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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になるには兵士から
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姫の帰還

 黒騎士をやり過ごした俺達は、目の前に見える門へ向かう。

国境だけあって、立派に作られた門を叩けば、犬の顔をした獣人が出てきた。


「誰ですワン」

「突然すみません。こちらに使節団か、捜索隊はおられますか?」


 俺は出てきた犬にゲームでは登場するはずの捜索隊について聞いてみた。


「うん?どういうことですかワン?」

「こちらの国のご令嬢をお連れしたと伝えて頂ければ分かると思います」

「わかったワン。少し待つワン」


 語尾のせいでまったく緊張感が持てない。なんなんだ、あの駄犬は。


「お待たせしました。我が国のご令嬢がおられると聞いたのですが!」


 現れたのは青い髪の中に獣耳を生やした青年だった。まぁ、イケメンだな。


「ルドルフ兄様!」


 知り合いだったのか、ティアが駆け出す。

メイもフリードに下してほしいと伝えて、ティアの後を追う。


「ティア!メイ!無事だったのだな」


 どうやら二人の兄だったらしい。まぁイケメンでも許してやろう。

感動の再開に水を差すほど俺は野暮ではない。ここは感動するところだ。


「なんか自分こういうの弱いっす」

「兄妹が再開できるっていいですね」


 フリードとリンは素直だ。目の前の光景に感動してやがる。どうせ俺の心は荒んでますよ。

感動よりもイケメンにイラッとしましたよ。


「とりあえず、これで俺達の任務達成だな」

「そうだな。帰還も考えて何とか間に合ったな」

「それで、これのどこが俺にとって良い話なんだ?」

「まぁ一つは姫さんと知り合えただろ」


 これでイベント消化できただろうからな。


「一つは?まだ何かあるのか?」

「それは帰ってからのお楽しみだな」

「どうにも良い予感はしないがな」


 俺の言うことを信じていないランスは半信半疑といったところだ。

このイベントが失敗するとヒロインの一人がいなくなる上に、獣人との戦争は勝てないので実際のゲームオーバーなのだ。


「とりあえず帰ろうぜ」

「お待ちください」


 二人の兄である王太子殿に呼び止められる。


「まだ、お礼ができておりません。どうか、我が国に来ていただけませんか?」

「申し話ありませんが、僕たちにも事情がありまして、帰らないといけないんです」

「……仕方ありませんね。私はエルドール王国、王太子キングルドルフ・キングダムと申します。もしもあなた方が我々の国に来られることがあればどんな助けもいたしましょう」

「では、私から一つだけお願いしがあります」


 王太子殿に俺は願った。


「この戦争を取り消していただけないでしょうか?」


 ルドルフは目を瞑り天を見上げた。そして俺の瞳を見つめて力強く頷いた。


「必ず成し遂げると約束しましょう」


 獅子とは思えない優しさを持ったルドルフに可笑しくなる。気持ちの良い好青年というだけではないだろう。交わした握手から伝わる掌は鍛え抜かれた者の力を感じた。

 もし、エルドール王国と戦争になっていたなら、彼とも全力でぶつかっていたのだろうと思うと怖くなる。


「恩人よ。必ず、お主の願い叶えよう」

「ランスさん、ヨハンさん、フリードさん、リン、本当に助かりました。あなた方の勇敢さ我が父に伝えておきます」

「ありがとうなの」


 三人からそれぞれの感謝の言葉を聞いて、分かれた。

リンなどは別れる前にティアから友人だと告げられていたので、涙を浮かべていた。

フリードも感動したり、照れたりと喜びを表現していたので、この任務は大成功だ。


 最後まで警戒を怠ることなく、俺達は王都エリクドリアに戻ってきた。

門で手続きをしていると、俺達は兵士に囲まれてしまう。


「どうなっているっすか!」

「私達何も悪いことしてませんよ」


 フリードとリンは慌てて、兵士たちに連行されていった。

ランスは黙って従い、俺の前には見知った顔がやってきた。


「面倒なことをしてくれましたね」


 第三師団団長マルゼリータ殿が腕を組み、憤慨した顔で立っておられた。


「何かしましたか?」


 もちろんとぼけてやる。


「自覚がないのですか?相変わらずのバカっぷりですね。あなたの所業はすでに王国兵内に知れ渡っています」


 ここまで責められることとはなんだ?冒険者として働いたことを責められるだけだと思っていたのに。


「本当に何かわからないようですね。あなた方が獣人王国と通じていたと黒騎士殿が報告してくれました」


 アイツか!話をややこしくしやがって。

ティアを見たときから黒騎士は気付いていたのだろう。


「どういうことですか?」

「まだシラを切りますか、もうあなたと話していてもラチがありませんね」


 マルゼリータは俺に興味を失ったように、ランスに視線を向ける。

ランスはマルゼリータの美女っぷりに固まっている。


「あなたの方も何も語りそうにありませんね」


 ランスは目を瞑り、腕を組んだまま固まっている。


「とりあえず、法文官に任せます。連れて行きなさい」


 俺達も兵士たちに連行されていく。ここで逆らっても意味などない。


「だから言ったんだ。良い予感がしないって」

「バ~カ。俺達は正しいことをしたんだ。何も間違ってない」

「はぁ~騎士になることは諦めるしかないか」


 ランスは心底落ち込んだ顔で、顔をしかめた。

ランスにそんな顔をさせたことが、悔しいが、俺達が行ったことは間違っていない。答えは必ず出るはずだ。


 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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