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精霊領奪還 4

 ジャイガントの手を、足を掻い潜り、腕を踏み台にして、ジャイガントの体の至るところを切り裂いていく。

 胸も、首も、顔も、腹も、ジャイガントの身体の傷がないほど切り裂いていく。切り裂いたところから回復していくが、それでも俺は止まらない。

 

「ウオォォォォォォォーーーー!!!!」


 ジャイガントの片足を拭き飛ばし、膝を突いたところで終わらせない。刃に重力を増加させていく。今の俺ならば、岩だって竜だって斬れる気がする。


「調子に乗るなよ」


 俺はジャイガントが追い付けない速度で斬りつけ続けた。攻撃力も高め、休むことなく攻め続ける。それでもジャイガントの回復力は異常だった。

 吹き飛んだ足が生え、切り裂いたことで見えていた肋骨が再生していく。


「スタンプ」


 ジャイガントが叫び、地面に着地するたびに足の裏が迫ってくる。跳びあがればまるで蚊を殺すように両手が合わさる。体重を操作し、必死に躱し続けるが、無傷でいられるはずがない。


「今度は右足が潰れたか」


 ほんの少しかすっただけで、右足が骨も筋肉も潰れてしまう。痛みに構っている間に次の攻撃がやってくる。回復魔法をかけつつ、痛みは頭から除外する。

 手から逃れた俺はジャイアントの顔目掛けて重力波を喰らわせる。それでも足りない。この身全てでジャイアントに挑みかからなければならない。


「メテオ」


 メテオは隕石を落とす魔法だ。魔法と言ってもこの星の物ではないため、ジャイガントにも有効なはずだ。


「うん?」


 星が降る。一度使ったときは全てを無に帰した記憶がある。この岩山が消滅しようと、構っていられる暇などない。


「星を降らすか。個人属性を最大限に使ってきおる」


 ジャイガントがメテオに気をとられている内に俺はジャイガントの瞳を狙って飛来する。ジャイガントに隙などない。無いのならば作るしかない。


「ムッ!」


 咄嗟にジャイガントの腕が目を庇う。重力を増加させて、目から喉へとシフト変換する。


「スラッシュ!一刀両断」


 スラッシュで傷口を作り、一刀両断で胴と頭を切り離す。


「グっ!」


 しかし、俺の思惑に反して喉は両腕がガードしており、一刀両断によって両手が吹き飛んだ。

 追い打ちをかけたいが一刀両断に全力をかけ過ぎた。踏ん張れずに落下していく。

 五十メートルを落下してる途中で、身体を軽くしてジャイガントを斬り付けながら落ちていく。俺に気をとられていたジャイアントの後頭部に星が降る。


「ヌウォォォォォォォォ」


 腕をもがれたジャイガントは、後頭部で隕石を受け止めた。自分の身体よりも大きな石の固まりをその身で受け止めたのだ。


「ははっ。勝てねぇよ」


 魔力はメテオを使ったことで尽きた。メテオを引き寄せるために全魔力を重力魔法に込めた。


「ヌガア!!!」


 俺が見つめる間、ジャイガントは星と戦い続け、ついに勢いを止めた。


「フヌラバ!!!」


 掛け声を上げて、頭突きで星を砕いた。


「はっ!お前さんの切り札はこれか」


 再生が追い付いていないのか、頭が割れて頭蓋骨が見えている。俺が一刀両断で切り裂いた腕も生えていない。


「ワシの限界を超えるかよ」


 ジャイガントが俺を見下ろして何か言っている。疲れて耳も遠くなってきた。いったい何を言ってるんだ。聞こえない。


「スタンプ」


 俺がジャイガントの言葉を聞こうと耳を傾けるよりも先にジャイアントが大きく足を持ち上げる。


「ああ、これは死んだな」


 ジャイガントが足を俺の頭上に下せば、俺の命は尽きる。全力を尽くした。それでも届かなかった。


「最後だ」


 ジャイガントの言葉がハッキリと聞こえた。俺も諦めが尽いた。


「ああ、俺の負けだ」


 俺が言葉を発すると同時にジャイガントの足が下りてくる。真っ直ぐに俺の横に。


 落ちた足はとんでもない威力が込められていた。地面に巨大な穴が開き、ジャイガントが崩れ落ちる。


「ガハハハハハ!!!本当に面白い。ヨハン・ガルガンディア。お主のことは覚えておこう。八魔将ではない帝国の民に、これほどの者がいたとは本当に面白い。これほど全力を出して戦ったのはいつぶりであろうか?もしかしたら、初めてだったかもしれん」


 倒れ込んだジャイガントは巨大な声で笑い出した。俺は助かったのか?


「お主の力量を認めよう。この地はお主に任せる。ワシは西に面白い敵がいると聞いた。そちらに赴くこととする。主の戦場を荒らしてすまなかった」


 ジャイガントは横になりながら15メートル級へと身長を戻していく。さらに吹き飛んだ腕も割れた頭も回復して目の前に立っていた。

 俺は今にも意識が飛びそうだったが、今意識を失うわけにはいかない。


「はい」


 なんとか返事をすることができた。


「うむ。互いの戦場が終結したおりにはまたやろう。またワシを楽しませてくれ」


 それだけを告げるとジャイガントは背中を向けた。


「お待ちしております」


 俺は心にもない言葉を送った。それがジャイガントへ送れる唯一の言葉だと思ったからだ。


「うむ。ではな、ガルガンディア領の領主殿。ガハハハッハハハハ」


 ジャイガントが立ち去る前に俺は立ったまま意識を失っていた。

最後にジャイガントが言った言葉を聞く前に……

いつも読んで頂きありがとうございます。

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