ガルガンディア防衛戦 4
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霧の濃度が増していく。目の前にいたはずのシエラルクの姿すら見えなくなった。
「あなたは霧の檻に閉じ込めておくわ。あなたからは何をしでかすかわからない雰囲気を感じるもの。次にあなたが霧から出る時は全てが終わっているでしょうね。王国は帝国のものになっているかも」
霧の向こうから少女のようなシエラルクの声が響いてくる。いったいどれくらいの時間閉じ込めるつもりなのか、見当もつかない。
「そうか……話し合う余地はなしか……」
「ふふふ。そうよ。あなたは何もできずに終わるの」
「そういうわけにはいかないな」
俺はステータスを開く。
年 齢 16歳
職 業 子爵、鍛冶師、魔道士
レベル 87
体 力 1092/1200
魔 力 1100/1130
攻撃力 603+30×10倍
防御力 601+30
俊敏性 613+30
知 力 1003
スキル
斧術 9/10
投擲 7/10
乗馬 6/10
探索 7/10
夜目 6/10
鍛冶 3/10
魔力強化 1/10
捕縛術 2/10
カリスマ
気配断ち
剛腕
攻撃力上昇Ⅲ
防御力上昇Ⅲ
敏捷性上昇Ⅲ
体力自動回復Ⅱ
毒無効化
幻覚無効化
麻痺無効化
石化無効化
魅力無効化
魔力消費半減
経験値アップⅡ
アイテムボックス
魔 法
ヒール 10/10
エリアヒール 5/10
ハイヒール 5/10
エスナ 6/10
ウォーターカッター 5/10
ウォーターウォール 3/10
エリアウォーター 3/10
ファイアーアロー 6/10
ファイアーボール 4/10
エリアファイアー 3/10
エクスプロージョン 1/10
ストーンエッジ 5/10
アースクエイク 2/10
ウィンドーカッター 3/10
ライト 5/10
サンダー 5/10
エリアサンダー 3/10
アイスカッター 4/10
アイスロック 3/10
アイスウォール 3/10
グラビティ― 5/10
エリアグラビティー 2/5
メテオ 1/5
付加魔法
魔力断ち 2/5
兵 法
背水の陣、鶴翼の陣、魚鱗の陣、車懸りの陣、鋒矢の陣、方円の陣、臥龍の陣、雁行の陣、輪違いの陣、長蛇の陣、打草驚蛇、借屍還魂、調虎離山、欲擒姑縦、抛磚引玉、擒賊擒王
協力技 雷神剣、メテオストリーム、必中の矢
特 殊 ジョブチェンジ
スキルポイント 4
「エリアグラビティー」
俺はステータスを開いた状態で、魔法を唱える。
「何っ!」
霧のせいで姿は見えない。だが、今起きていることは分かる。自分自身にも感じられるほどの重力が全てを圧迫する。肉体強化されていなければ耐えられなかっただろう。
「何をしたというの?」
「この世界の人間は知らないかもしれないな。星には重力と呼ばれるものが存在する。星に引き寄せられる引力を意味するが、それは人に重みを与えたり、逆に重みを軽くすることができる」
俺の言っている意味がわからないのか、それとも重さにより身動きが取れないのか、シエラルクから返事は返って来ない。
「このうっとうしい霧も晴らさせてもらうぞ。エクスプロージョン!」
俺が叫ぶと同時に大爆発が起きる。敵の存在など一切考えない。普通の風で消せないのであれば、爆風で消せばいい。それはサクの言葉だった。連続して起きた爆発により、霧はあっという間に晴れた。
森全体は消せなくてもここに集まった霧ぐらいならば俺の魔法で吹き飛ばすことができる。
「こんな感じになっていたのか」
ドワーフ達が倒れているのは知っていたが、今はエルフたちも重力と爆発で膝を突き、地面に倒れている。一人だけ、たった一人だけは立ったまま重力に耐えていた。
「流石だな」
「いったい何をしたの?」
「個人魔法は知っているか」
「もちろん知っているわ」
「俺は個人魔法を習得している」
「それがこれってわけ?」
「そうだ。これは重力。人に重み与える」
「最悪の能力ね」
シエラルクは腕を組んだまま一歩も動かない。美しい女性は凛としたまま抗っていた。この重力の中で動けるのは俺だけだ。
エリアグラビティーは正直使い慣れていない。長時間は使えない。威力も初級程度なので、持続時間以外にも欠点が多い。
「上手く行くかしら?」
不敵に笑うシエラルクに、俺は少しでも時間を短縮するために走った。彼女を拘束する術も持っている。俺はアイテムボックスから鎖を取り出し、シエラルクに巻き付けていく。
「女性には似つかわしくないわね。あなたのセンスを疑うわ」
「すまないな。これは特別性でね。むしろあんたの為だけに作った。特注品だ」
俺にもっと鍛冶スキルがあれば鎖などではなく、コンパクトで使い勝手のいい物を作れただろうが、残念ながらスキル修練で習得したので不格好な形になってしまった。付加魔法を施すためにジョブスキルで鍛冶を使って作り上げた代物はこれの鎖が限界だった。
「準備していたってわけ?」
「ああ。八魔将の誰がきてもいいように用意しておく。それが戦闘準備だろ?」
「やるじゃない」
エリアグラビティーを解除すると、爆発を逃れ膝をついていたエルフたちが一斉に立ち上がる。
「おっと動かないでくださいね。彼女がどうなってもいいんですか?」
「そんなものでシエラルク様を拘束できると思っているのか!」
先程からエルフの戦士として叫んでいた声が俺に向かって威圧を放つ。
「それができるんだな。これは魔法を遮断するための鎖だからな」
「なっ!」
俺の言葉にエルフの戦士はシエラルクを見る。シエラルクは霧を出そうとしたのだろう。しかし、いくら精霊魔法といっても魔力を使う魔法に代わりはない。
魔法を使う源である魔力を遮断してしまえば、使えないのは当たり前だ。
「ゴブリン隊狼煙をあげろ」
ドワーフ達に混じっていたゴブリン達ではなく、穴の中からゴブリン達が這い出る。シエラルクの魔力が遮断されたことで霧が消え、幻覚が解除されているので出て来ても問題ない。
「キィー!」
ゴブリンが俺の声で起き上がり、狼煙を上げ始める。
「これはどういうことかしら?」
「俺達が勝つにはこれしかなかっただけだ」
「まんまとやられたと言うわけ?」
「さぁな」
俺はサクの策を思い出す。
サクはドワーフ達の前ではワザと負けて引くように言った。そうしてハイエルフから兵を離れさせ、モグの穴を使って俺をハイエルフの下に連れて行く。そこまでが、モグが知っている策であり、それには続きがある。他の穴から付いてきていたゴブリン達は俺の護衛であり、俺に何かあった時の伝令でもある。
俺は途中でドワーフ達が勝てばそれでいいと思ったが、そんな甘いものではないことぐらい俺もサクも分かっていた。ならどうすればいいか?話は簡単だ。最初から負けることを想定して、相手が勝ちを確信した瞬間に相手の大将を討ち取るか、捕まえて逆転の一手を放つしかないと思っていた。
兵力でも、能力でも負けているならば、俺達に勝てるものはサクの策だけだった。
「とりあえず、まだ気が抜けないからな。モグ!今度はどっちにつく?」
俺は穴の中にいたモグに声をかける。モグは穴から顔を出し、頭を掻いていた。
「あんさん、エゲツないお人やな」
モグは恐ろしいモノをみるような目で俺を見た。
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