ゴブリンキング
アイスとヨハンは精霊領に入る前にゴブリン砦を通ることになる。ゴブリン砦では、トンが司令官を務めている。トンは片言ではなく、随分と言葉が上手くなった。また、それを教育という名目で生まれたての子供や若いゴブリンたち教えている。文字や算術、人との接し方の授業が行われていた。
トンに提案したのはヨハンではあったが、身長があまり高くならないゴブリンたちを見ていると、小学生が勉強しているみたいでなんだか懐かしい光景だと思えた。
「授業の方はどうだ?」
「正直上手くは言っていません。元々知能が高くないのもあります。ですが、本来我々は強き王がいてこそ力を発揮されます。しかし、我々には王がいないので命令に聞かないモノが多いのです」
ゴブリンたちはアリのようなモノだ。女王アリがいて、それを守る近衛アリ、そして餌を集まる兵隊アリと役割分かれている。
しかし、現在ゴブリンたちには女王アリとなるゴブリンキングがいない。トンはそれに一番近いそうだが、トンは学問、チンは偵察、カンは建築とそれぞれの分野のスペシャリストではある。だが、キングの器ではないという。
「キングの存在が不可欠か……誰かなれる者はいないのか?」
「いる。素質があるものが生まれたので。しかし、奴はご主人様のいうことを聞かない」
ゴブリンキングの幼体が生まれたらしい。だがその力故か、人である俺の言うことは聞かないという。
トンたちとは奴隷から解放し、信頼を深めてきたのだ。新参者であるゴブリンキングの幼体にいきなり信頼関係を持てと言う方が無理がある。
「そこで頼みがある。ご主人様」
「うん?」
「その幼体をご主人様の下で働かせてやってほしい。素質とカリスマだけでゴブリンたちは言うことを聞いてしまう。それによってご主人様に逆らうのは我らトン、チン、カンの本意ではない」
現在の主を務めているのはトン、チン、カンの三人である。しかし、これからのちゴブリンキングの幼体が成長した時。トンチンカンの三人はゴブリンキングに王の座を譲るだろう。
「本当にそれでいいのか?お前達の王が俺の奴隷になるということだぞ?」
「構いません。あなたは我々のご主人様であると同時に恩人です。ゴブリン族はどこに行っても嫌われ者だった。住む場所がないのは当たり前。増えれば駆逐され仲間はたくさん殺された。あなたは俺たちを救ってくれた」
トンは砦を見て平和に暮らすゴブリン達を見る。俺も同じように視線を巡らせる。
「それは三人の同意なんだな?」
「はい」
トンは即答で返事をした。
「わかった。ゴブリンキングは俺が預かろう。名前を付けるぞ」
「お願いします」
モンスターに名前を付ければ、そのネームモンスターとなる。名前を付けた者を主として、主従の関係を結ぶ。そのかわり魔力の供給などを主人から受けられるので、主人が強力なほどネームモンスターも強くなる。
それがゴブリンキングほどのモンスターならば、討伐ランクBクラス。さらにネームモンスターともなればAクラスになる恐れもある。
俺は冒険者としてはCランクだが、Aランクと言えば、熟練冒険者であるAランクが五人はいないと討伐できないと言われているモンスタークラスなのだ。
「こいつがゴブリンキングの幼体」
トンが連れてきたゴブリンは他と違っていた。まず肌の色が黒い。さらにほかのゴブリンの角は小さいのにゴブリンキングの幼体の額には雄々しい鬼のような一角が存在していた。
「ギギギ」
幼体はまだ話ができるほど知能が発達していないようだ。だが、その眼には敵意らしきものが浮かんでいる。
「今日からお前と俺は主従になるいいな?」
俺は幼体であるゴブリンキングに確認をとる。ゴブリンキングは一度トンを見て、トンが頷くと片膝をついて礼を尽くした。だが、その眼には服従の意志はない。
俺はゴブリンキングの態度を面白いと思った。名前を付けた後もその態度がとり続けられるのか見ものだと名前を考える。
「お前の名前はボスだ。ゴブリンキングのボス。いいな?」
俺が名前を付けると、眩い光がボスを包み込む。そして俺の中からごっそりと魔力が奪われるのを感じた。どうやら名前付けは上手くいったらしい。
「ボ、ス」
名付けが終わったことで知能が多少高くなったらしい。ボスは自分の名前を反復した。発音もなんとできているらしい。
「そうだ。今日からお前と俺は主従関係になるいいな」
先ほどまで敵意を向けていたボスは、改めて俺を見る。そして一瞬何かに怯え深々と頭を下げた。
「ゴシュジンサマ」
片言ではあるが、ボスが俺を主人と認めた。たぶんボスは気づいたのだ。自分よりも遥かな高みにいる者が目の前にいると。俺は改めて自身のステータスを確認する。
年 齢 16歳
職 業 伯爵、求道者、賢者
レベル 101
体 力 2100/2200
魔 力 4003/4390
攻撃力 890+50×10×2
防御力 877+50×2
俊敏性 900+50×2
知 力 5439
スキル
【斧 術】 レベルMAX
【投擲術】 レベルMAX
【乗 馬】 レベルMAX
【探 索】 レベルMAX
【夜 目】 レベルMAX
【鍛冶術】 レベルMAX
【魔力強化】レベルMAX
【捕縛術】 レベルMAX
【カリスマ】
【気配断ち】
【剛 腕】
【攻撃力上昇V】
【防御力上昇V】
【敏捷性上昇V】
【体力自動回復V】
【毒無効化】
【幻覚無効化】
【麻痺無効化】
【石化無効化】
【魅力無効化】
【魔力消費半減】
【経験値アップV】
【アイテムボックス大】
【超越者】
【限界突破】
魔 法
【治癒属性】レベルMAX
【水属性】 レベルMAX
【火属性】 レベルMAX
【土属性】 レベル8
【風属性】 レベル7
【光属性】 レベル3
【雷属性】 レベルMAX
【氷属性】 レベルMAX
【重力属性】レベルMAX
【肉体強化】レベルMAX
付加魔法
【魔力遮断】 レベル5
【属性付加】 レベル5
【スキル付加】レベル3
協力技
【雷神剣】
【メテオストリーム】
【必中の矢】
特 殊
【ジョブチェンジ】
スキルポイント 182
レベル100を超えたことで様々変化が俺の中で起きていた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
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