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ガルガンディア防衛戦 終

 モグの言葉に俺は苦笑いを禁じ得ない。エグイや卑怯、そんな言葉では何も堪えない。美しいエルフを捕まえること、それが俺達が勝つ唯一の方法なのだから、他のことを気にしている余裕などなかった。


「それでどうするんだ?」

「モモのこともあるからな。おらはあんたに付くで」

「モモは本当にお前の妹か?」

「失礼なこといいなや。間違いなくおらの妹や」


 モグの必死さに笑顔を浮かべる。


「では、八魔将シエラルク殿、穴倉で申し訳ないが、我が城までご同行願えますか?」

「仕方ないわね」


 モグの先導の下、シエラルクを穴の中に入れる。


「もちろんついてきた場合は容赦なくシエラルク殿に危害を加える。殺すことはしないが、傷をつけられたくはないだろう?彼女はあんたたちにとって大切な人なんだろう?」


 俺の言葉にエルフの戦士は苦虫をかみつぶしたような顔で俺を睨み付けた。


「丁重に頼む」

「もちろんですよ」


 エルフの戦士が頭を下げると、他のエルフたちも頭を下げる。俺達がその場を去ると、エルフたちが手当てを始める音が聞こえてきた。爆発により、傷ついた者が大勢いることだろう。

 俺達はモグの先導の下、ガルガンディア砦に戻った。オークに支えられたゴルドナが出迎えてくれる。


「シエラルク!」

「ゴルドナか……」

「すまぬ」

「いえ、あなたが捕まったときにこうなるのではないかと思っていた」


 二人だけに分かる何かがあるのだろう。


「リン!ゴルドナ殿とシエラルク殿を客間に案内してくれ。シエラルク殿の鎖は外さず、ゴルドナ殿の腕にもこの腕輪をつけろ」


 シエラルクは大量の魔力を持っていたので、鎖でなければ抑えることはできないが、ゴルドナの魔力はシエラルクほど多くないので、鎖の切れ端で作った。腕輪で十分だろう。


「はい。では、こちらに」


 リンの先導でドワーフとエルフの大将が連れられて行く。


「モグ、頼みがある」

「なんや……」


 どこか不機嫌そうなモグに俺は話を振る。


「帝国に捕まっている。もしくは領土をもらっている全精霊族の情報を集めてほしい。もちろん、連れ出せるならばこちらに連れて来てくれないか?」

「そないなこと!」


 モグはサングラスを外して、アーモンドのような真っ黒な瞳をぱちぱちさせる。顔はモグラでも目はあるのだなと思いながら、モグの瞳を見つめ返した。


「頼めるな?」

「あんさんは人使いが荒いな」

「それは仕方ないだろうな。それとノーム族の大将がいるなら話がしたい」

「へいへい。なんでもおらに言いなや。自分でそれぐらいせいよ」

「お前を信頼してるからな」

「カー!あんさんホンマ嫌なお人やな」


 モグはそれだけいうと穴の中に消えて行った。

精霊族と言っても、今回ここに来ていたのは、ノーム族、エルフ族、ドワーフ族、シルフィー族だという。

 俺は姿を見ていないがシルフィーは元々臆病な性格で見た目も小さく妖精のような存在らしい。今回はエルフとドワーフの伝令や見張りの仕事をしており、穴倉にいた俺が見る機会がなかったのも空を飛んで移動するかららしい。

 ただ、攻撃らしい攻撃手段を持っていないので、空中から俺達を見下ろすだけで何もしてはこなかったようだ。


「チン、ここは頼む。ガンツとミリーにも伝令を送っておいてくれ。会議室に集合だとな」

「わかった」


 俺はジェルミーとサクが待つ執務室に行く前に自室へと戻った。戦いに次ぐ戦いで疲労も溜まっていた。砂埃や自分で流した血もついている。多少の被害やケガ人は出たが、最小限で戦いを抑えられたと思う。これからのことを考えなければならない。俺は色々考えているうちにベッドの中にダイブしていた。意識を取り戻したときには、リンがいた。


「リン?」

「おはようございます」

「俺はどれくらい寝てた?」

「半刻ほどだと思います」

「皆を待たせてか?」

「いえ、皆さんにはすでに状況を説明していますので、それぞれの自室におられます」

「そうか、すまない」

「いえ、ここまでお疲れ様でした」


 リンが深々と頭を下げる。


「俺が出来たことなんて限られているさ。兵達やミリー、ガンツが城を護ってくれなくちゃ安心て戦えなかった。チンやトンがゴブリン達を使って正しい情報を持ってきてくれなかったら戦えなかった。他にも皆が支えてくれたからなんとかなっただけだ」


 俺は目覚めたことで頭を整理しながら、勝利を治めることができたのだと、ほっと息を吐く。


「はい。本当にお疲れ様です」

「リンもお疲れ様」


 リンの笑顔に俺も笑顔で返した。身体を起こして、リンの頭にポンと手を置いて擦ってやる。


「いつの間にかリンも大きくなってきたな」

「まだまだ成長期ですから」


 ここにきて一年が経つ。俺は16に、リンは14になっていた。お互いまだまだガキだが、最近リンが美人になってきたと思う。


「そうだな。俺もだ」

「はい」


 リンは嬉しそうにその身を預けている。


「お取込み中に申し訳ありませんが、会議のため皆さんを集めてもよろしいでしょうか?」


 いつの間に立っていたのか、扉のところにサクがいた。


「サク!いや、これは!」

「別にお二人がどうなろうと知りません。ですが、まだ戦時であることをお忘れなく。皆さんを呼んでまいります」


 俺の弁明を聞く前にサクはその場を離れて行った。


「行ってしまいましたね」

「ああ……」

「ぷっはははは」

「はははは」


 俺達はサクの態度に笑いが込み上げて来て、どちらともなく笑っていた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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