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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
ガルガンディア要塞攻略戦
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サクの策

 目的地に到着した俺達は、セリーヌに会議をするため本拠地に呼ばれた。

俺はミリーを副官として作戦会議に参加することになった。


「どうしたんだい?さっきからそわそわして」


 姉御肌のミリーは俺の肩をバンバンと叩きながら心配してくれているらしい。

ミリーと仲良くなったことで分かるのだが、男前な性格もあり、仲間内でミリーの存在はかなり影響を持っている。

 また仲良くしていることで、他の団員も俺を隊長と認め始めてくれているのがありがたい。


「こういう作戦会議みたいなものに参加するのはまだ慣れてないんだよ」

「ははは、最年少の隊長殿はどうやら肝っ玉が小さいようだね」


 大笑いをしているミリーと並んで歩いていると、色々と目立ってしまう。

ミリーは元々身長が俺よりも高く、一つ一つの動作が大げさなのだ。


「肝っ玉が小さくてもいいさ。俺は金を稼げて長生きできればいいんだから」

「本当に言ってるのかい?色々と調べたけど随分と面白いことをしているみたいだけど」


 オーガ討伐や共和国の情報を持って帰ったことを言ってるのだろう。


「あれは行き当たりばったりだよ。別に俺がしたくてしているわけじゃないさ」

「ふ~ん。どっちにしても面白い奴だってことだね」

「ジェルミー団長にも同じようなことを言われているよ」


 俺の言葉に肩をバンバンと叩かれ、本幕のテントに入って行く。本幕に入れば女性特有の甘い香りが充満している。

 セリーヌを中心に、右にトリスタントその横に副長らしい人が座り、その後ろに従士が立っている。

反対側の左側には見たことがない文系女子が座っていた。

 

「さて、全員揃ったみたいね」

 

 俺達が席に着くと、セリーヌが全員を見渡しながら開始を告げる。


「どうやって砦を攻略するかだけど。サク、説明をお願い」

「はい。セリーヌ様。初めて会う方もおられますので、自己紹介からさせていただきます。セリーヌ様の下で軍師、いえ、参謀をさせていただいております。サクと申します。お見知りおきを」


 主に俺に視線を向けて話していたので、多分他のメンバーはサクのことを知っているのだろう。

俺は軽く会釈をしておいた。


「では、今回攻略するガルガンディア要塞ですが、現在まで落とした者がおりません」


 サクの言葉に全員が息を飲む。


「まぁ戦争に晒された経験がないともいいますが……」


 サクの一言に唖然として、その場にいた者が押し黙る。


「今までの共和国との戦争で、ガルガンディア要塞が使われることはありませんでした。ですが、今回共和国は三つの砦を使い、食料の補給と兵士の休息を維持してきた。その一つであるガルガンディア要塞を私達は奪う。もしくは破壊する必要があります」


 サクによる現状の報告を兼ねた確認が行われる。


「そこで我々はガルガンディア要塞を包囲し、救援を求めにきた兵を討ち、砦内部に残る兵士を孤立させます」


 サクは簡単なように言うが、一万三千の兵であっても全ての道を塞ぐことなどできない。

何より王国側の道は塞げても、共和国側から入られれば止めることなどできない。


「こちらの消耗が激しすぎないか?」


 それらを考慮した上で、トリスタントから質問が投げかけられる。


「もちろん、全てを塞ぐことは不可能に近いです。ですが、逃げてくる兵を各個撃破することはできます。また、支給される補給物資を奪うことも」


 サクが言葉を発して俺を見る。


「そうですね。ヨハンさん」


 それは遊撃部隊である俺の役目だということだろう。


「それが仕事ならやりますよ」

「それがあなたの仕事です」


 セリーヌからの命令ではんくサクからの命令として告げられる。

不思議に思ってセリーヌを見れば、セリーヌは黙ったまま目を瞑っていた。


「具体的な作戦内容は以上ですか?」


 俺は挑発するようにサクに質問を投げかけた。


「はい。あなたにお話しするサクは以上です。共和国側に回り込み、敵を排除してきてください」


 一万三千でも足りぬことを足った500で成し遂げよという。

それが無茶なのかと問われれば、そうでもない。向こうが得意としている戦法をこちらがとるだけだ。

 要は500が一丸となって動くのではなく。小隊に分けて分散して動けばいい。

そうすることでゲリラ的な動きが生まれ、相手に動きが気付かれ難くなり、また相手の意表を突きやすくなるのだ。


「わかりました。早速移動しようと思うので、ここを離れても?」

「かまいません」


 サクはセリーヌに確認を取ることなく返事を返した。 

俺は何となく答えを予想できたので、驚かなかったが、これにはミリーやトリスタントの方が驚いていた。


「では、準備を済ませてすぐに立ちます」

「よろしくお願いします」


 それまでとは違い。最後の言葉は丁寧であり、最後だけ感情が込められていたような気がする。


「ええ。では行ってきます」


 俺が本幕から出ると、すぐにミリーが追いかけてきて俺の肩を掴んだ。


「何をやっているんだ。あんの作戦なんかじゃない。無謀な賭けを私達にしろと言っているだけじゃないか」


 ミリーはサクの意図を理解できなかったしい。

無理難題を押し付けられたように憤りを現れにしていた。


「そんなことないですよ。策はあります」

「策?」

「ええ、多分サクさんも同じようなことを考えているのではないでしょうか?だから俺を抜擢したんだと思います。騎士では考え付かないような内容を」


 そう思うと、共和国の指導者は騎士の考え方をしていないかもしれない。

俺は道すがら、ミリーにどういうことだと説明を求められながら、自分達の隊へと戻ってきた。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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