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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
ガルガンディア要塞攻略戦
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祝賀式

第二章もこれにて閉幕となります。

もう一話閑話を挟んで第三章に突入します。

どうぞよろしくお願いします。

 俺は場違いな場所に参加させられている。

豪華なドレスを着た女性。タキシードに身を包んだ文官達。鎧を纏い武勇伝を語り合う武官たち、そんなお偉いさんが集まる場所に緑色のローブを身に纏って参加させられているのだ。


 結果から言うと、戦争は勝利した。


 共和国との戦争はガルガンディア要塞を攻略したとき一つの終結を迎えた。

砦を失った共和国はすぐに和平交渉の使者を送ってきた。今回襲撃を受けた三つの砦を差し出すので、許してほしいという内容だった。

 それに対して王国側も同意し、和平が成立したのだ。そのためこの場に集まった者達は戦争で活躍した者を王様が労うために呼び出したのだ。


 まぁ俺もその一人に含まれている。唯一救いがあるとすれば、顔見知りがいたことだ。


「ランスも活躍したんだな」

「まぁな。ヨハンの活躍も聞いてるぞ。ガルガンディア要塞攻略に貢献したらしいな」


 そうなのだ。ランスは第一軍中でも群を抜いて活躍した。救った町の数は十件を超え、倒した敵の指揮官も多くいるらしい。

 ランスが付いていた騎士もよかったらしく、ランスの活躍をそのまま上官に報告してくれたのだ。そのおかげでランスの活躍は評価され、こうして祝賀会にまで呼ばれることになった。


「俺なんてお前に比べたらたいしたことはないさ」

「謙遜は止せよ。セリーヌ様がお前を命の恩人だと言ったんだろ。十分な活躍だ」


 俺の方も結構厄介なことになっている。確かに約束通り悪い方には手を出されていない。もちろんアラクネを倒したのはセリーヌということになった。

 しかし、セリーヌは俺がいたからこそアラクネを倒すことができたと吹聴し、またその後の指揮系統も俺に一任したと報告したのだ。間違ってはいないだけに否定もできない。

 軍の指揮をできる人材として、俺は過大評価されてしまった。セリーヌが何をしたかったのかますますわからなくなった。

 いつまでも考えていても仕方ないので、とりあえずもらえるモノはもらっておこうという結論に至った。

 

「そろそろ始まるみたいだぞ」


 パーティーの主催者である国王様が祝賀会場に現れる。隣には王太子様とミリューゼ様が付き従っている。

 

「皆の者、よくぞ集まってくれた。ここに集まってくれた者、我が国のため命を捧げてくれた者、全てが私の誇りだ。そして今日はその中でも生き残り、多くの活躍をしてくれた勇者を称えたいと思う」


 王様の横にいたミリューゼ様が名前の書かれた書状を王様に手渡す。


「では、今から名前を呼ぶ者は前に出よ」


 パーティー会場にはこの国の重鎮達が集まっている。文官の最高位である宰相も、武官の最高位である元帥も、この国を操る人物達の前で呼ばれたのは足った五人の人間だった。


「まずは、第一功労者である。第二軍総大将、ミゲール・アンダーソン」


 第二軍総大将アンダーソンは公爵家の人間であり、今回の共和国との戦いで、自身の考えた苛烈な作戦を数々成功させた。その成果で王国に勝利をもたらしたことは誰もが知っていることだ。


「はっ!」

「貴殿には爵位は不要であろう。新たな領地と金3000とする」


 すでに公爵家の長男として生を受けているため、家督が継がれることはわかっている。

 そのため奪った領地の管理と言うかたちで褒美を取らせたのだ。それは領地と領地経営に必要な金銭の授与という形でなされた。


「ありがたき幸せ、この身は王国のために」


 アンダーソンは頭を垂れて、王様から書状を受け取る。


「第二功労者、第三軍司令官、セリーヌ・オディヌス」


 セリーヌはアンダーソンと同じ公爵家の人間ではあるが、女性として生を受けたため、セリーヌは家督を継ぐことはない。オディヌス家はセリーヌ以外に長男がいるのだ。  


「はっ!」

「貴殿は金200と名誉騎士の称号を授ける」


 女性であるセリーヌに貴族としての爵位を与えることはできるが、セリーヌがそれを望まなかったため、報酬と騎士としての称号だけを贈ることで折り合いがついた。


「では第三功労者、第三魔法師団ヨハン」


 それは周囲の人間からは意外な名前であった。平民が功労者になることはあるが、第三功労者として呼ばれることは珍しい。ほとんどが将軍クラスの指揮官が呼ばれるのだ。文官などはどうして平民がなどと騒ぎ始める始末だ。


「はっ!」

「貴殿には爵位を授けるものとする」


 会場中に更なるどよめきがおきた。平民が戦争の活躍で爵位をもらうなど前代未聞な出来事であり、もし、もらえたとしてもセリーヌのように名誉騎士と呼ばれる特別枠である。ましてや貴族の仲間入りをするなど考えられなかった。

 もちろん名誉騎士のように武勲をたて、尊敬を集めた者はいるが、あくまで名誉騎士なので貴族ではない。なにより、名誉騎士は一代限りの貴族階級であり、その子らは貴族としての地位を受け継ぐことはできない。だからこそ、他の貴族達も寛容に接することができた。

 しかし、ヨハンのもらった爵位は正真正銘の貴族の仲間入りする切符である。この日を持ってヨハンは貴族への仲間入りを果たしたということだ。


「さらに、爵位を授けるにあたり二つのモノを授ける。一つは我が国の貴族になるに当たり、ガルガンディアの名を授ける。これからはヨハン・ガルガンディアと名乗るがよい」

「ありがたき幸せ」

「最後にガルガンディア要塞を貴殿の城として、周囲の統治をせよ。初期資金として金300を与える」

「はっ!」


 俺は書状を受け取り、元の位置へと戻る。

その後はランスが名誉騎士の称号を得て、騎士となり、同じくルッツが名誉騎士に任命された。以上の五人が最も国に貢献した者として称えられた。


「おいおい。どこが俺と比べられないだよ」

「俺も驚いているよ」


 本当に驚いている。セリーヌにハメられた感が半端ない。明らかにセリーヌがもらい受けるはずだった物が俺に渡されたような気がするのだ。

 何より領地持ちになるなど考えていなかった。


「とりあえず、お互いに夢は叶えたな」


 清々しい顔をしているランスに、俺は困惑顔になりながら、ランスが夢を叶えたのだと思い出した。

 自分のことでいっぱいいっぱいなのだが、このゲームはランスが主人公であり、ランスが騎士になって王国を救う話なのだ。

 まだ、ランスの旅は第一段階を終えたに過ぎない。本当の物語はここから始まるのだ。


「そうだな。俺は騎士を通り越して爵位をもらうことになったけどな」

「爵位はナイトの称号でもあるだろ」

「まぁな」


 俺はランスと握手を交わし、互いの道に進むために分かれた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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