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エルフの長老とすき焼き

ゴールデンウィークですが、まだ未定ですが、何度が更新をお休みさせていただくと思います。事前にご連絡しますので、ご理解いただきますようお願い致します<m(__)m>


いつも読んで頂きありがとうございます。

 モグの案内で俺達がまず向かったのは、エルフの集落だった。国境沿いの街を抜けて三日ほど歩いたところで、エルフの森にたどり着いた。

 俺がエルフを一番に選んだ理由としては二つある。彼等は気難しい者が多くいるらしく、住んでいる場所を変えるなど承諾してくれるかわからなかったからだ。もう一つに関しては後々にわかると思う。


「本当にここがエルフの森なのか?」

「そうやて言うてるやろ。何度も言わすなや」


 先ほどから同じところグルグルと回っている。同じ木、同じ広場に出て来るのだ。


「シェーラ、どうだ?」

「多分、迷わせられてる」

「やっぱりか」

「なっ、なんでや!おらが一人で来たときは、すんなり通してくれたんやで」


 モグには何が起きてるのかわからないようだ。リーダーの自覚があるのか、焦って走り回り出した。モグが真っ直ぐ走って行ったはずなのに後ろから出て来た。


「決まりだな」

「そうですね」


 俺の言葉にリンが返事をする。


「シェーラ、どうすればいい?」

「ちょっと待ってください」


 俺はエルフの王族であるシェーラならばどうにかなるのではないかと問いかけると、シェーラは目を汲んで座禅を組む。シエラルクのときと同じだ。シェーラが精霊魔法を使うために精神統一を始める。


「とりあえずは待ちだな」

「そうですね。食事にしましょう」


 アイテムボックスの中から人数分の食料は取り出す。


「助かります」

「必要な調味料があれば言ってくれ」

「ヨハン様は料理をなされないのですか?」

「うん?そうだな、久しぶりにやるか」


 ガルガンディアに来てからは忙しい日々のせいで趣味になりつつあった料理をしていなかった。ランスと居たときや、第三魔法師団にいたときは、料理を作るたびにリンが食べに来ていたことを思い出す。


「材料は何があるんだ?」


 俺はリンに渡した材料を確認すると、卵に鳥肉、白菜や長ネギがある。後は各種キノコが数種類。


「水も余裕はあるけど、飲み水として置いておきたいな。今回は醤油と砂糖があるからあれにするか」

「何かお手伝いできることはありますか?」

「じゃあ火を起こしてくれるか?」

「はい」


 シェーラには集中してもらうとして、他の者には俺が料理をすることを告げて休憩に入る。モグは未だに走り回っていたが、とりあえず無視しておこう。


「まずはそれぞれの食材を一口大に切ってと、今回は関西風にしてみようか」

「関西風?」

「ああ、いいから気にしないでくれ」


 俺の独り言にリンが問いかけてきたので、手を振って料理に集中する。


 底浅の鍋を取り出して、肉を焼いていく。鳥肉なので周りを焼いてから砂糖と醤油で味を整える。肉の次にキノコや白菜の茎を入れて、ひと煮炊きさせる。最後に長ネギを入れて温まったところで完成だ。


「さぁ、できた」

「わぁ~良い匂い」


 最近は冷静な素振りを見せるようになったリンが暴食の顔を現す。そういえば初めてリンと会ったときも食事をして仲良くなった気がする。ココナやシルとも食事をすれば仲良くなれるかもしれないな。


「量はあるから、ちゃんと分けてからな」

「はい!あっ、一番はココナさん食べますか?」


 新入りであるドワーフ娘にリンが器を差し出す。


「いい。先どうぞ」


 リンの瞳に気をされたココナはリンから器を受け取ることを拒否する。リンから早く食べたいオーラが出ていたのだろ。


「遠慮しなくていいのに、じゃあ先に頂こうかな」


 リンは嬉しそうに器の中に匙を入れる。口に入れると鶏肉の出汁に醤油と砂糖の甘辛い風味が口の中に広がっていく。鶏肉は柔らかいのに歯応えがあって、お肉と一緒に口に入ってくるネギや白菜のシャキシャキとした食感が口の中をサッパリとさせ旨味を強調している。


「スゴイです。スゴイです。やっぱりヨハン様の料理は他の人と何かが違います」


 リンは興奮気味に器の中を空にしてお代わりしていた。


「まだ、たくさんあるからゆっくり食べろよ」


 俺は鶏肉や野菜たちを追加で煮ていく。リン以外のメンバーにも注いで渡してやる。


「美味しい……」


 感情の起伏が少ないココナにも受けがよかったようだ。笑顔で食べてくれている。シェーラ用にも分けておき、シル用に小さく切って、器も小さい物を渡してやる。


「うっわ~凄くおいしい」


 ウマウマ言いながらシルが美味しそうに食べている。妖精の食べる姿は癒される。


「おい!何を和んでんねや!」


 あきらめて帰ってきたモグが息を切らして、俺に近づいてきた。


「おかえり。まぁとりあえず落ち着いて、これでも食べてろ」

「なんなんやまったく」


 モグは俺に差し出された器から鶏肉を取り出して口に含んだ。


「なんじゃこりゃ!!!めっちゃ美味いやないか。なんやこれ?」


 モグは鶏肉を食べた瞬間に立ち上がって俺に詰め寄ってきた。口の中の物を飛ばしながら話すのは止めてほしい。


「なんだ。うるさいな」

「うるさいちゃうわ。なんやこれ!美味すぎるやろ」

「そうか?ならよかったじゃないか」

「ええけど、なんの料理なんや」

「すき焼きだけど?」

「すき焼き?そんな料理初めて聞いたで、なんなんやそれ?」

「鍋だな。鍋で肉とか野菜を煮て食べてる」


 俺の簡単説明にモグはもう一度器を見る。


「こんな料理があるんかいな」


 モグはなんだが一人で感動しながら食べていた。


「ふむ。私にもいっぱいもらえるかな?」


 俺はいきなり見知らぬ爺さんに声をかけられ驚いた。顔は髪なのか髭なのかわからないぐらい毛が多い。どこかの浮浪者だろうか?それともエルフに迷わせれた憐れな人間か、俺は不憫に思って鍋を注いでやる。


「いいぜ。爺さんがどっから来たか知らないが、一緒に迷っているよしみだ」


 俺はエルフに化かされた爺さんだと判断して器にすき焼きを入れて渡してやる。


「ふむ。確かに美味いな……お主、名前はなんという?」

「うん?ヨハンだ。爺さんはなんて名前なんだ?」

「ワシか?ワシはマドルクだ」

「そうか、マドルク爺さん。迷って疲れただろう。一緒に腹を満たして温まろうぜ」

「ふむ」


 マドルクは静かに器の中の物を食べ切りホッと息を吐いた。料理を作っていて気付かなかったが、いつの間にか辺りが明るくなっていた。


「シェーラがやってくれたか?」

「ご主人、私は何もしてないよ」


 いつの間に戻ってきていたのか、シェーラもすき焼きを食べていた。


「うん?そうなのか?でも、なんだが辺りが明るくなった気がするけど」

「うーん、それはこのお爺さんのおかげだと思う」


 シェーラが指差す先を見れば、すき焼きを食べ終えたマドルク爺さんがいた。


「どういうことだ?」

「この方はハイエルフだよ」


 シェーラの言葉に俺はギョッとする。髪が長いせいで、気付かなかった。


「爺さん……」

「美味そうな匂いがしとったからの。まぁなんじゃ、一食の恩は返そう」


 知らぬ間にハイエルフのおびき出しに成功していたらしい。

いつも読んで頂きありがとうごうざいます。

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