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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になりました。
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閑話 ランスの相談

次話より、第六章に入ります。

 王都から祝辞と勲章、さらに恩賞が送られるということで、ヨハンは王都エクアドルに来ていた。


 ガルガンディア領の運営はジェルミーに任せており、周辺の街や集落などは、ライスやアイス、そして各部族でそれぞれ行っている。

 帝国への備えとしてジャイアントたち巨人族が動いてくれている。

国境の街及び、精霊の森付近はシーラを評議長とした精霊評議会の管轄とした。

 

「よう、ヨハン。久しぶりだな」


 祝辞が行われる前に控えの間で待っていると、ランスが乱入してきた。騎士らしい格好というか、腰には聖剣を差してあり、動きやすい王国式の正装に身を包んでいる。

 対する俺は、蝶ネクタイにタキシードと前世の服に近い物を作ってもらった。二人の姿は随分と対照的な格好だと思う。


「それにしても珍しい格好だな?」


 王国に住まう者にタキシードという概念はないだろう。王国風の正装は如何にも貴族が来そうな派手な装飾と上着、ヴェスト、キュロット、襟元に結ぶクラヴァットという組み合わせだ。

 どうにもその姿になる自分を想像すると虫唾が走る。キュロットを履くことにどうにも抵抗があったのだ。


「俺はシンプルなのが好きなんだ」

「まぁ……いいんじゃないか」


 ランスも元々貴族出身ではないので、服装にこだわることはなかった。


「ちょっと相談があるんだが、いいか?」


 久しぶりに会う幼馴染からの相談とは、どうしてこんなにも厄介そうなものが多いのだろう。


「本気か?」

「ああ、このままじゃ王国に勝ち目はない」


 ランスの決意に溜息を吐いた。こいつが言っていることは、ゲームのまんまなんだと改めて思い知らされる。


「後を頼めるか?」

「俺はそういう役目なんだろうな」

「すまん」


 ランスは全く謝っているとは思えない笑顔で謝罪の言葉を口にする。


「まったく……面倒事ばかり押し付けやがって」

「帰ってきたら必ず恩は返すさ」

「その言葉、絶対に忘れるなよ」

「わかってるって」


 ランスとの密談を終えて、俺は改めて溜息を吐く。とんでもないことを押し付けてこられた。


 相談ごとについて考えていると、謁見の間へ呼ばれ、ランスと供に並んで謁見の間へと参上する。


 王国が誇る両将軍の登場により、謁見の間に歓声が上がった。


「ほんとうに英雄ランスの人気に舌を巻くぜ」

「何言ってんだよ。この歓声はお前にも送られてるだろ」

「はっ?まさか」


 ランスの言葉で若干耳を傾けてみる。


「ランス将軍!!!」「英雄ランス!!!」「勇者ランス!!!」

「知将ヨハン!!!」「名将ヨハン!!!」


 ランスの名を呼ぶ声の中に、小さいが俺を呼び声が混じる。


「なっ、お前を呼ぶ声もあっただろ」


 ヨハンの顔を見て、ランスが得意げな顔をする。


「まぁな」


 満更でもない顔で、ヨハンもランスの言葉に応えた。昔からランスには叶わない。記憶の中のヨハンがそう思っているのか、今の俺が思っているのかわらかない。ただ、ランスといると心地良いと思ってしまう。


「我が王国を護る双将よ。よく来てくれた」


 王様が両手を広げて二人の将軍を出迎える。王様の両脇には王妃、王女ミリューゼが並び立ち、宰相、第一軍の将軍が左右に分かれ立っていた。

 さらに貴族たちが脇を固め、上級兵士や王城で働いている者など、入りきれる外科医を超えても一目両将軍を見ようと多くの者たちが謁見の間に集まっていた。


「王におかれましては、ご壮健のご様子。何よりでございます」


 ランスは英雄として、王のことを護り切ったと表すように、王は元気であると表現する。


「うむ。お主たちのお蔭で我は今も生きていられる。今回お前達の働きは王国を救うものであった。国の代表として、改めて礼を言わせてもらう。本当ありがとう」


 王様直々に二人に向けて頭を下げる。前代未聞な行為ではあるが、相手が英雄ランスであることで、貴族たちも王を止める者はいなかった。


「我々は王国に仕える者として当たり前のことをしたまでです」


 質疑応答はランスに任せておけば問題ない。


「うむ。本当に頼りになる。そなたたちがいれば、王国はこの先も安泰であろう。今回そなたたちを呼んだのは感謝の言葉だけではない。恩賞を渡したいと思ったのだ」


 本題に入り、俺はランスの相談を思い出していた。


「だが、今の王都に聖剣ほどの優れた武器を用意はできぬ。金銭は戦時中なのだ。恩賞などではなくいくらでも用意しよう。そうなると褒美らしい褒美を渡したくても何も思いつかぬ。そこで貴殿らに直接何が欲しいか、聞きたいと思ったのだ。我が国ができることであればどんな願いでも叶えて見せよう。申してみよ」


 王はランスに与える物が思い浮かばないと、ランスに何がほしいか聞いてきた。


 それはそうだろう。土地も、金も、聖剣も、王女も差し出しているのだ。更なる土地をもらっても管理が大変だし、聖剣以上の武器はいらんだろうな。王女さん以外にもハーレム候補もいるし、ランスがほしいものを知ってる身としては、なんとも贅沢なことだと思う。


「ありがとうございます。では、王にお願いしたいことがございます」

「うむ。申してみよ」

「私は少数の仲間たちと旅に出たいと思います」

「なにっ!!!」


 ランスの言葉に王様が驚き、会場内がどよめく。


「それはこの国を捨てるというのか?」

「いえ、私は天帝を討つための旅に出たいのです。大がかりな戦いで帝国の八魔将のうち四将がいなくなりました。裏切り、巨人、黒騎士、魔人を帝国から離脱させることに成功したことで、残った八魔将のうち、脅威と考えるのは、竜騎士、死霊王の二人だけです」


 ランスが何を語るのか聞こうと、会場内が静まり返る。


「そこで、私と頼れる仲間だけで帝国に潜入し、天帝と、脅威になる二人の将を討ちたいと考えます」

「暗殺ということか?」


 王様の言葉に会場にいたものたちが息をのむ。


「王様、これは勇者の戦いです」


 初めてヨハンが口を開いた。今まで全て聞き役となり、存在を消していた。しかし、ランスに助けが必要だと思えばヨハンは口を開く。


「勇者の戦い?どういうことだ?ガルガンディア卿」

「はっ、天帝は魔王です。他国に戦争を仕掛け、悪戯に世界を混乱に陥れている。それを勇者である英雄ランスが成敗する。だからこそ、これは勇者が魔王を倒す旅なのです」


 ヨハンの言葉で息を飲んだ会場が、口々に勇者の戦いと口にする。それは夢物語のようで心地いい響きとなる。


「しかし、英雄がいなくなっては誰がこの国を守るのだ。何より容易な旅ではあるまい」


 王は不安げにランスに問いかけた。


「はっ、そこで二つ目のお願いです。ここにいるヨハン・ガルガンディア将軍を今日この時をもって元帥に推挙します。彼が元帥になってくれるのであれば、私は安心して旅に出ることができる。そして彼に任せれば、この国は大丈夫です」


 ランスの言葉には力がある。ランスが言えば、大丈夫な気がしてくるのだ。


「さらに補佐として六羽からセリーヌとカンナを、第三軍副大将リンを将軍として推挙します」


 この三人の推挙は様々な思惑が含まれているが、それはのちにわかることだ。


「……決意は固いのだな?」

「はい。旅の仲間たちにはすでに伝えていますから」

「うむ。私はどんな願いでも叶えると言った。貴殿ら二人の願いは、その二つでいいのだな?」


 王は覚悟を決めた瞳で二人を見つめた。


「「はっ!」


 二人は同時に返事をした。


「あい、わかった。我が国が両将の願い聞き入れよう。ランスよ、旅に必要な物があればいくらでも言うが良い用意しよう」

「ありがたき幸せ」

「ヨハンよ、反発もあろう。しかし、この国のため頑張ってもらいたい」

「ありがたきお言葉」

「うむ。未来ある若者に栄光を……」


 王の言葉で式典は終わりを告げる。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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