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ドワーフの長老

 リンとはサクへの連絡を頼み、エルフの集落で別れた。モグには別行動でノーム族を動かしてもらうように指示を出した。

 ノーム族はそれほど好戦的ではない。穴を掘ることができれば、支配者が変わろうと問題ないという人種なのだ。そんなノーム族がエルフの味方をしていたのは、エルフが精霊族の代表だとノーム族が認めているからだ。

 エルフは人間との仲介役であり、精霊族の守り神、彼らが王国と協力するのであれば、ノーム族は協力してくれるはずだ。


「ココナにちょっと聞きたいんだが、今のドワーフ達をどう思う?」

「どうとは?」

「ゴルドナのオッサンが大将なのはわかるけどさ。本来ドワーフって何を考えてるんだ?」

「ドワーフは勇敢で勇猛、義理に厚く人情家」


 ココナはドワーフが好きなのだろう。言葉は良いように聞こえるが、勇敢で勇猛は喧嘩っ早くて気性が荒いともいえる。義理人情に厚いのはいいが、ある意味仲間しか信じない頑固者が多い。


「そうか、頑張らないとな」


 ココナは俺よりも年上だが、言葉数が少なく幼く見えてしまうところがある。ついつい何かあるたびに頭を撫でてしまう。

 ココナと簡単な会話をしながらドワーフ達の街に入る。ドワーフの街は国境の街に一番近く。帝国から武器の生産を無理やりやらされている。


「ココナ、どこに行けばいい?」

「長老様のところ」

「長老様?」

「そう、私のお爺様」

「なるほどな」


 ココナはゴルドナの娘だ。ということはドワーフの大将とうことだ。長老を動かすことができればドワーフが味方についてくれるかもしれない。


「こっち」


 ココナに連れられてドワーフの街を歩いていく。ドワーフの街は其処等中に鉄くずや皮、木くずが落ちており、魔石や素材なども木箱に山積みとなっている。様々な物が建物の中だけでなく外にまで放置されている。


「凄いな」

「そう?」


 俺の呟きにココナは首を傾げる。ココナからすれば見慣れた光景なのかもしれない。それでも、彼らが職人の集まりだと理解させられる。

 ココナに付いて街の中心部に向かうと、ドワーフ以外の人影を見ることもあった。殆どが武装した兵士だったが、まるでドワーフを監視するように警戒した視線を向けている。


「嫌な雰囲気だ」


 国境の街で感じた雰囲気と同じで、勝者が監視し、敗者がこき使われるそんな光景を目にしてしまう。


「ここ」


 ココナが指を差した場所は、人一倍汚い建物だった。


「本当にここか?」

「うん。ここ」


 鉄くずやら木材やら、他の建物より量が多くて玄関も見えないぐらい酷い。


「ハァ~とりあえず長老に会えるか?」

「会える」


 そういうとココナは、鉄くずをどかしながら中に入っていく。ココナに続いて中に入れば、炉からもれる火の光が見えてきた。部屋中サウナのように熱く汗が止まらない。


「誰じゃ!熱が冷めるじゃろ。早く閉めよ」


 怒鳴り声に急いで扉を閉める。 


「すみません」

「ふん」


 部屋にいたのは白い髭を顔一面に生やした小さい爺さんだった。

顔にはゴーグルをしているのに、タンクトップとアンバランスな服装をしている。


「爺様」

「うん?なんじゃココナか、ゴルドナはどうした?」

「父様はいない」

「そうか、まぁええ。ちょっと手伝ってくれ」

「わかった」


 ココナは爺様に言われるがままに手伝いを始めた。何かを言う暇がなかったので、とりあえずは待つことにした。

 それから二時間ほど見ていると炉の中から出て来た溶けた鉄がバスターソードへと完成した。熱さで朦朧とするが、もっと熱い場所で作業をしている二人を見ていると俺もワクワクしてくる。俺も自己流ではあるが、鍛冶をするのだ。爺様の動きに無駄がなく洗礼されているが分かるので、見ていて飽きない。

 二時間で一本の剣を作るなど、かなりの速さだと思うが、どうやら思っていたできと違うらしい。


「ふむ。失敗じゃな」


 そういうと爺様は叩いた剣を炉に戻した。


「そろそろ声をかけてもいいか?」

「うん?なんじゃ客か?」

「爺様、王国の人」

「それならばそうと先に言わんか」


 どうやらやっと話ができるらしい。


「爺様が話を聞かなかった」


 なんとなく血脈が分かるというものだ。頑固で義に厚いゴルドナの父親は頑固一徹の職人だった。


「それで王国の者がこんなところになんのようじゃ?同盟を結ぼうにもあのお方は帝国に下ったじゃろ」

「今は王国の捕虜になってる」

「なんじゃと!」


 今にも剣を持って王国に向かいそうな殺気を放ってこちらを見てくる。


「現在帝国八魔将のお一人、ハイエルフ、シーラ・シエラルク殿は我がガルガンディアに幽閉させていただいております」

「そんなことができるはずがなかろう。あのお方の魔力は柔ではないぞ!」

「はい。ですから、念には念を入れて魔力を抑える鎖につないでいます」

「魔力を抑えるじゃと!」

「はい。魔力は外から得られるモノと内で作るモノが存在するのはご存知ですか?」

「もちろんじゃ。我々は外の魔力が塊なった魔石を使って武器を作るのじゃからな。その武器にも我々の魔力を込める。内なる魔力と外なる魔力を合わせることで強力な魔剣や魔槍を作ることができるのじゃ」


 俺の説明は職人にしかわからない。本職の鍛冶職人は理解しているのだ。


「なら話は簡単です。その内なる魔力を封印し、外の魔力を操作できないようにしました」

「そんなことが!」

「できます。スキルには魔力遮断と呼ばれるモノがある。それを魔石に混ぜ込み武器に練り込めばいい」


 爺様は俺の言葉に興味を示したようだ。俺は自分の武器は自分の手で作りたいと思っている。ある意味鍛冶職人の気持ちは良くわかると思う。


「そんな方法が……お主名前はなんという」

「ヨハン・ガルガンディアです」

「ふむ。ワシはゴルドーじゃ。もう少し詳しく話を聞かせえ」

「爺様、今は急ぎ!」


 職人の顔になって詰め寄るゴルドーを止めたのはココナだった。


「邪魔するでない、ココナ」

「ダメ!父様の命がかかってる」

「なんじゃと!詳しく話せ」


 先程の職人の顔から家族を心配する爺さんの顔になる。


「それは俺から話しますよ」


 俺はシーラ・シエラルクとゴルドナを捕虜にしたこと、そして帝国領になった精霊族の縄張りを俺の力で取り戻す話をした。


「本当にそんなことができると思っておるのか?」

「できる。やらなくちゃならないんだ」

「うーん。わかった。お主は鍛冶の仕事を理解しておるようじゃしな。ワシ等を悪い様にはせんじゃろ。お主の申し出受けさせてもらう」


 ゴルドーはあっさりと俺の提案を受け入れた。あまりにもあっさりとした回答に逆に聞き返したほどだ。


「どうして信用してくれたんだ?」

「一番は帝国が嫌いじゃからじゃ。しかしな、お主は職人の目をしておった。職人は職人を理解する。ワシの持論じゃが、お主は何かを成してくれる。そんな気がするのじゃよ」


 俺に応えたゴルドーはニカッと好々爺の顔をしていた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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