閑話 第一王女と巨人の侵略
今日からAM11時に戻せたら戻していきます(*^_^*)
帝国の間に大きな運河存在する。第二の砦セリーヌ。そこは第三軍の六羽が守護している。
セリーヌと言う名前を関する砦の領主はセリーヌ・オディンヌではあるが、実質の領主は第一王女であるミリューゼだった。
「セリーヌ!敵の数はどれくらいだ?」
ガルガンディア地方、アリルーア草原、シンドリアと三つに帝国が出現したと聞いてたセリーヌ砦は油断していた。帝国の侵略はそれら三つだけだと思っていたのだ。しかし、セリーヌ砦にも帝国の影が忍びよろうとしていた。
「敵の数は百」
「百だと!たったそれだけか?」
ミリューゼはセリーヌの言葉に驚きを禁じ得ない。足った百で何ができる。第三軍は数では一番少ないと言われている。それでも二万の兵は有しているのだ。
「はい。ですが、相手は巨人族です」
「何っ!巨人族だと」
巨人族、小さい者で身長三メートル。大きな人であれば山一つ分の大きさになると言われている。
実際にミリューゼは見たことがないが、おとぎ話に出て来る巨人族は一体いるだけで国一つを滅ぼせるというのだ。
「巨人族が百だと……」
一体で国を滅ぼせる脅威が百体も押し寄せればセリーヌ砦など一溜りも無い。
「兵には緊急脱出の準備を、戦闘準備に入るが、あまり刺激するな」
ミリューゼとて姫将軍の異名を持つ武将である。戦えるのであれば戦いたい。しかし、未知の敵に対してどれほどの脅威があるのか判断できない。
「お待ちください。敵から逃げろと仰るのですか?」
ミリューゼに噛みついたのは、第三軍騎士団団長カンナだった。ヒリル・トリスタンが先の戦闘で負傷したためカンナが元の鞘に戻っていた。
「そうだ。敵の戦力がハッキリしない。何より我々は戦闘の準備をしていない。ここは他の戦闘地域に物資を中継するための地点だと認識していた。戦闘が行われた場合、耐えれる備えがないのだ」
ミリューゼの言うことはもっともだった。
第三軍が倒れれば、各隊に物資を送ることができなくなり、食料や武器の供給ができないということは戦場にて孤立したも同然なのだ。
「わかっています。ですが、何の反撃もせぬままおめおめと逃げるなど!」
カンナとて、ミリューゼの言葉を理解した上で申し出ているのだ。
「カンナ、わかってほしい。私だって戦えるのであれば戦いたい」
「ならば!」
「だがっ!私には部下がいる。部下には家族がいる。未知の敵に対して何の用意もなく無謀に死ねとは言えない」
ミリューゼの強い口調にカンナも二の句を継げずに黙り込んだ。
「ならば、俺が行きましょうか?」
会議室でジッと黙ったまま状況を見守っていた少年が声を上げる。16歳になり、精悍な顔つきへと成長を果たしたランスだ。
「ランスか、君は第一軍からの預かり兵だ。君にそんなことはさせられない」
「私はミリューゼ様の、直属の部下ではありませんよ。ですので、命令を聞く義務はありますが、独断で判断することも許されています」
ランスの物言いに聞き分けのない子供を見るような目でミリューゼが困った顔をする。
「それはそうだが、元帥殿からの預かりものであることに拘わりはない」
「ならばこそです。只逃げるだけでは、本当に逃げることはできないでしょう。誰かが巨人たちの気を引かなければなりません」
ランスの物言いはもっともなことだった。
だからと言って承諾できるものはないが、六羽の誰かを失うぐらいであればランスに頼んだ方がいいともミリューゼは分かっている。
それでも心のどこかでランスをいかせたくないと思う自分がいた。
「それは……」
「ミリューゼ様!私がお供します」
普段から声を発することも少ないサクラが大きな声を出したことで、その場にいた者達も驚きを禁じ得ない。
「サクラ……」
ミリューゼの頭の中で様々な思いが渦巻いた。
しかし、ランスの言葉とサクラの能力があれば、ランスを生きて帰らせてくれるかもしれないとミリューゼの思考はまとまった。
「わかった。ランス殿、頼めるか?」
「承知」
「サクラも、必ず生きて戻ってくれ」
「分かりました。ミリューゼ様」
二人は早速部隊を整えるため部屋を出る。
「よかったのですか?」
ミリューゼにセリーヌが声をかける。
「ああ、今は、これしかないんだ」
「そうですか……わかりました。皆さん!撤退準備をランス殿とサクラ援護をしつつ、我々は撤退します」
セリーヌの号令と共に残っていた六羽の面々も動き出す。
後に残されたミリューゼは、後ろに控えていたレイレの入れたくれたお茶を口にする。
「お疲れ様です。ミリューゼ様」
「ありがとう、レイレ。なぁ私は間違っているのだろうか?」
「ミリューゼ様が望むことをなさいませ。皆それを望んでいます」
「そうか……なら、私はランスと肩を並べて戦いたい」
「ミリューゼ様の御心のままに……」
ミリューゼはレイレにだけは本音で話しができる。
それは幼少の頃からの関係であり、レイレが本当の忠臣であるからだ。
ミリューゼが間違ったことをすれば、命を懸けて諌め、ミリューゼが本当に望めば誰よりも力を惜しまず発揮してくれる。
「ならば、私はライスのところに行く。後を頼めるか?」
「ご随意に……」
そう言うとレイレはメイド服を脱ぎ捨てる。そこには顔も背格好も全てがミリューゼと変わらない女性がそこにいた。レイレはミリューゼの影武者であり、ミリューゼが望むことをするとき、こうして入れ替わることがある。
「頼む」
「ああ」
二人は握手を交わして、ミリューゼはその場を後にする。
会議室に戻ってきたセリーヌは、ミリューゼの席に座っているレイレを見て溜息をつく。
「行かれてしまったのね」
レイレの変装を知っているのは六羽だけだ。そしてそれを見破ることができるのは二人しかいない。
「セリーヌ様とサクラ様にはやはり通じませんか」
「魔力の波長が違うからね。でも、サクラはそんなもの見えないはずなのに不思議だわ」
セリーヌの言葉にレイレは苦笑いを浮かべ、二人でお茶を飲みながらミリューゼに使える苦労話に花を咲かせた。
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