冒険者ギルド
5話までしかかけてませんが、投稿したので頑張ります(笑)
露店商に立ち寄り、商人から物を買うことで情報を得た。情報とは冒険者ギルドの場所であり、露店商に聞いてやってきた冒険者ギルドは、立派な造りの建物だった。
「ここって神殿じゃないよな?」
「当たり前だろ。まぁ俺たちにとって、ここまで立派な建物は神殿しか知らないけどさ」
「おっ、おう。とりあえず入るか」
「そうだな」
ランスは随分と落ち着いている。俺なんて、異世界の冒険者ギルドに大興奮だ。
「ようこそ、王都エリクドリア冒険者ギルドへ。私は受付のミンクです」
出迎えてくれたのは、ウサミミメイドさんだった。
「あっ、は、はい」
ランスが圧倒されている。
「今日はどういったご用件ですか?お二人とも若いので冒険者登録でしょうか?」
「ちげぇよ。俺たちはもう冒険者だぜ」
圧倒されているランスに代わって、俺が冒険者証を見せる。
「あら、これは珍しい。木でできた冒険者証ということは、アイゼンか、シンドリスの方ですか?」
「姉ちゃん詳しいね。俺たちはアイゼンから出てきたんだ」
「それはそれは長旅ご苦労様です。それでは改めて本日はどのようなご用件でしょうか?」
「今日は戦利品の買取と隊商護衛の任務完了を報告に来たんだ」
「なるほど、お疲れ様です。では、任務達成は右から二つ目の受付へ。買取は一番左の受付へお進みください」
窓口が五つあり、一番右は新人登録、残り四つで任務を受けたり、買取を行なってくれるらしい。
「ありがとう。ミンクさんって呼んでいいのかい?」
「ええ、もちろんです」
「そうか、なら俺のことはヨハンで頼むな。それと、こっちで照れて固まっているのがランス。こいつ滅法美人に弱いからカンベンな」
俺はランスが圧倒されて固まっている理由を知っている。ランスは極度のあがり症なのだ。好みの女性や綺麗な女性を目の前にすると顕著に表れる。
「美人だなんて、ヨハンさんは口が上手いんですね」
ミンクさんは満更でもない顔で、微笑んでくれた。
「当分は俺達もこの街に住むつもりだからよろしくね」
「はい。冒険者ギルドでお困りな時はいつでもお声かけください」
ミンクはそう言うと、酒場になっているテーブル席の方へ向かっていった。案内役以外に給仕としての仕事もしているようだ。
「ランス、もういないから大丈夫だろ」
「あっ、ああ。スッゲ~な王都」
「そうだな。しかし、お前のあがり症大丈夫か?」
「だっ、大丈夫だ、そのうち治る」
「そうだといいな」
まぁピンチのときとかちゃんとしないといけないときは、働いてくれるからいいんだけど。
「それよりも報告頼むぜ。俺は素材を買い取ってもらいに行ってくる」
「ああ、頼む」
受付さん達は獣人やエルフなど美人さんばかりだ。本当に大丈夫かと言いたくなるが、まぁこれも慣れだろうと任せておく。
「すみません。買取お願いします」
「おう、んっ?若いな」
「はい。この街は始めてで、アイゼンから出てきました」
「そうか、この街は様々な物が集まるからな。変な奴に引っかからないように気を付けろよ」
「ありがとうございます」
買取をしてくれたオジサンはドンゴと言う名前らしい。ドンゴさんの忠告を聞きながら、査定をしてもらうと、ゴブリン軍団の中にゴブリンナイトが居たらしく。まぁまぁ良い値で買い取ってくれた。
「銀貨50枚と銅貨3枚だ」
「ありがとうございます」
お金を受け取り、ランスに視線を向ければ固まっていた。
「やっぱりか」
俺はランスの横に並び、エルフのお姉さんに隊商護衛依頼完了の報告をする。
「とりあえず、これで王都エリクドリアに来れたわけだ。感想はどうよ?」
「感想も何も、お前も一緒だろ」
「ああ、ワクワクするな」
「おう。俺は騎士になるぞ」
酒場で腹ごしらえをしながら、ランスの夢物語を聞いてやる。ヨハンは自分が騎士に成れるなど微塵も思っていない。しかし、親友であるランスを応援したくてやってきていた。
ヨハンは頭が良くない。それを自分でも自覚しているので冒険者で戦士をしている自分がお似合いだと思っている節がある。そんなことは、この俺が許さない。俺は冒険者とか、戦士って柄じゃないんだ。
昔から魔法使いになりたいと思っていた。何より楽して儲けたい。ヨハンの記憶には悪いが、死んだ奴のことは考えてやらねぇぞ。
「それじゃあ、まずは宿を探すか」
「そうだな。安い宿とかあるかな?」
「ミンクさんに聞いてみようぜ」
俺はそういうとランスを一人置いて、働いているミンクに近づく。
「ミンクさん。ちょっといい?」
俺はタイミングが悪かったらしい。ミンクさんに話しかけたはいいが、ミンクさんは誰かと話していたらしい。
「たっ、助けてください」
「えっ」
「おい。ガキ、俺は今ミンクさんと大人の話をしてんだよ。向こうにいけ」
スキンヘッドにガタイのいい男が立ち上がり俺を見下ろしてくる。まだまだ成長途中の俺は160cmぐらいしかないのに対して、男は180cmをゆうに超えていた。
「うっわ~強そう」
俺は正直な感想を口にする。男も満足そうな顔になり、ミンクを掴んでいた手が緩む。その隙にミンクをこちらに引っ張り、男の手を引き離す。
「おい! てめぇ~何しやがる」
「ミンクさん、ここは任せて仕事に戻ってください」
「でも……」
ミンクさんは俺の顔と男の顔を交互に見ている。
「大丈夫ですよ」
「わっ、わかりました。モンスさん、ヨハンさんに酷いことしたら許しませんよ」
ミンクはそれだけ言うと、給仕仕事に戻って行った。俺はスキンヘッド男をどうしたものかと振り返る。
「お前が新人だろうと、俺から女を奪ったんだ。分かってんだろうな」
明らかにボコボコにされるイメージしかわかねぇ。
「どうかしたのか?」
ミンクが去ったことでランスがやってきた。
「こちらのお兄さんがミンクさんを困らせていたから助け出したところだ」
「お前は厄介事に巻き込まれる天才だな」
「おいおい、相棒。そんなに褒めるなよ」
「褒めてない。それでどうするんだ?」
「そりゃ~決まってるだろ」
「そうだな」
二人は合図をして、モンスと呼ばれていた男を見る。
「戦略的撤退!!!」
「逃げろ~」
二人は一目散にギルドを飛び出して逃げ出した。
「おっ、おい待て!」
後ろでモンスの声が聞こえてきたが、今は逃げるが先決と二人は駆け出す。見知らぬ街を適当に走ったことで、どこがどこやらわからぬうちに歩いていた。
「ここってどこだ?」
「さぁ?何も見なかったからな」
「ヤバいな。迷子だ」
「とりあえず、その辺にいる人に聞いてみよう」
ランスの言葉に近くにいる人に話しかけようとして匂いに驚く。強い香水の匂いと化粧の香り、そして酒の匂いが混じっている。ランスとヨハンは娼婦街に行ったことがない。だから判断できなかったが、俺はこの香りをしっている。
「すみません。出口を知りたいのですがどっちに行ったらいいですか?」
俺は路上で客引きをしている一人の女性に話しかけた。
「なんだい。子供かい?」
「すみません。この街が初めてで、この場所に迷い込んだみたいで」
「ふふふ。可愛い坊やだね。イジメたくなるけど、大人になったら遊びにおいでよ」
「ええ。楽しみにしてます」
「ふふふ。面白いね。まだここは入口。そのまま回れ右して、真っ直ぐ進めばメインストリートに出れるよ」
「ありがとうございます」
「あんた名前は?」
「ヨハンです」
「そうかい。私はリリー。あんたが来るの楽しみにしてるよ」
「はい」
俺はリリーさんに別れを告げてランスの手を引く。リリーさんを見てからランスは固まってしまって使いモノにならない。
「ランス。メインストリートに出たぞ」
「あっああ。ああいう世界もあるんだな」
ようやくランスもあそこがどういう場所だったのか理解できたらしい。
「そうだな。とりあえず宿を探すか」
「そうだな」
二人はそれから無言で歩き出した。頬が赤く染まっていたことは互いに言わないでいた。
いつも読んで頂きありがとうございます。