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八魔将の会議

 帝国は天帝が頂点である。天帝の言うことは絶対であり、天帝の考えを実行するのが八魔将である。だからこそ天帝は一つの命令を伝えるだけだ。


「王国を我が手に……」


 天帝がその言葉を口にしたならば、八魔将はそれを実行に移すだけだ。そして実行に移すために天帝にお伺いを立てるほど彼らは何もできない子供ではない。竜騎士の号令の下、八魔将達は顔を合わせた。


「それでは会議を始める。今回はいよいよと言ったことだが、王国への進軍を開始する」


 この国の宰相であり、魔法師団団長を務める、死霊王ことデッドラー・ウルボロスが会議の開始と進軍を口にする。それは天帝の言葉を確認する行為であり、今回の議題を明確にするための発言である。


「ウルボロス殿、先人はもちろんワシに仰せ下さるのでしょうな?」


 ウルボロスの言葉に早速反応したのは、巨人族の王、ネフェリト・ジャイガントである。これまでも帝国の先陣を務めてきたのはジャイガントであり、古参の彼は戦いに飢えていた。


「ジャイガント、ちょっと待て。天帝様は今回新たな者達の力を見たいと仰せだ」

「天帝様は何を考えておられるのか、新人共などに戦場はもったいない」

「そんな言い方をするのはお前ぐらいだよ」


 ジャイガントの物言いにウルボロスは呆れたような声を出す。


「まぁ今回は大人しくしていろ。もし新人がヘマでもすればお前の出番も回ってくる」

「ふん。帝国の将を名乗るのだ。ヘマなど許せんがな」


 ジャイガントは新人を睨み付けるように「ふん」と鼻息を吐く。


「ジャイガントのことは置いておいて、新人諸君には頑張ってきて貰いたい」


ウルボロスの言葉に新人たちに応える者はいない。闇法師はローブのフードを深くかぶり、顔を見せない。同じく黒騎士も鎧を脱がず、フルアーアマーの兜を取ろうともしない。

 ハイエルフの美しい女性は、つまらなさそうに髪を弄り、最後に残った青白い顔をした魔人は手鏡で自分の顔を見つめていた。


「はぁ~変わり者集団なのはいつものことだが、今回は一段と変わり者ばかりだね」


 世間では死霊王と恐れられるウルボロスだが、見た目はちょび髭の生えた中年男である。

変わり者集団のなかでは、普通のオッサンにみえるこの男だが、彼もまた四天魔と呼ばれるだけの実力を持っている。


「いいかい、舐めてもらったら困るよ」


 ウルボロスの雰囲気が変わる。圧倒的な威圧が新参者の将軍たちに降りかかる。しかし、威圧を受けても四人は涼しい顔で誰もウルボロスの話を聴こうとしない。彼らもまた八魔将としてウルボロスと肩を並べるだけの実力は兼ね備えているのだ。


「調子に!!!」


 ウルボロスが威圧では効かないと思ったので、魔力を纏い始める。


「カッ!」


 それはウルボロスではなく。ずっと黙って話を聞いていた竜騎士アラン・ディアスから発せられたものだった。アラン・ディアスの言葉には圧倒的な存在感を表す力強さが込められていた。その存在感に新鋭の将軍たちも身を震わせる。


「栄えある帝国の将軍になったのだ。その力を見せてみよ」

「将軍、俺のセリフだよ。それ」


 ウルボロスは纏い始めた魔力を納めて苦笑いをする。頭を掻きながら、新鋭将軍達に向き直る。

そこには先程までの怒りを込めたウルボロスではなく不敵に笑うちょい悪親父がいた。


「まぁ新人共がシャキッとしてくれたのならいいかな。じゃあ黒騎士君、君は傭兵たちを使って王国中央から攻めてくれるかな?」

「ああ」

「ハイエルフの御嬢さんにはガルガンディア方面の森から回り込んでくれるかい。山脈にはディラン殿も操れない巨大なドラゴンがいるらしいから手を出さないように無駄な被害は避けたいからね」

「ええ、いいわよ」

「魔人の君は西から迂回して王国に入ってくれ。獣人への警戒を忘れずに……」

「ええ。獣人を私の者にできるなんて楽しみですね」

「最後だけど、闇法師殿はご自慢の魔物達を其々の部隊に配置してくれますかな?」

「お安いご用です」


 ウルボロスが指示を出すと、新鋭将軍たちから返事が返ってきた。


「よい返事だな。では、今日はここで解散する。皆の武運を祈る」


 ウルボロスが締めくくり会議は解散となった。

天帝がいなければ、纏まりなど全くない八魔将だが、強者に対しては一目置くところがある。

 竜騎士ディランは帝国最強の存在であり、新鋭の者達も彼を目の当たりにしたときから天帝とは違う本当の強者というモノを見た気がしていた。


 八魔将の内、半分の四人が進軍を開始するのに対して時間はかからなかった。

平定された共和国内を我が物顔で歩く彼らを、見送る共和国の民はほとんどいない。すでに奴隷として帝国内へと搬送されているのだ。

 進軍の妨げをする者はいなくなり、そのまま残っている家屋は軍のモノとして使われることで、帝国兵は疲労も少なく進軍をすることができた。


 王国と帝国の戦いは元共和国だった地で行われようとしている。

そして、その戦いに獣人王国が巻き込まれつつあった……


 長い長い二つの国の戦いが始まろうとしている。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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