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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
最終章 誰がために
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エンディング

最終話です

 教会の前にある広場には、兵士や騎士が聖女アクアとシェーラを囲むように整列していた。それは正式な式典である。二人はある契約のためにテーブルを挟んで向かい合っていた。

 暖かな紅茶とクッキーが置かれているテーブルには一枚の契約書が置かれていた。二人の美女は楽しそうに会話を楽しみ、その光景に信者たちも見惚れてしまう。


「これで、今後一切の戦闘を停止してくれますね」


 シェーラは精霊王国連合の代表として、聖女アクアの前に座っている。また聖女アクアも、ランス王国の将軍の一人ではなく、教会の最高責任者として座っていた。それは、二カ国を止められる唯一の存在としてシェーラの話を聞いているということだ。


「わかっています。戦いは何も生みませんから」


 そこには凜々しく契約を結んだシェーラの姿があった。そして、優しい笑みを浮かべた聖女アクアが、それに同意する。二人の契約は世界に平和をもたらすために必要不可欠な内容だった。そして二人は当たり前のように、その契約を結び、戦争の終結を宣言する。


 聖女アクアはシェーラと契約を結ぶとすぐにミリューゼに書状を送った。戦闘の即時停止を言いつけるものだ。それは教会がランス王国に送る正式なもので、双方に利益のあるように同盟を結ばせる内容が書かれていた


「どうしてでしょうね。あなたと私は今日会ったばかりだというのに、昔から仲が良かったような気がします。そんなはずがないのに、まるで同じものが好きだったような」

「不思議ですね。私もあなたと同じことを考えていました。あなたという人がどんな方なのかわからない。だけど、私と同じものを好きなこの人を信用できると私も思っていました」


 二人は何かがなくなったような、それでいて、なくなったものによって結ばれているような気がした。



「この約束は破ってはいけないような気がします。それに本来であれば絶対神様は唯一の神なのですが、私はもう一つ神様を崇めたいと思います」


 聖女は含みのある声で、どこか悪戯っ子のような笑みをつくった。


「聖女様のお言葉とは思えませんね。でも、私も同じ気持ちです。私も精霊神様以外に崇めたい神様がいます」


 二人は顔を見合わせて笑い合った。二人は同じ神を崇めることになる。それはこれからの世で、少しずつ広まっていく新しい神様がいたという。

 その神様の下、契約を結んだ二人の関係は強固なものとなり、生涯の友となった。そして彼女たちの友情が続く限り、二カ国に戦争は起きなかったという。精霊王国連合に住まう者たちはシェーラを賢者と呼び、ランス王国にいる聖女アクアと共に平和を訴え続けた。


♦♢♦♢♦


「どうしてかしら?急に涙が溢れてきて」


 ランス王国の片隅にある市民街に一人の女性がいた。女性の腰には斧が装備されているが、彼女は決して戦士ではない。彼女は魔法使いとして冒険者ギルドに登録されている。冒険者を始めた頃はオロオロとしたものだが、今では中堅として後輩に慕われるほどになった。

 そんな彼女は突然溢れ出す涙に驚き、なぜ涙が流れるのかわからなかった。


「リン?どうかしたっすか?」

「フリード、なんでかはわらないの?でも、急に涙が溢れてきて胸に大きな穴が空いたみたいな気がするの」

「リンもっすか?なんだか、おいらもさっきから何か大切なものを無くしたみたいな気がするっす」


 同じくパーティを組む中堅の冒険者、シーフのフリードがリンと呼んだ女性と共に泣いていた。


「おいらたちは何か大切なものを忘れてしまったっすか?」

「わからない。わからないけど、とても大きくて、とても大切な何かがなくなったような気がするの」


 二人はなぜ涙が流れるかわからないが、一晩中その涙は止まることなく泣き続けた。リンはそのあと涙の理由を解明することはできなかった。

 フリードと所帯を持ち、三人の子供を授かることになる。その中の一人にヨハンという名前をつけたことは偶然だったのかは誰もわからない。


♦♢♦♢♦


「おい、起きろよ」


 誰かが俺を呼んでいる。


「うん?」

「いい加減にしろよ」


 声をかけられて目を覚ました先に居たのは、ボロボロの服をきた少年だった。


「誰だ?」

「おい!どうしたんだよ。俺のこと忘れたのか?まさかさっきの戦闘で、頭でも打ったか?」

 

 辺りを見渡せてば緑色の肌をした子鬼たちに囲まれていた。そして、一人の少年が子鬼と対峙していた。


「それにしてもゴブリン如きに遅れをとるとは情けないぞ」


 ゴブリンと言う単語に一気に意識が覚醒する。


 ああ、はっきりと思い出した。ここは俺が初めて目覚めた場所だ。そしてこのボロボロの服をきた少年はランスだ。


「ランス」

「なんだ。大丈夫そうじゃないか」

「ああ、大丈夫だ」


 俺は斧を持つ、最初の頃の恐怖などなくなっていた。むしろ、またこいつと旅ができる喜びに心が震える。


「早く片付けて王国に行くぞ」

「なんだ?起きたら急に元気じゃねぇか」

「まぁな。俺はお前を騎士にする。そして、俺も騎士になるんだ」


 二人は背中を預け合いゴブリンを倒していく。


 二度と戻れないと思った世界をまたやり直せる。今度は間違えない。誰も死なせない。俺は俺のトゥルーエンドを目指して歩いていく。


 これは俺の物語だ。

 

いつも読んで頂きありがとうございます。


この話を書き始める際に、自分ではここまで長くなるとは思っていませんでした。

騎士になる友人の脇役、そして、ライバルとなり、それでも友である。そんなテーマを自分なりに想いながら書いているうちに、だんだんと話が長くなってしまいました。


そして彼は一生懸命生きることで現実の厳しさを知り、それでも平和を求める。

自分のなかで様々な想いが溢れるようになり、主人公には色々な重荷を背負わせてしまいました。

最終話で彼の重荷を少しでも軽くできればよいのですが、作者の気持ちですね。


最後まで読んで頂き本当にありがとうございます。

しばらくは誤字脱字などの修正を行いたいと思います。

それが終われば、また新作の投稿をしていきたいと思いますので、どうぞ次回作もよろしくお願いします。

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