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閑話 アリルーア草原の戦い 2

久しぶりの昼投稿です。

 トッカツは私兵を率いて草原へと躍り出る。それを見た帝国兵からも部隊が向かってきた。


「やぁやぁやぁ!我こそは王国随一の大剣使いトッカツである。我と戦う勇者はおらぬか!王国の力に恐れを抱くならばそれも仕方なし」


 トッカツの挑発に応える部隊は、傭兵部隊を預かる爆弾頭のバクジーである。


「けけけ、自ら名乗って死に来る騎士など笑いのネタでしかないな。バカかお前は」


 巨大なモーニングスターを片手で担ぐ爆弾頭のバクジーに笑われ、トッカツが怒り出す。


「騎士を笑う者は貴様か、ならば貴様が私の相手をするか?」

「いいぜ。ご自慢の大剣やらを見せてみろよ」


 モーニングスターを振り回し、馬に跨るトッカツを挑発する。


「よかろう、一刀のもと斬り伏せてくれよう」


 トッカツが馬の腹を蹴り、疾走を開始する。互いの隊長同士の戦いに、帝国側はやんややんやと盛り上がり、トッカツの私兵たちも声援を上げ続ける。


「御託は良いからかかってこいよ」


 一騎打ちを開始した両者の周りでは、チャハーンとパッスタが露払いの戦闘を繰り広げている。互いに数は一万、中央で繰り広げている一騎打ちと打って変わり、こちらは混戦の最中、両貴族の働きにより戦いは互角よりもやや王国優勢に運べていた。


「ゆくぞ!」

「おうよ!」


 トッカツの疾走を真正面から爆弾頭のバクジーが受け止める。反撃の巨大な鉄球がトッカツめがけて振り下ろされ、地面が地響き上げたことで馬が身を引く。


「小癪な」

「馬などに頼るからそうなるのよ」


 爆弾頭のバクジーの挑発にのり、トッカツが馬から降りる。騎士が馬から降りれば、その重たい鎧に足をとられ遅くなるとバグジーは考えていた。

 しかし、トッカツはその程度で衰えるほど、弱い騎士ではなかった。馬から降りるとバグジーへ向かい駆け出す。重たい鎧を着ているとは思えない速度に、モーニングスター以外は軽装のバグジーは大いに慌てて、鉄球を振りかぶる。


「遅い!」


 鉄球が振り下ろされるよりも先に、トッカツの大剣がバグジーの身体を真っ二つに引き裂く。


「グハッ!」

「バグジー様がやられたぞ!」


 バグジーの取り巻きが大きな声を張り上げる。


「なにっ?こいつがバグジーか」


 敵の名を知り、トッカツはにやりと笑う。


「敵将爆弾頭のバクジー、トッカツが討ち取った!」


 爆弾頭のバクジーに剣を突き刺して、トッカツが名乗りを上げる。王国側の兵士は歓声を上げ、トッカツの勝利に呼応するように勢いを増していく。


「このまま一気に黒騎士の首、もらい受けるぞ!」


 トッカツが叫ぶのと同時に王国兵が宙を舞う。パッスタが守護していた左翼から人が舞うように飛んでくるのだ。


「何事だ!」

「敵襲です」

「何っ?どういうことだ?」

「黒馬が我が軍を突っ切ってきます」


 急いで馬に乗り、人が舞う方を見れば、そこには黒馬に乗り、黒い鎧に身を包んだ男が単身突っ込んでくる。


「バカな!これだけの兵の中を一騎だと」


 トッカツが見たときにはパッスタが迎え撃つところだった。パッスタは細身の体を生かしたしなやかな両剣使いだ。馬の扱いも巧みで両方に剣を持ったまま馬を足だけ操ることができる。


「我こそは王国随一の双剣使い!黒騎士とお見受けいたす尋常に我と勝負を!」

「邪魔だ」


 パッスタが名乗りを終えると同時に黒騎士がパッスタの横を通りぬける。黒騎士の動きに付いていけなかったパッスタは、自身が死んだこともわからぬうちに真っ二つに切り裂かれた。


「バクジーをやった者よ。我と死合え!我こそが八魔将が一人黒騎士アンリである」


 黒騎士はトッカツの下へ向かいながら、叫び声を上げる。それに呼応するように、トッカツも黒騎士に向かって馬を走らせる。その身だけで二メートル近いトッカツが馬に乗れば、三メートル以上の大男となる。

しかし、トッカツも昔から大きかったわけではない。戦闘訓練を続けていく内に強く大きくなった。

 そのため小兵時代は剣に明け暮れ、剣を磨くことを生きがいとしていた。


「我こそが、バクジーを討ったトッカツである!」


トッカツの名乗りに応じるように黒騎士が一直線に戦場を翔る。


「トッカツ!その首もらい受ける」

「貴様を倒せば我々王国の勝ちだ」

 

 トッカツはその巨大な体と長い腕を振り回す。リーチはトッカツの方が有利であり、勢いに任せて大剣を振り黒騎士を近づかせない。


「振り回すだけが騎士か?」

「笑わせるな。貴様の勢いを止めたに過ぎんわ」


 戦場を一直線に向かってきた黒騎士の勢いを止めるための牽制に成功した。


「見よ。我が剣技を」


 トッカツが大剣を肩に担ぐように引いて、馬ごと一歩下がる。踏み込む力と共に、大剣を黒騎士へと振り下ろした。


「笑わせる。それが剣技だと?」


 只々力任せに振り下ろされる剣は大剣の重みも加わり、恐ろしい速度を生み出す。威力もそれに比例するように黒騎士が立っていた場所にいた兵士数十人を一気に殺し尽くした。


「当たらなければ意味がないな。スマッシュフレア」


 黒騎士が持つ黒曜剣は炎を纏い、連撃が繰り出される。


「笑止!小細工が通じると思うな!」


 黒騎士の攻撃に対して、トッカツも振り下ろした大剣を振り上げながら風圧を生み出す。


「トッカツ、やるな」

「黒騎士よ。貴様の首もらい受けるぞ」


 トッカツは馬を反転させる。そのまま一回転するように剣が横薙ぎに振られる。


「大回転扇舞」


 トッカツの大技が黒騎士の身を襲う。


「面白い技だが、終わりだ」


 黒騎士は黒馬を踏み台に、空中に跳びあがる。トッカツもそれを読んでいたのか、回転を空中に向ける。


「黒流星」


 黒騎士は足元に炎を出現させ、自身の落下速度を倍増させる。勢いに任せた両者の激突は、黒騎士が馬に乗ったところで着いた。


「グー!」


 トッカツ剣を握っていた左腕が肩から無くなっていた。馬は膝を突き、立つこともできない。


「キラー!」


 黒騎士の叫びに応えるように金色の髪をした美しい女性がトッカツの首を切る。


「終わりました」

「次だ!」


 黒騎士はトッカツとの戦いに後を濁さず、チャハーンの首を取り、戦場を後にした。

その後ろには美しい金髪の女性が付き従っていたという。

 


いつも読んで頂きありがとうございます。

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