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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になりました。
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サクの策 1

第五章もいよいよ大詰めとなってまいりました。

どうぞ最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 救出した二百人の中で話せる者から話を聞き終えた。

ランス砦が攻撃を受けたのは、今から一カ月ほど前になる。ランスが砦から離れたのをどうやって知り得たのか、帝国側が夜襲をかけてきた。

 夜襲の指揮を執ったのは、八魔将の一人である黒騎士自ら出陣してきた。

 セリーヌが事前に夜襲を警戒して兵を配置していたおかげで、六羽を失うことはなかったが、戦況はかなり不利な状況に陥ったそうだ。


「辛いことを話させてすまない」

「いえ、こちらこそ助けて頂きありがとうございます」


 報告を終えた兵士はぐったりと座り込んだ。ここまで逃げて来るのに精神も、体力も、使い果たしていたのだろう。

 二百人の兵士達は今すぐ戦場に立たすことはできない。かと言ってここに置いておくこともできない。


「一日ここで野営をする。死体は集めて燃やせ」


 俺は敵兵も、味方も、集めて燃やすように指示を出した。王国兵だけを埋葬にしてやりたいが、正直そこまでの余裕はこちらにもない。死体の処理と野営の準備を終えた者達に料理を振る舞ってやりながら、俺は野営を一通りをした。

 疲弊した兵士達もなんとか料理を食べることはできたようだ。できるだけ食べやすいようにスープの中に入れる野菜は細かくして、干し飯を戻した物を入れている。

 味付けはシンプルに塩とコンソメだけなので、味気ないかもしれないが、腹には丁度いいだろう。


 野営の準備をしてくれたゴブリンやオークたちには栄養満点な肉料理を用意した。

魔族を奴隷として扱う王国兵からすれば、第三軍の兵を見下している雰囲気もあるが、それよりも疲れが勝っているのだろう。問題らしい問題は起きていない。


「リン、思った以上に状況は厳しいようだ」


 俺とリンの天幕は隣合わせにしてある。疲弊しているとはいえ、疲れ切った兵士が何をしてくるかわからないため互いに守れる位置に天幕を作った。


「お話は終わったのですね」


 俺は兵士から聞いた話をリンに聞かせる。


「ああ。六羽はランスがいる獣人王国の方へ逃げたらしい」

「サクさんはどうなってのでしょ?」

「それなんだが、どうしてライスが足と手を切られて逃げてきたのかが分かった」


 兵士から聞いた話では、黒騎士の夜襲によりセリーヌ軍は防衛に当たった。互いの軍がぶつかり合い、一時は撤退させることができたそうだ。

 しかし、黒騎士率いる帝国兵は二十万近くいて、昼夜問わずランス砦を攻め続けたという。

ミリューゼがいたことで士気を保ち続けていた兵士達も、一週間にも及ぶ責め苦に耐え切れず、中から崩壊していった。


 もう先はないと兵士たちが諦めかけたところで、ライス率いる第三軍が援軍にやってきた。サクは状況を瞬時に判断し、夜の闇に乗じてあるだけの矢を本陣の後方から、敵が集中している場所へ打ち込んだ。

 敵は降り注ぐ矢が味方から放たれたと知り、砦への攻撃を一時中断して味方へと転進した。降り注ぐ矢に対抗するため味方同士で戦いを始めたのだ。


 元々寄せ集めであった帝国兵は、面白いようにサクの策にハマり、敵陣に隙間が開いた。その隙間からサクたちは二列に並んで槍のように敵陣を突破した。

 それを見たセリーヌ隊は呼吸を合わせるように門を開き、第三軍を招き入れた。


 しかし、それは黒騎士の策であった。仲間割れをして崩壊した帝国兵達とは別に、黒騎士率いる騎馬兵が門へと突っ込んできた。

 疲弊した第二軍では対応できず、サクは瞬時に自ら戦いに赴こうとした。それをライスが押しのけ、サクを砦の中へと背を押したそうだ。

 門の外へ残された第三軍は黒騎士率いる騎馬隊の餌食となり、ライスはその場で右手首を飛ばされた。それでも命辛々その場から離脱することができたのは奇跡としか言いようがない。

 

 一部の第三軍とサクを招き入れたランス砦には、すでにミリューゼの姿はなかった。ランス砦ではサクの策で生じた僅かなスキを見逃すことなく、セリーヌ指揮の下で六羽と共にミリューゼを逃がした。


 そこまでが逃げてきた王国兵が知っていたことだった。逃げてきていた王国兵は元はミリューゼと共に逃げた軍であったが、最後まで砦に残っていた部隊であり、敵を引き付ける囮として殿を任された者達だったのだ。


「酷いですね」

「ああ。今の砦がどうなっているのか?」


 王国兵の話では、砦に残っているのはサクと僅かな第二軍と第三軍の混合兵だけで、残りは全てミリューゼと共に砦を出ている。


「明日早くに立つ。拾った王国兵には悪いが、地獄に戻すことはできないから食料を渡して自分達でガルガンディアか王都に向かってもらう」

「はい」


 俺の頭にはサクの顔が浮かんでいた。無表情な彼女が浮かんで来る。


「生きていろよ」


 俺の呟きにリンも祈るような姿勢を取る。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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