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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
地方開拓をやってみよう
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いざ、ガルガンディア地方へ

 小心者の父親と豪胆な母親に見送られ、リンは結局メイド服のままだった。どうやら母親の策略らしい。メイドを連れて歩くと確かに貴族になったようだ。

 挨拶周りは終わったので、ヤコンの店に戻ると、ヤコンの店は慌ただしく人が行きかっている。使用人たちがゴブリン達を洗って服を着せており、店の奥ではエルフの少女とウィッチ達にお化粧をしたり、服を選んだりと楽しそうな声も聞こえてきた。


「ああ、ヨハン殿、おかえりなさい」


 俺の姿を見つけたヤコンが近づいてきた。


「なんだこの騒ぎ?」

「あなたのせいでしょうが!使用人たちがエルフの少女に歓喜して着せ替え人形にするわ。オークとゴブリンの汚さにオバちゃんたちがやる気は出すわで、大変なんですよ」


 ヤコンにしては珍しく冷静さを欠いた言葉に笑ってしまう。


「ははは。ヤコンもそんな顔をするんだな」

「まったく、あなたに拘わると落ち着くときがないですよ」


 ヤコンの言葉に笑いながら、メイド姿のリンが凍るような表情をしていた。


「えっと……リンさん?」

「ヨハン様……これはどういうことですか?」

「いや~これは~なぁ~ヤコン」

「私は知りませんよ。世話代はしっかり頂きますからね」


 ヤコンは俺とリンを置いて去って行く。残された俺は恐る恐るリンを見る。


「ヒッ!」


 般若のような形相をしたリンに睨まれる。


「どういうことですか?」


 俺は奴隷商館に行ったこと、そこであった出来事を話した。もちろんで堅い廊下で正座である。足は痛いし、使用人たちには微笑ましそうに見られるし、恥ずかしかった。


「商館に行ったことは不潔だと思いますが、それでもそこでの行いは確かに理解できます。だから相殺ということにしておきますが、次は許しませんよ」

「はい!」


 リンの言葉に勢いよく返事を返すと、リンは溜息を吐きながら納得してくれた。


「あんたは何様なの?」


 やっと落ち着いた雰囲気をぶち壊す声がかかる。


「はい?」

「あなたはこの人の何なの?」


 それは先程のボロボロのエルフ少女ではなく。綺麗に洗われた金色の髪と汚れを落としたことで本来の白さを取り戻した肌が、エルフ特有の美しさを最大限に発揮していた。


「うっ……エルフの女の子?」


 あまりの美貌にリンは言葉を詰まらせる。


「ねぇあなたは何?」


 エルフの少女が何を求めるいるのか、俺にもわからないが、詰め寄られたリンは心を立て直したようだ。


「わっわたしはヨハン様の従者です」

「従者がご主人様を説教してもいいの?」

「うっ、でも、ダメなモノはダメだと言える人がいないと」

「主人の意向に従うのが、従者でしょ?」

「うっ……さっきから何なんですか!あなたは?」


 リンも責められるのに耐えられなくなったのか、逆にエルフ少女に問い返した。


「私は奴隷。ご主人様の慰みものになる存在よ」

「おい!誤解を招く言い方をするな!」

「なっ慰みものって、不潔です!」

「なぜ俺が殴られる!」


 リンに殴られた後は、とりあえずリンを説得するのに必死だった。

リンが落ち着くころには、ヤコンが全ての用意を終えていた。


「それで、どうするんですか?」


 ヤコンの質問に対して、俺は精神的に疲れを感じていたが、当初の予定通り王都を出ることにした。ゴブリン三人とリンが運転できるというので、運転は任せて俺は荷台に乗る。オークやウィッチ達も綺麗にしたおかげか、奴隷商館で見たときよりも明るくなっている。


「それで?お前はなんなんだ?」

 

 俺の横にはエルフの少女が陣取っている。


「シェーラ」

「はっ?」

「シェーラよ。ご主人様」

「ああ、お前の名前か」


 10歳ぐらいの見た目のくせに、大人な雰囲気を醸し出してくる。

シェーラと名乗った少女に素っ気ない態度を取っているのは、雰囲気にのまれそうだからだ。


「ご主人の土地に行くのでしょ。楽しみね」


 少女に呑まれそうなのも悲しいが、あれ以来リンに素っ気なくされているのも悲しい。


「はぁ~ガルガンディアは元々共和国の領土だからな。あまり珍しいものはないぞ。あるのは森ばっかりだ」

「ええ、知っているわ。ヤコンと言ったかしら、商人との話を聞いていたモノ」


 この少女はやはり賢い。こちらの意図や感情を理解することもできる。そのうえ何かの目的を持って行動している様子だ。


「シェーラは何が目的なんだ?」


 俺は直接問いかけてみた。


「ふふふ。ご主人は頭のいい人ね。嫌いじゃないわ。でも、内緒よ」


 やはり醸し出す雰囲気に妖艶さが見え隠れする。もし成人していたら、襲っていたかもしれない。少女を襲う自分の姿を想像して首を振る。気分を変えるために馬車の外を見る。

 

「どうやらお客さんのお出ましだ」


 俺の言葉に馬車に乗って会話を楽しんでいたウィッチ達が黙る。皆わかっているのだ。何が来たのか。


「ヨハン様!盗賊です」

「そうみたいだな。でも、ただの盗賊じゃないだろう」


 王都を出てガルガンディアまで半分も進んでいた。まぁ仕掛けるならこの辺だろうと思っていた。


「みんな思う存分暴れていいぞ。死ななかったら直してやる」


 俺は馬車に乗る前にこうなることは告げている。アイテムブックスから武器を出して、それぞれに渡した。本来奴隷に武器を持たすことはないが、彼らも覚えているのだ。自分達を酷い目に合わせた奴のことを……


いつも読んで頂きありがとうございます。

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