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事後処理と今後の方針

 会議室には、様々な顔ぶれが並んでいた。俺は中央に座り、円卓を囲むように、右からサク、リン、ガンツ、ミリー、ガーナ、マリルが並び、左にはジェルミー、ウイ、シェーラ、チン、バイド、ギンが座る。

 正面には未だに鎖に繋がれたシエラルクと、腕輪をつけられたゴルドナ、シエラルクの隣にはエルフの戦士、ゴルドナの隣にはハンチャ、そしてその隣にはモグに良く似たノーム族の老人が座っていた。

 椅子ではないが、机の上には妖精らしい女の子がちょこんと座っている。


「改めまして、ガルガンディアへようこそお出で下さいました」


 俺は立ち上がってシエラルク達に頭を下げる。嫌味にも受け取られる物言いだが、ガルガンディアの主が歓迎していることを示す儀式のようなものだ。


「あまり歓迎されているようには見えないけれど」


 シエラルクがすぐに反論を口にする。


「まぁ、俺は歓迎しているつもりだ。ただ、未だにあんた達は帝国の人間だろ?これ以上の待遇は難しい」

「どういう意味かしら?」

「我が国へ、いや、このガルガンディアへ亡命しないか?」


 俺の言葉にシエラルクだけでなく、仲間たちも驚いた顔をする。


「そんなこと本当にできると思っているのかしら?」

「それは、貴方様次第だと思いますが?裏切りのハイエルフ殿」


 シエラルクの言葉にサクがすぐさま反論を返す。これにはシエラルクではなくエルフの戦士がいきり立つ。


「今の言葉を訂正されよ!シエラルク様は我々のために帝国に屈してくださったのだ!」


 エルフの戦士がサクを睨み付ける。対してサクは全く動じることなくシエラルクを見つめていた。


「落ち着け、サク。彼らは未だに敵ではあるが、今後仲間になるかもしれない人達だ。敵対行動をとる意味はないだろ?」

「ヒューイも落ち着きなさい。彼女の言っていることは間違っていません」


 俺がサクを、シエラルクがエルフの戦士ヒューイを宥める。


「こちらの者が失礼な物言いをしてすまない」

「いや、先ほども言ったが間違ったことを言ったわけではない。お気になさらず」


 互いに部下がいる前なので堅苦しい物言いになるが、それぞれの大将が謝ったことで二人とも矛を納めたようだ。


「それで亡命の話だが、どうだろうか?」

「先程も言ったけれど、そんなことできると思っているのかしら?」

「できる。だろうな。あんたが力を貸してくれれば」

「どういう意味?」


 シエラルクは俺の言葉に疑問を投げかけてきた。


「一年、あんた方が帝国に反旗を翻して戦い続けた時間です」


 俺の言葉に全員が黙る。


「その間、確かにゴルドナ殿は前線で戦い。他の兵士たちも命を散らしたことでしょう」


 俺の言葉にゴルドナは震え出し、シエラルクは目を瞑る。


「それでもあんたに付き従い、みんな戦い続けた。そんな彼らはあんたを信頼しているとしか思えないだろ」


 俺は言葉を発すると、ヒューイとハンチャを見る。そしてノーム族の族長やシルフィー族を見てから、もう一度シエラルクを見た。


「考える時間をいただけませんか?」

「いいだろう。ゴルドナ殿はどうする?ドワーフ族だけはあんたに付き従うと思うからさ」

「我も……時間がほしい」


 俺の申し出に対して、エルフとドワーフの大将たちはそれぞれ時間を求めた。


「なら、二人には考える時間を与える。すまないが客人としては扱うが外出は控えてくれ。君達の護衛は付けたままにする。部隊はゴブリンの村で戦闘に備えている風に装っておいてくれ」


 俺の指示によって、ハンチャとヒューイが頷き。それぞれの護衛を二人だけおいて帰ることになった。

シエラルクとゴルドナをそれぞれの自室に戻して、仲間だけになる。


「本当によろしいのですか?」


 サクの質問により、仲間たちの視線が集まる。


「もちろんだ」

「では、ヨハン様は王国へ対して謀反をお考えということですか?」

「サク殿!何を言っているのだ!」


 サクの言葉にジェルミーが声を荒げる。


「ジェルミー構わない。サク、俺は謀反を企てているわけではないぞ。これは人助けであり、王国が帝国に対して牽制にもなる」

「ですが、それをすればガルガンディアに人が増え、王国に対抗できる組織をつくれます」


 俺の言葉にすぐさまサクが反論を返す。


「憶測だな。では、サクにはいい案があるのか?」

「彼ら二人を人質に、精霊族達を帝国と戦わせればよいではないでか。それこそ彼らならそうするのではないですか?」

「そんな安易な考えが通ると思うのか?」

「安易ではありません。もちろんそのために裏工作はします」

「裏工作とは?」

「実際には二人には何も発現させません。しかし、二人の命令として帝国に反旗を翻させます」


 サクは言った事を、今にも実行に移そうと身を乗り出す。


「そうして、セリーヌがいる領土を守るというのか?」

「そうです。帝国と戦っているセリーヌ軍の援護をしつつ、相手に奇襲をかけます」


 サクの言葉を聞いていた。王国の騎士である。ガンツやミリーは賛同したそうな顔をする。

しかし、シェーラやゴブリン、オークたちは渋い顔をする。


「サク、本気で今の言葉を言っているのならが、ガルガンディアにお前の居場所はない」

「どういう意味でしょうか?」

「俺の方針はこうだ。彼らを助け、受け入れ、仲間にする。仲間にした後で他の領地を助けることはあっても、命令して動かすことはない。それに従えないのであればお前に居場所はない」


 俺のハッキリとして言葉に、仲間達はサクの顔を見る。


「そうですか……では、ヨハン様に従います」


 俺の言葉にアッサリとサクは身を引いた。拍子抜けするが、これがサクなのだ。


「そうか。じゃあ、今後の方針は以上だ。解散とする」

「「「はっ!!!」」」


 俺の言葉で仲間達は席を立つ。


 


いつも読んで頂きありがとうございます。

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