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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
地方開拓をやってみよう
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敵の目的

 俺はシェーラを伴い、森を走り抜ける。いつの間にか、シェーラの方が森に慣れていて、敵の偵察がしやすい場所へと俺を案内してくれた。


「多分、あの一団」


 シェーラに誘導されるようにやってきた木の影から、人影のような者が見えた。確かに鎧や武器を持っており、かなりの人数がいることが分かる。


「これ以上近づけないか?」

「無理だと思う。向こうも警戒してると思うから」


 それもそうだろう。今から攻めこもうと考えているならば殺気立っていてもおかしくない。


「朝靄のせいで、輪郭がハッキリ見えないな。せめて種族さえ分かれば目的がわかるんだが」

「音は何かが擦れる音がする」


 シェーラは俺よりも耳がいい。目で見るよりも耳で状況を判断する。


「何か会話は聞こえないか?」

「それは無理」


 どうやら向こうも警戒しているのか、会話らしい会話をしていない。


「偵察に出たのはいいが、このままじゃなんの収穫もないぞ」


 諦めかけていると、俺達の隠れている木に矢が飛んできた。


「なっ!」

「そこにいる者出てこい!」


 男の声で叫び声が上がる。どうやら見つかってしまったらしい。


「シェーラは隠れてろ。俺が出て相手の正体がわかったら、サクに連絡してくれ」

「ご主人は?」

「俺は何とかなるって知ってるだろ?」

「わかった」


 相手の死角になりかつ、シェーラに見えるように親指を立て、木の影から身を出す。


「撃たないでくれ!」


 俺は怯えた様子を装い、両手を上げた。


「こっちにこい」


 俺は男に言われるまま、男に近づいていく。男の顔は鳥だった。身体は人間なのだが、顔が鳥なのだ。鳥人族と呼ばれる獣人族がいることは知っている。お目にかかるのが初めてなので、一瞬驚いてしまった。


「子供か?貴様は何者だ?見た所魔導師に見えるが」


 魔導師は共和国で魔法を使う者のことを差すはずだ。


「はい。まだ駆け出しですが、魔導師をしています」

「ふむ。共和国の者か?」

「いえ、王国で冒険者をしていまして、今はCランクです」


 俺は冒険者ギルドの身分証明書を見せる。職業欄は魔導師に変更している。相手も納得したのか、身分証を返してきた。


「今は隠密行動中である。すまないが、身柄を拘束させてもらうぞ」

「殺されたりは?」

「我々はそんなことはせん。我々の目的はガルガンディアだ」

「えっと……そこに何かあるんですか?」

「それは言えぬ。お主も自分の身が可愛ければ要らぬ詮索はせぬことだ」


 鳥というか、多分タカの鳥人は真面目な軍人と言った雰囲気を醸し出している。


「わかりました……」


 俺は何も知らない冒険者を装い、鳥人の捕虜となった。そうすることで、見えて来るものもある。500人の軍団は全てが鳥人族の獣人であり、女性や子供も混じっている。鳥人と言ってもハーピーのような腕と足だけのもいれば、上半身全てが鳥の者もいるようだ。武装していたのも森を抜けるのにモンスターと戦うためだろう。

 俺はその後も鳥人達がガルガンディアに着くまで捕虜として付き従った。

食事は分けてくれるし、水も飲ませてくれるので親切な集団だった。

 

 最初にローブの中を見せて武器を持っていないことを見せている。俺にはマジックボックスがあるので、手持ちの武器などないのだ。


「着いたな……」


 ガルガンディアに着いたところで、鳥人達は何かを達成したように顔を明るくしていた。


「門を空けよ!我らはガルガンディアの真なる主なるぞ!」


 先程のタカの顔をした獣人がガルガンディア要塞に向かって叫んだ。


「真なる主?」


 俺はどういうことだろうと、首を傾げながら聞き耳を立てる。


「我らこそ、このガルガンディアの地を受け継ぎし正当なる者。聖鳥ガルーダにより守られしこの土地を我々に返せ」


 鳥人族は、ここの先住民族だったらしい。共和国との戦いで敗れて奴隷にでもされていたのだろう。


「我は、現ガルガンディアを預かりし者、鳥人族の人よ。今はこの地は我々のモノだ。返すことは叶わぬ」


 城門の上からリンが鳥人に決別の言葉を告げる。


「ならば、力尽くで取り返させていただく」

「できる者ならやってみろ」


 おいおい。リンの奴は何をやってるんだよ。


「ちょっと待った!」


 俺は堪らなくなって両者の間に割り込む。


「むっ!冒険者の少年よ。邪魔立てするか?」

「えっ?えっ?ヨハン様?」


 タカの鳥人は俺の行動に怒りを示し、リンはどこか戸惑った声を出している。


「リン!これはどういうことだ?」


 俺は大声を張り上げて、リンに問いかける。


「ヨハン様が敵に捕まり、死んだかもしれないと……」


 シェーラは俺が捕虜として捕まったので、それを素直に報告してくれたのだろう。だが、リンは何を勘違いしたのか、俺が捕まったことで死んだと思ったようだ。


「キサマは何者だ!」


 俺とリンとのやり取りに、タカの鳥人も何かおかしいと気付いたようで、槍を俺に向ける。タカの後ろで数人の鳥人がこちらに武器を向けているのも見えた。

 対してリンやウィッチ達も魔法を放とうと準備に入る。


「両者落ち着け。騙してすまない。俺がこのガルガンディアの領主をしている。ヨハン・ガルガンディアだ」


 俺はタカの鳥人を正面から見据えて、ハッキリと告げた。タカの鳥人は一瞬驚いた顔をしたが、俺の瞳を見据えて槍を下した。


「何たる度胸、領主自ら偵察に来るなど聞いたことがないぞ」

「今のガルガンディアは人で不足でね」

「ククク。我の言い分はわかっておるな」

「ああ、あんた達はこの地の先住民なんだろう?」

「そうだ。我々は共和国の獣人狩りに遭い、奴隷として共和国で働かされていた。しかし、共和国が帝国によって滅ぼされたことで、逃げる機会を得て、こうして故郷に戻ってきたのだ」


 俺が思っていたことは間違っていなかったらしい。


「だけど、俺達も王国からここを任されているからな。はい、そうですかと返すこともできない」

「そうであろうな」

「だから、話し合わないか?幸いこの城にはまだまだ寝る場所があるし、食料もある。話し合う時間をもらえれば折り合いも付けられる。それでも納得できないなら大将同士で決着をつけないか?そうすれば傷つくのは大将だけで、他は全てを得ることができる」


 俺の言葉にタカの鳥人はしばし沈黙して、俺の瞳をジッと見つめてきた。


「お前の度胸に敬意を払う」


 タカの鳥人はここまでの道のりで疲れていたのもあるのだろ。俺の申し出を受けいれ、ガルガンディアでの話し合いに応じてくれた。

 


いつも読んで頂きありがとうございます。

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