよ。普通にUFOキャッチャーとか、格ゲーとかだよ」
「「意外」」
「…………僕ってみんなからどんな風に見られてるんだ」
「え? オッサン」
「う~ん。おじさん?」
「みんなと同い年だよ! むしろ3月生まれだからみんなより少し年下だよ!!」
「へー、そうだったのか」
「それにしても、暑いね」
「早くゲーセン行こうぜ」
「あっ、ちょっと待って。ここに自販機あるけど、何かおごろうか?」
「じゃあ俺、ペプシ」
「いいの? 綾鷹でお願いします」
「分かった。――はい、どうぞ」
「ありがとな。さすが社会人は違うな」
「学生だってば!!」
「ところで、鷹夫君は何を買ったの?」
「え? エメマンだけど?」
「「オッサンか!!」」
細胞は酸素を取り込むことでエネルギーを発生させますが、取り込む酸素の量が多いと早く細胞としての寿命が尽きてしまうそうです。逆に言えば酸素の薄い場所に住んでいれば、その分細胞の寿命は延び、ひいては生き物としての寿命も延びるのではないでしょうか。伝説上の仙人とはそういった環境にいたのではないでしょうか。
ところでこの知識を基に私は小学生の頃、陸上をやっていた老け顔の友人は陸上をやっているから常人より酸素を多く取り込んでいて、そのために老け顔になってしまったんだと思っていました。
子どもの頃の自分に「ちょっと待て」と言ってあげたいです。




