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水の都 フィッシャーアイランド

感想。評価ありがとうございます。


作者の励みになっております!(^^)!

 ラース王国の建国された年、もう一つ小さな国が建ち上がっていた。その国は帝国領内の片田舎にあり、共和国と帝国の間にかかる河を自らの領土と宣言した。その国の名前はフィッシャーアイランドといい、魚人族が立ち上げた国である。


 彼らは元々フィッシャー族が暮らしていた場所に塩田を作り、干物や海藻など海の幸を自らの食文化に取り込んでいった。それは彼らの生活を豊かにした。

 これまでフィッシャー族は、魚を取っても帝国に安く買いたたかれていた。しかし、帝国が滅び、ヨハンが教えた技法を使ったことで、彼らの食文化は飛躍的に進化したのだ。

 元々海と河を縄張りにしているフィッシャー族は数も多く。そのうえ食事の充実だけでなく、他種族との交流を開始したことで、文化の進化を遂げた。

 

 彼らは共和国領と帝国領を大橋を使わずに行き来できる手段を手に入れたのだ。


「おい、船の用意はできたか?」

「もちろんでさぁー!」


 鮫の顔をした男が、部下である半漁人の男に話しかける。半漁人の男以外にも上半身裸で、下半身にラフなズボンを履いた海の男たちが鮫男に付き従う。


「今日は客人がいるんだ。揺らすなよ」

「それは無理でさぁー」


 鮫男の注文に荒い波が起きる河を見て、海の男たちは弱音を吐く。


「バカ野郎!俺達の恩人を送るんだぜ」


 鮫男の叱責に海の男たちも困り顔になる。


「シャーク、そんなに言ってやるなよ。俺は気にしないから。それに俺が船に乗りたいってわがままを言ったんだし、多少の揺れは我慢するよ」

「しかし、ヨハン様」


 それはラース王国から反逆者の烙印を押され、王国から追われているヨハン・ガルガンディアその人であった。


「フィッシャーアイランドはある程度地盤ができた。今度は共和国内にも同じような街を作る必要があるからな。その前に船の乗り心地を知っておきたかったんだ」


 ヨハンは死霊王の処刑場からテレポートを使い、フィッシャー族の集落にやってきていた。ゲームのエンディングを知っており、決着がつくことを察していたヨハンは、死霊王と戦う以前に他種族たちに指示を出していた。


 それはガルガンディア地方からの離反であり、拠点を双高山にあるダンジョン及び、共和国内に移すというモノだった。

 そのため双高山の近く、共和国から始まる大橋の下流にはドワーフたちの街が完成していた。さらに川下流に港を造り始めていた。

 

「大将の考えることはスケールがデケェ~」


 半漁人たちはヨハンのことを大将と呼び、軽い調子で煽てる。


「茶化すなよ。まぁまだ街は二つだ。ダンジョンを入れも三つ。これからは賛同してくれる地域を増やしていくしかないな。何より手はすでに打ってあるから時を待つしかないしな」

「半端ねェ~」


 軽い半漁人達の船に乗り、ヨハンは新たな船出に出ようとしていた。ヨハンは王国の思想を始めから理解していた。だからこそガルガンディアに他種族たちを集め、ランスが政策をしやすいように環境つくりをするつもりだった。

 ヨハンの目論見はミリューゼ達、王女一派によって破壊されてしまった。しかし、フィッシャー族との出会いがヨハンに新たな策を思いつかせることになった。


「別に王様なんていらないさ。皆が協力して生きていける器があればいいってことだ」


 他種族を認めない王国に、態々認めてもらう必要はない。ならば独自の国を作り、彼らを受け入れてやればいい。


「まずは、あいつの手腕を見せてもらうことになるだろうな」


 ヨハンは船の先端に陣取り、先を見る。思い描く顔はオッサンばかりだが、頼りになる仲間達だ。


「死霊王、いや、ウロボロスのオッサンには働いてもらわないとな。ゴルドーのオッサンは相変わらず元気だし、ジャイガントとは案外なんでもできるしな」


 死霊王は生きている。死霊王の処刑は元々の死体であった人を死霊王が操り、替え玉として用意したのだ。死霊王自身は、ヨハンから未来を教えられ、帝国内でヨハンに味方する他種族の救済に当たっている。 死霊王だけではない。共和国内ではノームのアスナやエルフのシーラが指揮を執り、他種族に呼びかけていた。


「あっしらもおりますぜ」


 ヨハンの呟きに、良い笑顔で鮫男が笑いかける。


「お前は笑うと歯がヤバいな」

「シャシャシャシャ」


 鮫男が鋭い牙を見せながら笑うと、船が大きな波に揺られる。そんな揺れもものともせずに、船を引っ張る白いクジラが水面を跳ねた。


「白鯨も喜んでおりますぜ」


 白鯨は本来フィッシャー族の守り神であった。しかし、ヨハンがフィッシャー族と共に漁をしている際に邪魔してきたので死闘を繰り広げたのだ。今ではヨハンとフィッシャー族に従うようになり、仲良くなった。


「まさか、白鯨が船を引いてくれるとは思わなかったけどな」

「それは大将様々でさぁ。白鯨の奴も大将にのされて心を入れ替えたそうです」


 白鯨は魔物の一種であり、フィッシャー族とは会話も成立する。思い描いていた未来とは違ったが、ヨハンは新たな道へ進み始めていた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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