ハイエルフ来襲
昨日は予約投稿に失敗して投稿されてしまいました(;一_一)
朝から昼へ変わろうとする時間、寒村としたゴブリンの村に踏み込む一団がいた。精霊族と呼ばれる人間よりや魔族よりも自然に近い存在と言われている種族たちがガルガンディアの地を踏んでいた。
それを見たゴブリンは逃げ出した。ゴブリンも土の精霊と言われているが、それとは別にモンスターとも言われている。
しかし、そのどちらにしてもゴブリン達は弱小扱いされており、来襲した精霊族たちには興味をそそられない存在だった。
ゴブリンは、精霊の軍団を見て逃げていく。当たり前の話だ。ゴブリン如きが勝てる軍団ではないのだ。それを分かるだけゴブリンも知恵をつけたものだと、この軍団の大将を務める女性は思った。
その女性は緑色の動きやすい服を着て、銀に近い髪と真白と言っていいほどの色素の薄い肌をしていた。瞳の色は黄色く光り美しい。しかし、その姿は神秘的であると同時に危険な香りも放っている。
「さぁ、始めましょうか」
寒村とした雰囲気をなど女性には関係ないのだろう。むしろ女性がいるだけでそこらじゅうに花が咲きそうなほど、華やかな存在なのだ。
そんな女性から煙のような水蒸気が上がり始める。水蒸気は天高く上がっていき霧へと姿を変える。霧は、ゴブリンが作り上げた村を覆うだけでなく、ガルガンディア要塞を覆う森全体を包み込んでいく。
ガルガンディア要塞を飲み込みそうな勢いで迫る霧にガルガンディア要塞だけを覆うことはできなかった。
「あら?ふふふ、頑張っている子がいるわね」
ハイエルフは楽しそうに笑う。自分の方が力が強い。実際ガルガンディア要塞を護るように作られた透明な結界は、霧を完全に撥ね返してはいない。
確かに霧を退けている場所はハイエルフの影響は受けないが、一歩でもガルガンディアの要塞から出てしまえばハイエルフの術中にはまるのだ。
「戦う意志が無いのであれば、素通りしてしまおうかしら?」
本気でハイエルフはそんなことを思っていた。健気に頑張る存在がいることで可愛いと思ったのだ。圧倒的な相手を前に仲間を護るために頑張る存在がいるというだけで、楽しくなる。
「でも、ダメね。王国は帝国の力を分からなければならない。でなければ、死者が増えるだけね。頑張っている子にも絶望をプレゼントしてあげなくてはね」
彼女は手を高々と掲げる。
「霧の軍団、前へ」
ハイエルフの号令と共にノーム族とシルフィー族が出陣していく。彼女達も元々は精霊ではなるが、この世界では存在するものとして認識されている。
ハイエルフの号令と共に動き出した軍団を見た彼女は、村にある家に入り身体を休める。いくら強力な魔力を持っているハイエルフであろうと、霧を維持するためには自身が無理をすることはできない。
「じっくりと吉報を待たせてもらうとしましょうか」
持ってきたワインを優雅に口に含み、傍観者を決め込んだ。
♢
ゴブリンの村に入った軍団の情報はすぐにガルガンディア要塞へと伝令が送られた。ハイエルフが弱小と思ったであろうゴブリンこそが、俺の伝令掛かりであり、敵の数や相手の場所、種族なども教えてくれる。
「やはりハイエルフか」
「予想通りですね」
サクと俺の予想があたったことで、ゴブリン達には動いてもらうことになる。
「伝令の連携をしっかりさせろ」
「わかったよ」
チンが飛び出していき、ゴブリン伝令隊が動き始める。ゴブリン達はその数と小さな体を生かして、森に隠れながら伝令を送ってくる。
「ご主人!」
俺が次の指示を言う前にシェーラが会議室に飛び込んでくる。
「どうしたシェーラ」
俺はシェーラの必死な様子に聞き返した。
「霧が迫ってる」
「霧?」
「そう、あれはエルフが使う迷いの霧」
「迷いの霧とはなんだ?」
シェーラの説明によれば、エルフは数も少なく他種族に狙われやすい。
そのため自らの里を霧や幻覚を使って分からなくしているのだという。
そのため霧の中に入れば術者の意思次第で相手を迷わしたり幻覚を見せたりできるらしい。
「それはヤバイな……どうにかできないか?」
「あっちの方が強い」
俺の言葉にシェーラは悲痛な面持ちで力の無さに項垂れる。
「ならこのガルガンディア周辺だけでも守れないか?」
「ここを?」
「そうだ。ここだけでも無事なら戦える」
「やってみる」
シェーラはすぐに会議室を飛び出し、広場へと向かった。
「ゴブリン達にも霧が来る前に伝令を送ってくれ。自らの命を大事に」
俺達はいくつかの指示をゴブリン達に伝えている。「命を大事に」は戦わず逃げるか、隠れることを意味する。
霧によってこちらが不利になるのなら無理に戦えば戦力を減らしてしまうだけだ。
「サク、対策を考えろ」
「はっ!」
「リン、長期戦になる。飯と警戒のシフトを変えろ」
「はい」
「ガンツ殿、ミリー籠城に入る。よろしいな」
「お任せいたす」
「ああ」
二人の了承を得て、俺は次の一手を打つため会議室を出た。
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