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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になるには兵士から
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図書館に行こう

 またまた露店商で情報収集がてら晩御飯を買ったことで、聞くことができた宿に赴く。到着した場所に古びた館が立っていた。値段が安いが評判が良い宿と聞いたところ、ここを紹介されたのだ。


「ここで合ってるよな?」

「合ってるだろ。キュウエンの館って書いてあるし」

「そうか……」


 ヨハンは幽霊やゾンビが苦手だ。この世界はゴースト系のモンスターが存在するらしいから、正直会いたくない。戦士であるヨハンがいくら剣や斧を振るおうと、まったく歯が立たないのだ。


「中に入ろうぜ」

「あっ、ああ」


 ヨハンは恐る恐る。ランスは堂々と中に入って行った。


「いらっしゃいませ」

「うわっー出たー!!!」


 ヨハンの叫びにランスが襟首を掴んでくる。


「ヨハン。大丈夫だ。こちらは幽霊じゃない。単なる老婆だ」

「えっ?」


 ランスに諭されてもう一度顔を見る。明らかに骸骨のお化けだと思うようなガリガリの婆がいた。


「ほほほ、楽しいご友人ですな」

「すみません。二人で泊まりたいんですが」

「お二人なら銅貨3枚にございます」

「では、とりあえず一週間お願いします」

「おいっ、ランス!」


 ヨハンは一週間も、ここに泊まると言ったランスに抗議の声を上げる。


「仕方ないだろう。俺達は金がないんだ。ここまで安く泊めてもらえるんだ。ありがたいとは思わないのか」

「うっ、確かにありがたい」

「なら従え」

「わかった」


 ちなみに銅貨三枚は元の世界で三千円と同じ意味だ。ヨハンはしぶしぶ承諾して、部屋の鍵をもらう。


「夕食はどうされますか?」

「夕食もあるんですか?」

「ええ、銅貨3枚で黒パンとスープをお付けしています」

「では、それもお願いします」

「かしこまりました。では今から一時間後に部屋の方にお持ちします」

「助かります」


 ランスが老婆と交渉を終えて、部屋へと向かう。鍵と言っても簡単な錠を開けるタイプなので、シーフ系の職業ならば簡単に開けることができる。


「本当にここを拠点にするのかよ」

「俺達の現状ではここがベストだ」

「まぁそうだけどよ」


 ランスが決めたことなら仕方ないと思えてしまう。自分がいるのはヨハンのせいかもしれない。


「それより、明日は朝から王都を歩こうぜ。街を把握してないと今日みたいに迷子になるからな」

「そうだな。それに図書館とかあるなら行きたいな」

「えっ!どうしたんだ?」


 ランスはヨハンの額に手を当てて心配してくる。


「何がだよ」

「いや、勉強嫌いなお前が図書館なんて」

「いいだろ、別に。俺にだって目標があるんだ」

「それはいいことだけど。雨が降らないといいが」


 ランスと他愛な会話をしている内に飯がやってきて、二人は休息をとる。藁で作られたベッドの上でステータス画面を見ていた。


 名前 ヨハン

 年齢 14歳

 職業 冒険者(ランクC)戦士

 レベル 10

 体 力 100/120

 魔 力 17/17

 攻撃力 100

 防御力 89

 俊敏性 121

 知 力 5

 スキル 斧術、3/10


 スキルポイント 10


 検閲という言葉を覚えただけで、知力が2も上がってるよ。ヨハンって……どんだけバカなんだ。知らなさすぎだろ。とりあえず勉強しよう。


 まぁ、話を戻すが、スキルポイントとは本来何かスキルを覚えるときなどに使われるはずだ。なら、覚えるべきスキルがあるんじゃないかと、スキルポイントを注視した。するとスキル覧が出てきた。


「いっぱいあるけど、ほとんど俺のレベルで覚えれるモノがないな。この中で必要なのはっと」


 俺はスキル覧を物色しながら、目ぼしいスキルを探していく。気になるスキルが二つあった。


・ヒール、魔力を消費し、体力を回復する。また、ケガを治すこともできる。威力はその者の知力に比例する。

・経験値アップ、経験値を1.5倍にしてくれる。


 どちらもスキルをポイントを6使うことで覚えることができる。他にも魔法系であれば、火属性や水属性を覚えられるようだが、回復の方が先決に思えてくる。それに経験値アップがあれば、スキルポイントもたまりやすいんじゃないか?ヨハンのレベルが10だから、多分スキルポイント10なわけだしな。


「とりあえず、魔法を使ってみたい」


 スキルポイントをヒールに使うことに決めた。戦士が回復できて何が悪い。スキルにヒールと表示されたことで、ヒールの呪文を唱えてみる。白い光が生まれて暖かい。光が消えるとなんだが元気になったような気がする。



 体 力 120/120

 魔 力  14/17


 どうやら成功したらしい。ヒールを使うと魔力を3消費するようだ。体力は20回復したので、どれくらい回復するのか把握したいから今度ダメージを受けたときに使ってみよう。


「今の光はなんだ?」

「気にするな」

「気になるだろ普通」

「たいしたことないさ」

「本当か?」

「ああ、とにかく寝ようぜ」

「……まぁ、いいか」


 ランスも疲れているのだろう。短い会話で眠りについた。ヨハンは魔法を使えた興奮で、なかなか眠れなかったが、慣れない環境のせいかいつの間にか寝てしまっていた。


「ヨハン、起きろよ」

「うん?ああ、起きてるよ」

「起きていきなり嘘つくなよ。全然起きてないだろ」

「うるせぇな」

「今日は街の散策をするんだろ。早く起きろよ」


 ランスの言葉に目を擦りながら、身体を起こす。洗面所など気の利いた物はないので、館の井戸を借りて顔を洗う。


「それで、昨日は図書館に行きたいって言ってたけど本当に図書館でいいのか?」

「おう。俺は字も書けないからな。自分の名前ぐらい書けるようにしてから騎士になるぞ」

「そうか、なら朝食を食べたら図書館に行こう」

「おう。ランスはそれでいいのか?」

「俺は適当に散策してくるよ」

「ズリい」

「ズルくないだろ。俺は普段から勉強してるからな」

「へいへい。サボってた俺が悪うございました」


 適当に朝食を済ませて図書館へと向かう。王都の図書館と言っても、貴族や王族が使うほど立派なものではなく。街の商店が共同で出資している寺子屋みたいなものだ。そこで身分証を提示することで、本を読ませてもらえる。ちなみに図書館といっても、貸し出したりはしていない。この世界では本は貴重品なのだ。


「じゃあ、俺は行くからちゃんと勉強しておけよ」

「中に入らないのか?」

「勉強はまた今度な。今日は街を散策してくる」


 ランスは、ヨハンが図書館に入っていくのを確認して去って行った。


「すみません。図書館が初めてなんですが、文字とか数字を勉強するのに分かりやすい本ってありますか?」


 カウンターに座る司書さんに問いかけると、ピンクの髪に大きな眼鏡を付けた女性が座ったままこちらを見る。


「初めてのご利用ありがとうございます。文字と数字を分かりやすく勉強するための本ですね。こちらなどいかがでしょうか?」


 司書さんは近くに置かれていた本を差し出してきた。そこにはゴブリンでも分かる、文字と数字の覚え方と書かれていた。

 ページをめくると、最初に数字が書かれていた。ギリシャ文字でⅠからⅩまで書かれており、次に文字の説明が書かれていた。文字は、母音、子音に分かれ自分が発言している言葉が、どこに当てはまるかも書かれているので覚えやすい。


「確かに見やすいですね。ではこれを読ませてもらってもいいですか?」

「はい。お名前を控えさせていただいてもいいですか?」

「はい。ヨハンです。これが証明書です」

「ヨハンさんですね。私はアリスといいます。どうぞこれからも当館を活用ください」


 アリスさんに微笑みかけられて嬉しくなるが、とりあえず自分の名前ぐらいはかけるようになろうと、文字の練習に取り掛かる。この国の文字は母音12個と子音30個を組み合わせて発音する。結構覚えやすく簡単だった。12×30=360個の文字とⅩまでの数字を、全て覚えた頃には、知 力64まで上がっていた。言葉として知っていいても、文字を覚えることは相当難しいことだろうから、知力も一気に上がったのだ。


「ふぅ~これで一通り終わりだな」

「随分と熱心でしたね。もう日が暮れていますよ」

 

 覚え終わった頃に、アリスさんに声をかけられた。


「ええ、俺って今まで勉強をしてこなかったんですけど、勉強を始めると意外と面白いものだなって」

「そうですね。本は知識の宝庫です。その楽しみが分かっていただけたのなら何よりです」


 アリスの好感度が上がったのがわかった。


「また来てもいいですか?」

「是非お待ちしています」


 可愛らしい眼鏡女子のアリスに満面の笑みで言われれば嬉しいのは当たり前だ。


「じゃあ近いうちに」

「はい。さようなら」


 アリスに別れを告げて、図書館を後にした。宿に帰るとすでにランスは帰っていたらしく、迎えてくれた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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