表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/240

過酷な現状

今日から本編スタートです。

 ガルガンディア攻防戦から数日が経ち、俺の下にいくつかの情報が入ってきた。


「サク、報告を読み上げてくれ」

「はい。今の情勢ですが。現在王国の最西では不可解な魔法により、シンドリアの街が消滅し、周辺が死の大地に変わったと連絡が入っています。また敵の主力部隊である黒騎士、闇法師率いる元共和国の傭兵及びモンスター軍団は我が第二王国軍と交戦に入った模様です。ですが、最初こそ派手な戦闘があり、死者も出たようですが、現在は膠着状態にあり、第二軍総大将ミゲール様の作戦が上手くいっています」


 西から順番に報告される内容を聞きながら、俺は頭の整理をする。


「予想外のことと言えば、今回戦場になるはずではなかったセリーヌ領にて、巨人の襲撃を受けたと連絡が入っています」


 セリーヌ領には敵の気配がないと報告を受けていたので、これには俺も驚いた。


「ミリューゼ様は無事なのか?」


 立ち上がって声を上げてしまう。あそこは他の戦場への物資の搬送などを任されていたはずだ。


「ミリューゼ様、六羽の皆さん健在です。現在は巨人を退け、セリーヌ領で他領へ物資の搬送を行なっています」

「退けた?」


 俺の顔には疑問が浮かんでいたことだろう。ミリューゼは姫将軍と言われるほど戦が上手いことは知っている。六羽の面々も決して弱くはないだろう。

 だが、『騎士に成りて王国を救う』に出て来る巨人族はドラゴンと同等ぐらい強力な敵なのだ。倒せるとすればある程度成長した主人公であるランスとその仲間になるはずのヒロインたちぐらいなのだ。


「はい。ミリューゼ様の下へ第一軍から派遣されていた名誉騎士ランスがミリューゼ様と協力して巨人を退けたようです」


 俺は椅子に腰を下して顔がニヤけてしまう。さすがは主人公、ヒロインのピンチに駆けつけるとか、格好良すぎるだろう。


「そうか、他に報告はあるか?」

「私は以上ですが、モグ殿が戻っておられます」

「モグが!すぐに通してくれ」


 俺がエルフとドワーフを味方にできるか、それはモグにかかっている。数日経った今でもシエラルクは首を縦に振らず、シエラルクに賛同しているゴルドナも同じように首を縦に振っていない。

 それもこれも帝国に残してきた家族がいるからである。その家族を全てガルガンディアに移住できれば、彼らも納得してくれると思うのだ。


「失礼します」


 モグの声が聞こえ、扉が開いた。相変わらずのサングラス姿のモグが執務室に入ってきた。


「ご苦労だった。それでどうだったんだ?」

「まぁ待ちいいな。帰ってきてすぐやで、茶の一杯でも飲ませろや」


 遠慮のないモグの言葉が耳に心地いい。


「サク、リンに言ってお茶を頼む」

「はい」

「お茶は頼んだから報告を先にしろ」

「ホンマ人使いの荒い人やで、まぁ現状、正直厳しいやろな」

「厳しい?何が厳しいというんだ?」


 モグの話を要約すると、エルフ、ドワーフ、ノーム、シルフィーの妖精族たちはバラバラの集落を与えられて暮らしている。さらに常に村ごと監視が付いたままだそうだ。

 それだけではなく、戦闘のために戦力となる若者は全て駆り出されており、村にいるのは乳飲み子のような幼い者と老人ばかりだと言う。


「まぁ爺婆は頑張れば歩けるやろうけどな。子供に関してはガルガンディアまでは歩けんで」


 モグはリンが持ってきたお茶を飲んで一息つき、言葉をいったん切る。


「何か方法はないか?」

「正直何も思いつかんな。おら達ノーム族は穴を掘れれば仕事にありつける。やから山に住みついて穴を掘る仕事をしとる。エルフは森で軟禁状態。ドワーフは人間の町に一番近いところで武器作り、シルフィーに関しては女王はんが捕まってもうてるみたいや。シルフィー全体は女王様がおらなどうにもできんやろ?」


 モグの言葉に会議の時に座っていた妖精の女の子を思い出す。どうやら、あれは女王の分身体で話を聞いてたらしい。


「かなり過酷な状況だな」

「せやろ。こんな現状どうしようもないで……」


 モグは溜息を吐き、両手を広げる。


「サク、例の件を実行に移すことになりそうだ」

「そのようですね」


 俺の言葉にサクは諦めたような顔をする。


「パーティーメンバーは俺、リン、シェーラ、モグでいく」

「わかりました。ですが、ドワーフとシルフィ―をお連れください」

「理由は?」

「それぞれの種族の者は、同じ種族の者を好むと思いますので」

「そうだな。一理ある」

「なんや何なんや!さっきから二人で話ししいなや。おらにも説明してぇな」


 モグがシビレを切らして、二人の話に割り込む。


「うん?」

「うん?やないやろ。おらに説明せい言うてんねや」

「モグの話を聞いて、予想が確信に変わっただけだ。俺達も簡単に帝国から精霊族を奪えるなんて思っていない。だからこそ、彼らを導く存在が必要だろ?」

「だからなんやねん」

「だから、俺が行くんだ」

「はっ?何言うてんねや。あんさんここの領主やろ?領主がそないホイホイおらんくなってええんか?」


 モグの突っ込みも聞き飽きてきた。


「別にかまわないぞ。元々俺は領地経営は向いてないし、実際、経営自体はジェルミーに丸投げ状態。軍関連はサクが対応してくれるしな。今回の戦闘でも前線に出てたし、俺は元々冒険者だからな。貴族なんて柄じゃないさ」


 俺の言葉にモグは頭を掻く。


「ホンマ変わった奴やな」

「お前にも付き合ってもらうぞ」

「へいへい。付き合わせてもらいます」


 ドワーフからはゴルドナの孫娘であるココナ。シルフィ―からは女王の分身体であるシルがついてきてくれることになった。


「じゃあ、行ってくるから後は頼むな」

「ご武運を」


 サクとジェルミーに見送られて、俺は帝国へ潜入するためガルガンディアを後にした。

いつも読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ