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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になるには兵士から
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山賊討伐 2

 リンを捕まえて、山間を落ちていく。どうにもマズイ状況に陥った。

目の前には大きな荷物を持った五人組、上からはランスとフリードが落ちてくるはずだ。

 ランスたちを放って置けば逃げることも出来るが、そんなことするはずがない。


「すっ、すみません」


 リンが泣きそうな顔で、何度も謝っている。

リンが悪いわけではない。疲れているところにフリードの声が重なり足を踏み外してしまったのだろう。

 誰が責められる。責められるとするならば強行軍を強いた俺自身だろう。


「リンは何も悪くないから、もう泣き止んで」


 俺はリンの肩を抱いてやり、背中を擦る。

五人組は突然現れた俺達に戸惑いっていたが、リンの泣き顔を見て嘲り笑う。


「なんだガキじゃねぇか!こんな山奥で何をしてやがる」


 上からではほとんど見えなかった顔も、下に降りてみれば月明かりが照らしてくれる。はっきりと見える山賊風の衣装と悪人面。まぁ間違っていてもいいかと思える相手に俺はむしろ怒りが湧いてきた。


「あんた達を退治しにきたのさ。あんた達が持っている荷物をもらうぜ」


 リンを背に庇い、様子をうかがうが、一向にランスたちが落ちて来ない。


「おうおう。威勢だけは一人前だな小僧」


 先頭を歩いていた男は道案内役などではなかった。5人の中で一番大柄で、強そうな見た目をしている。

五人組のリーダー格なのだろう。


「リン、魔法は使えるかい?」

「ここでですか?」

「ああ、ファイアーボールを特大サイズで頼む」

「特大サイズ?そんなのどうやれば」

「イメージするんだ。君ならできる。魔力を振り絞れ」


 魔法はイメージだ。ファイアーボールが作れるのであれば、サイズを変えるなど魔力を注げば誰でもできるはずだ。


「やってみます」


 リンが魔法を唱える。小さなファイアーボールが俺達の頭上に浮かび上がる。


「なんだ~?その豆みたない火は、それで俺達を殺そうってか、笑わせやがる。魔法使いが居てもそれじゃあ意味がねぇな」


 男の声に後ろの四人も笑い出す。


「荷物は置いとけ、小僧は殺してもいい。後ろの女は奴隷に売るぞ。魔法が使える女のガキだ、金貨がもらえるかもな」


 男は下衆な笑顔を浮かべて、俺達ににじり寄ってくる。


「今だ!」


 俺の声にリンが作り出したファイアーボールが特大サイズへ膨れ上がる。


「なっ!」


 男は特大サイズのファイアーボールに度肝を抜かれる。


「撃て!」


 俺の声にリンがファイアーボールを放つが、大きいだけでノロい。


「なんだ?こんなのが当たると思っているのか?」


 リンがイメージできたのは、デカいが遅いということだったのだろう。

俺はそこにアクセントを加えてやる。右手にウィンドーカッター、左手にストーンエッジを作りだし、特大ファイアーボールにぶつける。

 風によって切り裂かれたファイアーボールは無数に分かれて速度を増す。さらに石礫が炎を通過して山賊たちに襲いかかる。


「ぎゃあああ!!!」


 男達が悲鳴を上げてのた打ち回る。荷物から離れたのが男達の運の尽きだ。

魔法も要は使いようである。一つの魔法でダメなら合成されることで強力な攻撃力を生み出すように変えればいい。


「貴様ら!!!」


 半身を焼いても男は立ち上がり、ヨハンたちを睨み付けた。

大ダメージを受けたようだが、他の部下たちも起き上がってきた。


「リンは下がって」


 俺はすぐにリンに隠れるように言って斧を構える。


「あらよっと」

「っす」


 俺が戦闘モードに入った瞬間、二人の山賊が倒れた。


「遅くなってすまん。木に引っ掛かってた」


 ランスは詫びながら剣を振るい、二人目を倒した。

フリードも短剣を突き刺して二人目を無効化する。


「さすがはヒーローだな。美味しいところを持っていきやがる」


 俺はランスの主人公体質に笑ってしまう。

ヒーローは遅れてやってくるものだ。ここぞと言うときに助けてくれるからありがたい。


「それはどうも、それで?あんたが親分かい?どうする?」


 三方向を固められ、男の額に汗が流れる。


「ちっ!」


 男は持っていた斧をランスめがけて投げた。隙を作って逃走を図ったのだ。俺とフリードの投擲が同時に放たれる。俺の手斧は男の肩に、フリードのナイフは心臓に刺さり、男を絶命させた。


「まだ聞きたいことがあったんだぞ」

「すいませんっす。自分の投擲じゃあ、どこに当たるかまではわかねぇっす」


 フリードに素直に頭を下げられれば、これ以上怒っても仕方ない。


「リン、もう出て来て大丈夫だ」


 俺の声に、恐々と言った感じでリンが姿を見せる。


「終わりましたか?」

「もう大丈夫っすよ」

「ああ、とりあえず荷物を確認しよう」


 俺は山賊たちが持っていた荷物を開ける。

中にはお姫様が……入っているはずなんだが、中にいたのか子供?


「子供だな」

「子供っす」

「わぁ~可愛い」


 荷物の中で寝ていたのは幼稚園児ぐらいの子供だった。

青色の髪に獣耳を生やした幼女が荷物の中にいた。おかしい、お姫様を救ってヒロイン候補にするはずが、幼女を救って誘拐事件を解決しのか?


「うっうん……あっ!ここはどこですか?姉様はどこですか?」


 気付け薬をかがしてやると、起きた子供は姉を探して辺りを見渡した。


「ここには君しかいないけど」

「どうなってるですか?私は姉様と一緒にいたはずなのです」


 幼女の慌てっぷりから想像するにヒロインは姉の方だ。どうやら山賊退治は終わっていないらしい。


 俺は幼女を見つめて溜息を吐いた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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