日常
マルゼリータ師団長のイジメが発覚したことで、ミリューゼ王女様が俺の言い分を承諾してくれたので、冒険者として働けることになった。
冒険者として働きたい訳じゃないが、自由にできる時間がほしいのだ。
第三兵団にいても自分の居場所はないだろうしな。
「図書館にでもいくか。アリスさんにもお礼を言いたいしな」
自由の身になったので、とりあえずいつもの日課に戻る。
「すいませ~ん」
「あっ!ヨハンさん」
アリスさんが嬉しそうな顔で迎えてくれる。
なんだか数日しか経っていないのに随分と懐かしく感じる。
「お見舞いに来てくれてありがとうございます。色々と心配をおかけしました」
「いいんです。無事に帰ってきてくれて、本当によかった。それにヨハンさんが活躍したって聞きました。正規兵に採用されたそうで、おめでとうございます」
アリスさんは自分のことのように喜んでくれた。
なんだが恥ずかしくて、頭を掻きながら顔をそらしてしまう。
「ありがとうございます」
「ヨハンさん。今日はどうされたんですか?」
嬉しそうな顔で訪ねてくるアリスにお礼を言いに来ただけとは言えず、数冊の本を借りる。
「では、今までよりも難しい参考書や歴史書はありますか?」
「もう、そんな物まで読めるようになったんですか?」
「読めるかはまだ分かりません。でも見てみたいんです」
「わかりました」
アリスはゴブリンでも分かるシリーズから、一般的な参考書と歴史書を貸してくれる。
歴史書にはエリクドリア王国の成り立ちが記されていた。ゲームの設定で読んだものよりも詳しく書かれている辺りが、この世界が現実だと思い知らされる。
参考書には、言葉の使い方や礼儀作法など、文字を習うだけでは得られなかった言葉の使い方が勉強できた。
「相変わらず熱心ですね」
「アリスさん」
「もう日が暮れますよ」
いつの間にか、そんなに時間が経っていたらしい。
「ありがとうございます。そろそろ帰ります」
「また来てくださいね」
アリスさんに見送られて図書館を後にする。
名 前 ヨハン
年 齢 14歳
職 業 冒険者(ランクC)戦士、エリクドリア王国第三魔法師団所属
レベル 28
体 力 230/240
魔 力 110/120
攻撃力 160
防御力 220
俊敏性 212
知 力 186
スキル 斧術、3/10、スマッシュ、アイテムボックス、経験値アップ
魔 法 ヒール、4/10、ウォーターカッター、3/10
兵 法 背水の陣
スキルポイント 11
帰りは露天商に寄ってみる。ランスは今頃門番をしていることだろう。
主人公の活躍は気になるが、俺は俺としてこの世界を楽しむと決めたのだ。
「おっ、兄ちゃん久しぶりだね」
露天商が並ぶ商店街に行ってみれば、見慣れたオジサンやオバサンに声をかけられる。
「ああ、戦争に行っていたからな」
「なんだい。志願兵だったのかい?」
「おうよ。まぁ無事に帰ってきたけどな」
アイテムボックスも手に入れたことだし、買い物に明け暮れる。
アイテムボックスの中に入れておけば時が止まったように素材は腐らないで済む。
「今日は大量に買うからさ、まけてくれよ」
「仕方ないねぇ~」
俺は露天商を周り、数カ月分の食料や武器を買い揃える。
いつ戦争が始まってもいいように、揃えられるときに揃えておくのだ。
この国は、いや、このゲームの世界は主人公を出世させるために戦争が頻繁に起きる。
そこで生き残るためには食料は必要不可欠だ。
俺は第三魔法兵団の宿舎へと帰ってきた。
帰ってきたと言っていいのか、俺は明らかに歓迎されていない。
それでもここにいるだけで金が入る。宿代がかからない上に自分の部屋もあるし、立派なベッドや机まであるのだ。
ここを拠点にできるだけの準備をしておく。
「帰ったか」
エントランスに入ると、神経質そうな男、名はジェルミー。第三魔法師団の副長であり、マルゼリータの部下だ。
「ただいま戻りました」
「うむ。食事は自由だ。明日はミーティングがある。出席するように」
「わかりました」
ジェルミーは確かに無愛想で神経質そうだが、別に何も思って居ないだけのようだ。
質問をすればちゃんと答えてくれるし、普通の生活については聴く前に応えてくれるのでありがたい。
「ではな」
要件を伝えるとジェルミーは去って行った。
食堂で食事を簡単に済ませ、部屋に戻れば日もだいぶ傾いていた。兵舎と言っても食堂でもほとんどの兵士と会わなかった。
魔法師団というだけあり、魔法の研究で自室にこもっているのだそうだ。
「魔法は勉強したいが、どうするかな?」
この兵舎に図書館でもあればいいのだが。明日ジェルミーにでも聞いてみよう。
いつも読んで頂きありがとうございます。




