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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になるには兵士から
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山賊討伐 3

 獣人の幼女は名前をキングメイアス・キングダムと名乗った。

 長くて呼びにくいので、メイと呼んでほしいと言うことだったので、メイと呼ぶことになった。キングダムが名字で、キングは家の者は全員名前に付くということなので、省略してメイだ。


「メイはどうして、こんなところにいたんだ?」

「わからないの。姉様と一緒にお花を摘みに行ったの」


 ここでの花摘みはトイレと言う意味ではない。わからない人は分かる人に聞こう。


「草原にあるクリスタリアと呼ばれる青い花なの。そしたら、姉様が影に襲われたの。必死に姉様を掴んだの。他にもいっぱいの人が姉様を掴んだの。でも、私と姉様だけが影に飲み込まれたの。気付いたら山賊さんのアジトにいたの」

「山賊のアジト!それはどこにあるか分かるか?」


 メイの言葉に俺は跳び付いた。きっとそこにメイの姉がいるはずだ。


「うっ、わからないの」


 俺の勢いに圧倒されていたようだが、なんとか言葉を絞り出してくれた。


「そうか……フリード、今の話から相手のアジトはわからないか?」


 シーフ系のフリードは探索のスキルを持っている。それを使えばどうにかなるだろうか。


「フリーって呼んでほしいっす。半径100メートルに人影はないっす。おいらの探索じゃ100メートルが限界っす」


 どんな能力も万能ではない。100メートルが長いか短いかわらないが、十分スゴイことだろう。


「そうか、ありがとう」


 俺はフリードに礼を言って頭をフル回転させる。

こういうときはどうすればいい。幼女だけでも確かに凄い手柄だと思うが、本当にこれで戦争を止める鍵になるのか?何か間違っていないか。


「なぁ、ヨハン。思しだしたことがあるんだが、昨日俺達がいた洞窟よりもさらに上で、光が見えた気がしたんだ」

「そうなの!山賊さんたちが言ってたの。こんな山のてっぺんにまで追いかけてくる奴はいないって言ってたの」


 ランスの言葉にメイが今思い出したのか、山賊の言葉をつけ加える。


「でかした。俺達が元々いた洞窟に戻って、どの辺りに光が見えたのかランスに思い出してもらおう」

「メイちゃん。偉いね」


 リンがメイの頭を撫でてやり、メイも嬉しそうな顔でリンの手に身を任せていた。そういう仕草は子供なのか、獣なのかわからないが、どちらにしても見ていて癒される。


「リンは魔法を大量に使って疲れているだろうが、メイの世話をしてやってくれるか?」

「はい。私も大家族で、弟や妹がたくさんいるので慣れています」


 先程までのオドオドしたリンではなく、姉として覚醒したようだ。リンは誰かを護るときに強くなるかもしれないな。


「フリードは先行して昨日の洞窟を見て来てくれ。ランスとオレで周囲の警戒と道を作りながら戻ろう」

「わかったっす」


 フリードはすぐに駆け出して森を上がって行く。


「了解。なんだが指示を出すのが、板についてきたな」

「そうか?」

「ああ、頼りにしているよ。敵やモンスターが出たら任せろ。俺も腕を上げたところを見せてやる」

「さっきの山賊を倒した手際はたいしたものだったぞ」

「あんなの不意打ちだろ。俺の実力はあんなもんじゃない」


 ランスの自信はどこから来るのか知らないが、俺が魔法を覚えている間に、ランスも修行を続けているようだ。

 元々修行好きな奴だからな、放って置いても強くなりやがる。


「そのときは頼む」

「おう。任せとけ、騎士たるもの人を護るのが仕事だからな」


 志と信念を持っている奴は強いな。こういうときはランスが本当に頼りになる。


「とりあえず、洞窟に戻ろう。話はそれからだ。さっきの戦闘でみんな疲れているだろ」


 俺達はメイがいるので山道を切り開いて、歩きやすいようにしてから、洞窟へと戻っていった。

 リンがメイを上手く諭してくれたので、一度休んだだけで洞窟へ戻って来ることができた。

 昨日と言っても夜の間に洞窟を跳び出したので、日が明けたばかりだ。

 皆の顔に疲労が溜まっているのが見られた。先行していたフリードから休ませ、順番に仮眠をとって行く。

 メイが安心して眠ったところでリンに休みを与え、俺は食事の用意をしておく。

 それぞれが起きている間に食べられるように有り合わせの野菜スープと、乾燥肉と、乾パン、シンプルなモノばかりだが、腹が膨れれば気持ちも落ち着くというものだ。

 それぞれが順番に休憩をとり、俺が休憩を終えたところで、出発の準備が整った。


「疲れていると思うが、もうひと踏ん張りだ。俺達の目的である山賊討伐を今日で終わらせるぞ」


 すでに四日目に入っているので、今日で終わりにして帰還のことを考えなければならない。


「そうだな。フリー、相手のアジトは見つかったのか?」

「ハイっす。ランス兄貴が言ってたところに山賊のアジトがあったっす」

「だっ、そうだ。ヨハンどうする?」

「俺達の目的は山賊退治。それプラス、メイの姉を救出して無事に獣人国に送り帰すことだ。失敗は許されない。いいな?」


 俺の言葉に全員が頷き返す。


「よろしくなの!」


 メイは立ち上がり頭を下げる。幼女なのに頭の良い子だ。リンは優しく頭を撫でてやり、ランスとフリードは笑いかける。


「頼まれた。メイの世話は引き続きリンに頼む。戦力は少なくなるが、メイを一人で置いておく方が不安だ」


 俺は一旦言葉を切ってリンを見る。リンはギュッとメイを抱きしめ頷いた。


「フリードは敵の増援や逃げる者がいないか、外で見張っていてくれ。もし逃げる奴がいたら投擲で攻撃、倒さればよし。倒せなければ別にそれはそれでいいから逃がしてやれ」

「了解っす」

「ランスとオレで敵のアジトに忍び込みメイの姉を救出する」

「おうよ!二人で暴れるのは久しぶりだな」


 ランスの頼もしさに俺も嬉しくなる。

俺が大好きだったゲームの主人公と供に戦うのだ。恐いことなんてあるもんか。


「作戦は以上だ。みんな死ぬなよ」

「お前もな」


 俺の言葉にランスがすかさず反論してくる。これだから相棒は厳しい。


「もちろんだ」


 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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