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マドルクの手記

再開しましたが、まだ身体が本調子ではないため、一日置きに更新させていただきます。ご迷惑をおかけします<m(__)m>

 エルフを仲間に引き入れる条件を明確に理解した俺は立ち上がる。


「どうするんや?」


 黙って話を聞いていたモグは、だから無理だと言っただろと言いたげな顔で俺を見る。シェーラを見れば申し訳なさそうにしており、ココナもどうしようもないと目を瞑っていた。


「では、王国がこの森を手に入れれば問題ありませんね?」


 そんな精霊族とは別に、リンが言った言葉は俺自身が考えていたことだ。


「そんなことができる思てんのか?」


 モグはリンにすぐさま反論する。


「どうなんや!」

「できる……でしょうね。そうですね、ヨハン様」


 リンはさも当たり前だと言う風に俺に話を振ってきた。俺に注目が集まる。


「できる……かもしれない」


 俺はリンの言葉を肯定するように言った。


「ホンマか?ホンマにそないなことできるんか?」


 そんな俺にモグが詰め寄ってきた。いつものチャラけた雰囲気ではなく。真面目な顔で詰め寄る姿はどこか切迫していた。


「若者よ。自分が何を言っているのかわかっているおるのか?」


 モグほどではないが、マドルクも真剣な顔で俺を見ていた。


「ええ、わかっています」

「無謀だとは思わんのか?」

「思いません。我が王国は、実際に帝国と戦っている。負けるつもりもありませんし、その際にエルフの領土を奪い取るのも当たり前だと思います」


 俺の言葉にマドルクもモグも落胆したような顔になる。


「なんや、結局先の話しかい!期待して損したわ」


 モグは俺に吐き捨てるように言って座り込んだ。


「若者よ。そなたも人が悪いな。期待させておいて落とすなど」


 モグと同様に何か気づいたマドルクが、睨みをきかせて威圧を放った


「いえ、エルフの森を取り戻すだけならばすぐにでもできるでしょう。ですが、それには俺達だけじゃだめだ。他の精霊族の力も借りる必要がある」

「どういう意味だ?」


 俺の言葉を理解できなかったマドルクが続けて質問してくるが、俺はそれに応えることはなかった。


「マドルクさん、ここには本などありますか?」

「本?そんなものはないが」

「ないんですか?では、誰かが書いた書物は?」

「言いたくはないが、私が書き綴った手記ならばある。私も千年近く生きているからな、普通の人間族からそれば貴重な物だと思うが」

「それを読ませてもらうことはできませんか?」

「そんなものを読んで何をするつもりだ?」

「俺の趣味みたいなものです。俺はガルガンディアを本の街にしたい。あなたが書いた物が価値ある物ならば読ませてほしいのです」


 俺は熱意を持ってマドルクに詰め寄った。マドルクも自身の書いた物が価値があると言われて悪い気はしないようだ。


「しかし」

「では、もう一食作ります。それの代わりでは?」

「まぁ多少はよかろう。ついてまいれ」


 俺はマドルクにもう一食、食事の用意をする約束をして手記を見せてもらうことに成功した。千年を生きるエルフが書いた手記は膨大な量があり、一軒の小屋ができるほどだった。


「ここだ」

「こんなに!ありがとうございます。では一日籠らせてもらいます」

「一日?」

「ええ、集中したいので。リン、後は頼むぞ」

「はい。良しなに」


 エルフの里に一泊することを決めて、俺は小屋の中に入った。量が多いので、俺はスキル覧から速読スキルを修得した。速読は自分の読むスキルを倍化させてくれるのだ。量が多いため古そうな書物を手に取り読みふける。

 内容としては狩りの仕方やモンスターの種類、時代の流れや精霊魔法の修行内容など多岐に渡り、それぞれの項目に纏めればちゃんとした本になるのではないだろうかと思える。


「これは価値が高いな」


 俺は一日全てを使って手記を読んだ。まだまだ膨大な量が残っているが、リンが小屋に入ってきて声をかけてきた。


「ヨハン様」

「もう一日か?」

「はい。お時間がありません」

「何かあったのか?」

「帝国が動きました。マドルク様の話によれば、セリーヌ領に侵攻していた巨人族が西に向かったそうです」

「黒騎士に加勢するか?」

「はい。我々にも召集命令がかかるかもしれません」


 巨人が介入すれば、第二軍は圧倒的不利な状況になる。俺達にまで召集がかかるとは思えない。帝国と王国の動きが激しくなってきたのは都合がいい。


「好機だな」

「はい?」

「いや、モグにノーム族の協力を頼んでくれ、それとサクにゴブリン部隊の出撃を」

「出撃?どこに向けてですか?」

「もちろん国境の街に向かってだ。辺境であるこの森を実質支配しているのは国境の街だ。そこを落とす」

「早速動かれるのですね」

「ああ、こんなところで待っていても始まらないからな」

「かしこまりました」


 リンに指示を出した俺は、ココナの下へ訪れる。


「ココナ、力を貸してほしい」

「何?」

「ドワーフを味方につけたい。どうすればいい?」

「人間を倒せば問題ない」

「どういうことだ?」

「ドワーフは帝国が嫌い。だから、帝国の人間を倒してくれれば仲間になると思う」


 ココナの言葉は正直信じられなかったが、仲間になる可能性があるのならば、動くには問題なかった。


「わかった。なら街に帰りがてらドワーフに、会いに行こう」

「はい」


 ココナの顔はあまり感情を表さないが、覚悟を決めたような顔をしていた。

 


いつも読んでいただきありがとうございます。

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