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死霊王の力

 ヨハンたちが大橋を渡りきると、橋の出口を固めるように三十万の軍勢が万全の態勢で待ち構えていた。これまでのような地の利も、奇策も用意する時間もない。


「ここからは正面衝突しかないってことか」


 敵の指揮を執るのは、オクビン・シンガードである。彼は慎重な男であり、ヨハンたちが到着しても、迂闊に攻め込むことなく、じっと睨みつけるようにヨハンたちの行動を待った。


「どうにも攻め込み難い相手だな」

「どうやら三死騎の最後の一人であり、他の二人がヨハン様に負けたことで警戒しているようです」

「そうか」


 オクビン・シンガードは扇状に陣を引いており、ヨハンたちは後方に引くことしかできない。だが、三十万という人数は、ヨハンにとって最高の的でしかない。


「メテオストライク」


 三十万もいればどこに落としても命中する。さらに規模を調整しないで済む。星を三十万に向けて落とした。


「残りをドラゴン部隊殲滅せよ」


 連れてきていた100のドラゴンを三十万にけしかける。ドラゴン達は星を降らせた後の帝国軍に対して容赦のないブレスを浴びせる。


「リン、風だ」


 ドラゴンたちが敵を焼き払うなか、ヨハンは更に敵に魔法を仕掛ける。リンとの協力魔法で上がる煙を吹き飛ばした。

 さすがにヨハンのことを調べているのか、防御魔法を強化してメテオストライクを防ぎ、ドラゴンのブレスからも辛うじて全滅は免れている。


「なんて攻撃だ」


 オクビン・シンガードはヨハンの攻撃に驚きを隠せない。死霊王から直接指示を仰いでいなければ、今の攻撃で全滅していた。


「どうされますか?」


 オクビン・シンガードの副官を務める者が、オクビン・シンガードに指示を仰ぐ。


「このまま守っていても、良い結果にはならないようだ。全軍に命じる。王国兵を殲滅せよ」


 オクビン・シンガードは覚悟を持って軍を動かした。星落としと、ドラゴンのブレスにより、すでに二十万まで兵が減っていた。

 それでもヨハンたちの倍以上の兵がいることに変わりない。


「大橋まで引け」


 ヨハンは兵を端まで戻すことで、敵との戦力差を埋めた。橋は横に並んでも三十人しか並ぶことができない。ヨハンは身体が大きいオーク隊を前衛にして大盾を持たせる。ゴブリン達、エルフには弓を構えさせ、ガルガンディア兵には魔法を唱えさせる。


「怯むな行け!」


 ヨハンの構えに対して、オクビン・シンガードは一切引くことなく、正面から部隊をぶつける。帝国兵は死も恐れず、ヨハンたちにぶつかってきた。

 オークがいくら普通の人の五倍以上の力があると言っても、数十人で突撃をかけられては耐えきれるものではない。


「放て!」


 ヨハンがガルガンティア兵はオークが稼いでくれた時間で協力魔法を帝国軍に叩きこむ。さらにドラゴンたちが帝国軍の背後を突く。

 オーク隊、ゴブリン隊が乱戦に突入していくなか、二十万の兵を生かせいない。しかし、帝国兵はなかなか数を減らすことはない。

 いったいどれだけの時間、二つの軍が戦っていたことだろうか、オクビン・シンガードは引くことなく、王国軍を攻め続けた。


「いつの間にか夜か」


 朝に始まった戦いは、いつの間にか夜を迎えていた。夥しい数の人が死に、オークもゴブリンもほとんどが全滅状態になっている。背後をついていたドラゴンたちも、流石に帝国兵の数にその数を半分まで減らしていた。


「このままでは我々も全滅です」


 敵が一向に引かないため、ヨハンたちも迂闊に逃げることができなかった。ヨハンたち王国軍もすでに数を半数まで減らしていた。


「わかっている」

「敵の増援確認」


 そこにヨハンたちにとって、悪夢のような知らせがフリードから届けられる。  


「死霊王、やってくれたな。数は?」

「数え切れません。ですが、今戦っているオクビン・シンガード軍よりも多い思われます」


 数はそれだけで武器になる。今迄小出しと言っても十万ずつ分けていた兵をヨハン一人に傾けてきたのだ。死霊王は一気に決着をつけるため、策を打ってきたのだ。

 だからこそ、オクビン・シンガードは一切引くことなくヨハンたち王国兵と戦い続けた。


「何としても退くぞ」


 ヨハンはそれまで魔法による援護だけをしていたが、リンに後方の部隊を託して引くように命令する。生き残ったゴブリン、オークを引き連れ、目の前の帝国軍に突っ込んだ。

 二十万いた帝国兵はドラゴンと防御を固めた王国兵によって、一切の防御を捨て挟撃されていたため数を残り一万まで減らしていた。

 そこに全力で力を振るうヨハンが突撃してきたため、一気にその数を減らし、着いて来ていたオークやゴブリンにトドメをさされていく。


「帰るぞ」


 真っ赤に染まった自信を顧みず、ヨハンは逃げようとするが、敵の動きの方が早かった。


「よくここまで戦った」


 ヨハンの背後で剣を向ける者がいた。それは後続の帝国兵であり、死霊王自身であった。


「お初にお目にかかる、王国軍最高司令長官ヨハン・ガルガンディア殿」

「あんたか死霊王か?」

「そうなりますな」


 ヨハンが振り返れば、髑髏の仮面をつけた男が剣をヨハンに向けている。


「オクビン・シンガードを倒したのは見事と言っておきましょう」


 いつの間にかオクビン・シンガードは倒していたらしい。


「ですが、帝国に逆らったこと後悔なさい」


 死霊王の仮面を見たヨハンは、死霊王の手によって肩から斜めに切り裂かれる。胸を斜めに切られたヨハンは、大橋から転落していった。


「あなたの快進撃は終わりです。さぁ皆さん追撃戦といきますよ」


 死霊王は呆気なくヨハンを倒した。オークやゴブリンからすれば信じられない光景であったが、ゴブリンキングのボスとゴブリンたちはヨハンを追いかけ大橋から飛び降り、オークは数人を残していただけだったので最後の抵抗を試みた。

 死霊王はオークを片付け、現れた大軍から十万ほどを選出して、リン率いる第三軍の追撃に向かわせた。

 

 ヨハン・ガルガンディアは行方不明となった。 

いつも読んで頂きありがとうございます。


 現在、前に書いた勇者になりません。の大々的な修正作業をしております。こちらの方が不定期になるとおもいますので、ご迷惑をおかけします。

 なるべく書け次第投稿していきますので、どうぞこれからもよろしくお願いします。

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