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冥王ハーデス 2

 ハーデスが沼地の魔物をゾンビへと変えて、ジェネラルのところに戻ると、沼地とは思えぬ禍々しい城が完成していた。 懐けるならば、冥界城か魔王城というぐらい禍々しい。


「ほぅ~これは凄いな」


 ハーデスの言葉にジェネラルは厳かに頭を下げる。


「ハーデス様も随分と楽しまれたようですね」


 ガマガエルゾンビに乗り、大勢のゾンビたちを後ろに従えた姿を見て、ジェネラルは肉のない顔で笑う。


「まぁネクロマンサーとしてできることは試しておかなければな」

「ご自身のお力を知るのはよいことでしょう。それで、これからはどういたしましょうか?」

「そうだな。死人に食事はいらぬし、城もできた。そろそろうっとおしい闇法師を殺しにでもいくか」

「良いお考えだと思います」


 元々闇法師を追いかけてここまでやってきた。その闇法師は、マッドサイエンティストと手を組み、新たなモンスターを作っているという情報を得ている。

 闇法師の魔物召喚と、マッドサイエンティストの魔物合成が手を組んだのだ。なかなかに厄介で楽しそうだと冥王ハーデスは思っていた。


「最近目撃された魔物はどんな奴がいたんだ?」

「最近は人間と魔物を合成する方法を模索しているようで、モンスター化された人間がさまよっているようです」

「強いのか?」

「ホーンナイト数名でなんとか対処ができておりますが、少しづつ強化はされているようでございます」

「ふむ。こいつらを試すには丁度いい相手か」


 ハーデスは、自身が作り上げたゾンビたちを見てほくそ笑む。西の果てでは化け物たちがまるで力を競い合うようにぶつかり合う。

 その背後に闇法師改め闇の教祖と改名した召喚士と、死人を操るネクロマンサーの存在がいることに人々が気づくのはもう少し先になる。


「ハーデス様は、闇法師を倒した後はどうされるおつもりですか?」


 ジェネラルはここまで冥王に付き従ったが、それも単に冥王の復讐に力を貸していたともいえる。敗戦した黒騎士をこんな姿に変えたマッドサイエンティスト、帝国に復讐しようと立ち上がった際に邪魔をした闇法師、この二人が気に入らないから殺してやろう。

 もちろん復讐や単なる嫌悪から動いているからなのだが、もしも、その目的を失ったなら冥王ハーデスはどうするのか、ジェネラルはその先を知りたいと思った。


「そうだな、この世界に未練などないが、強くなりすぎたこの体、どうしたものか、いっそ自らで滅してもいいがそれでは面白くもあるまい。我を倒す人材を求めて、世界征服でもしてみるか?」

「それは良いお考えでしょう。ハーデス様はこんなところで朽ち果てるお方ではございません」


 ジェネラルの言葉はいつも以上に想いが込められていた。ハーデスは口角を挙げて笑みを作る。


「ふっ。それもまた面白いかもしれぬな」


 どこから出現させたのか、ハーデスはワインを口にする。冥王となってから戦いの日々であった。城が完成し帰る場所ができたことで、ハーデスなりに様々な考えが浮かび始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 西の最果て、ある宗教が普及している土地に、黒い法衣をまとった男と、白衣を着た男が数名の部下を連れてやってきた。

 やってきた当初は、細々と暮らす街の者たちも近寄ろうとはしなかったが、黒い法衣の男が見せる奇跡に次第に魅せられていった。


「見よ。これぞ我が力」


 黒い法衣の男、闇法師は自らの力で魔物召喚の上位、悪魔召喚を執り行おうとしていた。それはこの土地に生を受けた者たちにとって神を降臨するも同じ行為だった。


「まさか、本当に」「彼は誰なのだ」


 街の中心で行われた悪魔召喚を見ることになり、彼らは闇法師の前に膝をついた。この街に強く崇められている暗黒神と呼ばれる神がいる。

 暗黒神は悪魔を従え、神に弓を引くことができる唯一の神だとして、この地に根付いている。他の宗教からは邪神として見られているが、彼らからすれば唯一の神であり、この地を守る存在なのだ。


「上手くいきましたね」

「闇法師よ。これからではないか?」


 白衣の男、マッドサイエンティストは悪魔召喚された闇法師が崇められている姿を見ても、何も感じることなく諫めていた。


「私のことは、これから教祖とお呼びください」

「闇の教祖か、主がそれでいいのならば、我は何も言わぬ。我は研究ができればそれでいいのだ」


 マッドサイエンティストにとっても闇法師は不気味な存在ではあったが、自分たちの利害が一致している今は、力を貸しえる仲間である。


「ふん、いつまでも浮かれておるがいい。我の研究が完成したならば、貴様など……」


 闇の法師が去っていくと、マッドサイエンティストとは毒づいた。彼らは決して信頼し合っているわけではない。互いに必要だから傍にいるのだ。

 ただそれは、世界にとってあまりにも最悪の二人が組んでいることになってしまう。本人たちは自己満足のために何者顧みることはないのだから。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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