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ガルガンディア防衛線 3

いつも読んで頂きありがとうございます。


すみません。明日はお休みします。読んで頂きいつもありがとうございます。

 左翼を動かしたことで、精霊族軍が瓦解する。

聞こえてくる悲鳴に俺はガッツポーズをとりそうになる。勝った気になってはいけない。敵の大将を討ち取るか、捕まえるまでは戦いは続くのだ。


「卑怯な!」

「戦場において卑怯などと言う言葉はない」


 エルフの戦士の叫びに対して、ドワーフが反論を返した。それはゴルドナの言葉であり、ドワーフ共通の認識のようだ。

 奇襲をかけたお陰で、ドワーフ達の優勢な状況が続いている。

数で言えば向こうが二万、こちらが一万なので不利に見えるが、精霊の種族が混在しているのだ。連携をとろうとしてもうまくいくはずがない。

 対して、こちらはドワーフ族のみの構成であり、元々精霊族の中でもドワーフ族の方が近接戦闘に向いている。

 近接戦闘に持ち込めば、こちらに有利な戦いになるなど目に見えている。


「中央の部隊も突撃をかけて、一気に決着をつけろ」


 俺はハンチャに命令して、ハンチャもそれに従う。残っていた四千が混在する戦場に飛び込み、ドワーフの勝利を確実なものにする。


「ドワーフの誇りを見せよ!いけー!!!」


 ハンチャの叫びはゴブリン達を伝ってドワーフ全体に伝搬される。


「俺も次の段階に入るか」


 相手にワザと負けなくても、このまま押し切れるのであれば問題ない。俺はハンチャの下を離れ、穴の中に戻る。

 穴の中を移動していると、大勢の足音が響き、地上では物凄い戦いが繰り広げられていることが想像できる。


「モグ、いるか?」

「おるで。やっと来たんかいな」

「悪いな。思った以上にドワーフ達の動きが良くて、夢中になってた」

「そら、恐いこって」

「恐い?何が恐いんだ?」

「あんさんはアホかいな?事が上手くいっているときほど警戒しろって言葉を知らんのか?」


 モグの言葉に俺は自分が楽観視していることが理解できた。


「実際上手くいっているじゃないか」

「あんさん……あんさん意外と大将失格かもな」

「なんだよ。どういう意味だよ」

「なら、教えたろか?おら達の上にあんのはなんや」


 俺が上を見上げると、トンネルで造られた土が固められていた。


「土だな」

「はぁ~そんなん聞いてるんとちゃうわ」

「なんなんだよ。ハッキリ言えよ」

「ええか?地上にはあのお方の霧が充満しとるんや、いくら戦闘でドワーフが優勢でもな」


 モグの言葉に俺がある考えに思い至る。


「それって」

「そうや、やっと理解したんか、言うたったやろ。あの方はそないに甘くないってな」


 先程まで響いていた足音による地響きがいつの間にか止んでいた。


「これは!」

「あんさんはここまで来るんやなかったな。大将のくせに迂闊すぎるで」

「モグ!」


 俺がモグの名前を叫ぶのと同時に、地上へ繋がる穴が開いた。そこには穴を除く顔が見えた。この世の者とは思えぬ白い肌と美しく整った顔をしたエルフの女性がそこにいた。


「初めまして、ガルガンディアの大将さん。私が八魔将が一人、ハイエルフのシーラ・シエラルクよ」


 それはエルフの頂点であり、シェーラの家族を王と言うならば、エルフたちが神と崇める女性がそこにいた。

 透き通るような美しさに一瞬言葉を失い。次に自分はハメられていたのだと理解した。


「俺はどうなる?」

「そうね。素直にガルガンディアを引き渡してくれれば、命までは取らないでいてあげるわ。まだまだ幼い子供を殺す趣味はもっていないから」


 金色に輝く瞳は怪しく光、圧倒的な強者だけが発するオーラのようなモノを彼女は発していた。


「コェ~」

「だからいったやろ。あの方は恐ろしいて」


 モグは穴の中で、やれやれと溜息を吐く。


「裏切ったのか?」

「裏切りちゃうで、おらは元々こっち側の人間やからな」

「なら、俺の予想通りだな」


 俺はモグは裏切る奴じゃないと思っていた。モグは最初から仲間を裏切っていなかったのだ。


「もしも、俺の方が先に会ってたら裏切らなかったか?」

「そうやな。あんさんのことは嫌いやないよ。潔いところとかな」

「それは大間違いだけどな」


 俺は穴から這い出て地上に出る。地上には不思議なことに霧は消えており、ドワーフ達が倒れていた。


「彼等には眠ってもらったわ。全員に幻惑を見せるのも手間だし、間違って攻撃されても嫌だからね」


 穴の中ではわからなかったが、少女のような声に凛とした立ち姿をしていた。


「自己紹介させていただきます。ガルガンディア地方領主、ヨハン・ガルガンディアです」


 俺は日本式に自己紹介して頭を下げる。


「礼儀正しい子ね。私は精霊族の長にしてハイエルフのシーラ・シエラルクよ」


 俺の自己紹介に対して、自己紹介する女性の動作は一つ一つが美しい。


「改めてお聞きします。俺はモグの妹とゴルドナ殿を捕虜としている。俺と彼らの交換ではダメですか?」

「ダメね。あなたの価値はそれ以上だと私は判断しました」


 シエラルクの言葉に、俺は大きく息を吐く。


「なら仕方ないですね」

「何もさせないわよ」


 一気に霧の濃度が上がり、俺とシエラルクを包み込む。 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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