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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
騎士になりました。
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将軍

本日から本編スタートです(*^_^*)

 帝国との戦争が中断されたのは、冬の始まる少し前だった。西側にあるシンドリア、アリルーアを帝国に奪われ、雪が降り始めたことで互いに消耗激しくなる前に一旦兵を引いたのだ。

 王国は劣勢に立たされ、多くの将兵を失っていた。中でも第二軍は壊滅的な打撃を受けたため、現在は機能停止状態になっている。

 

 第一軍、第三軍はほぼ無傷で残ってはいるが、第二軍の支援や、諜報活動に人を割いていたため戦える兵は帝国に比べられないほど減少していた。

 

 朗報としては、敵軍の巨人族が壊滅状態にあり、八魔将の一人、ネフェリト・ジャイガントを残して機能を失った。また八魔将シーラ・シエラルクと精霊族たちが王国へ寝返った。さらに八魔将ガルッパ・ベルリングが姿を消したことが報告されている。


 帝国はアリルーア砦を拠点として、黒騎士が総大将を務める部隊が駐屯しており、闇法師が操る死人たちは姿を消した。

 

「英雄ランス、前へ」


 王国の重鎮が集まる謁見の間にて、貴族や騎士など名立たる者たちが見守る中で、ランスの名前が呼ばれる。参列者の中には王の呼び出しにより俺もいた。

 ランスは赤絨毯の真ん中を一人で歩いていく。白銀の鎧を纏い、腰には青い聖剣を差している。俺はこの光景を知っている。


「英雄ランスよ。貴公は数々の武功を立て、多くの民を救ってくれた。その功績は王国にとって計り知れない助けとなった。貴公を名誉騎士から騎士へと昇格させる。また第二軍の総大将として将軍になってもらいたい」

「ありがたき幸せ」


 王の申し出をランスは快く承諾した。


「新たな将軍の誕生に皆の者、盛大な拍手を!」


 王の声で全員が拍手をする。ランスが夢である騎士へと昇格したのだ。


「将となったお前にもう一つ、贈りたいモノがある。ミリューゼ」


 王に呼ばれて、ドレスアップしたミリューゼが王の隣に立つ。


「ミリューゼの婚約者となってはくれぬか?」

「喜んでお受けします」


 すでに決まっていたことではあるが、改めて公式の場で宣言することで、正式な決定だと貴族たちに示すことができる。


「うむ。皆の者、聞いたな。これより英雄ランスは我の子である。そのつもりで接してほしい」


 王の宣言に盛大な拍手が起こった。俺も主人公のランスが本来の地位を手に入れたことに喜びと感動があった。目の前でゲームの筋書きが見れるなど、このゲームを好きなものとして喜ばしいことはないだろう。ここまでの険しい道のりをしばし忘れ、昔の記憶に思いをはせる自分がいた。


 英雄様の式典が終わり。ランスと話す機会もないまま、俺は元帥閣下に呼ばれていた。


「失礼します」


 執務室の扉をノックしてから元帥閣下の部屋に入室した。執務室には、元帥閣下の他に一人の男が立っていた。


「よくぞ来てくれた。ヨハン・ガルガンディア殿」

「はっ、元帥閣に及びにより参りました。ヨハン・ガルガンディアです」

「うむ。ワシが元帥のゲイボルグ・バルツアーである」


 白い髭に顔を覆われた爺様はかなりの威圧感を放っていた。


「お初にお目にかかります」

「うむ。貴殿をここに呼んだのは一つ頼みたいことがあったからじゃ」

「私にですか?」

「そうじゃ。貴殿の活躍は聞いておる。英雄殿と並び称されても恥ずかしくない功績をあげておる。全て手柄をほかの者に譲ってはいるようだがな」


 元帥殿には俺がしてきたことが伝わっているとみて話をしたほうがよさそうだ。


「そんなことはありません。いつも誰かの助けがあったればこそです」

「うむ。謙遜する必要はない。こやつの娘も認めているようだからな」


 こやつと言われて、視線を向ければ立っていた男が俺を見る。


「我は軍事参謀長、ハマーン・トリスタントと申す」


 名乗っただけで、俺は理解することができた。セリーヌたちの父親だった。


「ヨハン・ガルガンディアです」


 俺はなんとか自己紹介をした。


「貴殿の功績を鑑みての頼みなのだが、第三軍の指揮を執ってはくれまいか?」


 トリスタントから視線を元帥閣下に戻したところで、元帥からの申し出に目が点になる。


「はっ?今なんと?」

「第三軍の将となってほしいと言ったのだ」

「ですが、私には領地があります」

「もちろんわかっている。しかし、今回第二軍が壊滅状態になり、新たな将軍となった第二軍にミリューゼ様も参加なされると報告が上がってきた。貴殿も知っての通り、第二軍の将は英雄ランス殿だ。ミリューゼ様が第二軍に加入してしまえば第三軍の将の席が空いてしまう。誰が良いものかと悩んでいる際に、こやつの娘から貴殿の報告があった。調べてみれば確かな功績を残しておる」


 元帥閣下がそこでいったん話を切る。セリーヌの報復を俺は勘違いしていた。直接的な俺への嫌がらせをするのではなく。サクに俺の功績を報告させて利用しようとしていたのだ。


「王国は危機に立たされている。英雄お一人では戦争には勝てぬ。貴殿がもしも将軍の席に座ってくれるのであれば、精霊族の自治を認めてもよい」


 精霊族の話題を出され、俺の考えが元帥殿に悟られている恐れを感じた。どこまで俺のことをわかっているのか。逆らっても得はないと判断した。


「謹んでお受けさせて頂きます」


 俺は膝を突き、承諾の意を示した。


「うむ。これより貴殿は第三軍の将だ。王国からもう少し詳しい話があると思うがこれからよろしく頼む」


 元帥閣下に促されて立ち上がり、握手を交わした。ランスとはずいぶんと違う形ではあるが、俺も騎士となり将軍となった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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