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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
最終章 誰がために
222/240

聖剣

私的な事情で長期休みをいたしました。

本日より投稿を再開したいと思います。

 サクの身は、動かなくなると静かにその身を霧へと変えていった。それは彼女の肉体が元々滅んでいたモノであり、仮面によってその身を保たれていたことを意味している。

 聖剣はそれをわかっていたからこそ、サクの身を傷つけるのではなく、仮面だけを切ったのかもしれない。聖剣なりにヨハンのことを思ってくれたのだろう。


「ありがとう。お前のお陰でサクと別れの言葉を交わすことができた」


 青白く光る聖剣はヨハンにお礼を言われて、光を増したような気がする。もしかしたら聖剣はヨハンの言葉を理解しているのかもしれない。ヨハンがサクと別れを終えて、巨人と冥王の戦いを見れば、決着が付こうとしていた。二人の間で集約していた力が冥王へ降り注ごうとしていた。


「ジャイガントも、リベンジを果たしたみたいだな」


 冥王に力が集約していく。同時に死人たちは次々とその身を消滅させ、ホーンナイトは崩れて元の骨へと帰って行く。ヨハンは、ジャイガントの下へ歩みを進めようとして、数歩進んだだけで足を止める。

 力の均衡が崩れ、全ての力が冥王に流れたはずだった。冥王は力を保てず、死人もホーンナイトも原型を止めておくことができなくなっていた。

 だから、冥王は滅ぶのだと思っていた。しかし、冥界の王は甘くはなかった。その身は確かに滅んだ。滅んだ冥王の体は黒い霧に包まれ、その身を変貌させて復活したのだ。


「俺自身が冥界の者になるとはな」


 黒い鎧に身を包んだ冥王は、全身が骸骨へと変貌していた。骸骨へ変貌した冥王を冥王たらしめるのは、冥王が来ていた黒い鎧と手に握られる赤黒い魔剣だけだ。


「ふむ。しかし、本当の解放とはこういうことをいうのかもしれないな」


 骸骨となった手を何度も握り締め自らの力を確かめていた。ヨハンは冥王の変貌に立ち尽くし、どうしたものかと考えていると、ジャイガントは決着がついていないことに気づいて、すでに動いていた。

 高々と巨体が飛び上がり、冥王の周り全てを飲み込む威力を込めた攻撃を仕掛ける。


「貴様がどう変わろうと関係ないわ。我の一撃をもって貴様を冥府に沈めてくれるわ」


 冥王の変貌に動じることない、ジャイガントの動きは確かに勇者であった。勇者ではあったが、それは相手の力を理解していないという点で無謀といえる行動だった。


「ふむ。貴様との力の均衡が俺を新たなステージへ上らせてくれたぞ。巨人よ、貴様には感謝を込めて苦しまぬ死をくれてやる」


 冥王が握る魔剣の周りに、赤い光が集まり一気に放出される。放出されたエネルギーはジャイガントの胸を貫き、エネルギーは雲を突き抜け世界を二分した。

 暗い夜空が一瞬真っ赤に染まり、その光が消えると静かな静寂が訪れる。静寂は一瞬のことで、地面に巨大なジャイガントが落下したことで、音も時間も動き出す。


「ジャイガント!」


 死霊王の絶叫が戦場に木霊した。死霊王はジャイガントに駆け寄り、親友の最後を見ることになる。ジャイガントの胸から腹にかけて巨大な穴が開き、ジャイガントが一瞬で絶命したことが理解できた。


「今度は貴様が相手をするか?」


 冥王は魔剣を死霊王に突きつける。死霊王はジャイガントの傷を見たことで、冥王の力を把握してしまった。だからこそ恐怖して後ずさった。しかし、冥王と死霊王の間にヨハンが割り込んだ。


「貴様は?」

「俺の名はヨハン。ヨハン・ガルガンディアだ」

「そうか、貴様がクダンの男か」

「クダン?」

「そんなことはどうでもいい。そんなことよりも貴様が俺の相手をすると聞こえたが?本気か?」

「ああ、本気だ」


 ヨハンは聖剣を正眼に構える。冥王もヨハンが構えた武器がなんであるのか、すぐに理解できた。それは魔剣と対を成す存在であると理解したいのだ。


「ほぅ~貴様がそれを持つということは、英雄を殺したというのは本当のようだな」

「俺は殺してない」

「そんなことは俺には関係ない。どうでもいいことだ。だが、貴様が聖剣を持って現れた。これは運命であり必然なのだろう」


 冥王は骸骨となった顔で笑う。実際には笑っていないのかもしれないが、ヨハンには笑っているように見えた。

 

「お前がどう思っても俺は知らん。だが、友の仇は討たせてもらうぞ」

「できるのか?聖剣を持ったからといって、貴様が俺に追いついたとは思えないが」

「そうだな。俺は黒騎士に一度も勝ったことはない」

「何度か戦ったか?」

「お前は覚えてないだろうな」


 ヨハンは黒騎士に打ちのめされた自分自身を思い出す。だが、超えられない壁はないのだと、サクが教えてくれた。諦めなければ一矢報いるまでの思いは叶うのだとジャイガントが見せてくれた。

 だから、ヨハンはこの場に立たなければならない。黒騎士、いや冥王の前に……


「お前を倒すのは俺の役だ」

「やってみるがいい。俺は魔剣の真なる力を手に入れた。聖剣を持っているのならば、試し切りの相手ぐらい務めてみせろ」


 冥王はジャイガントを殺したときと同じように赤い光を魔剣に集め始める。ジャイガントに放った技を防げなければ戦う資格はないということだ。


「こい!」


 それに対してヨハンは聖剣を構え、青い光を集める。赤い光が降り注ぎ、ヨハンを飲み込んだ。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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