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精霊領奪還 1

 ドワーフの協力を得られることになった俺は、リンと連絡を取り合いゴブリン達を国境沿いに配置することに成功していた。ノーム族に関してはモグの働き次第だが、心配していない。モグは俺の考えに賛同してくれている。モグは誰よりも真剣に精霊族のことを考えている。


「準備は整ったな」


 俺の目の前にはドワーフの戦士が集まっている。ドワーフは歳をとっても筋骨粒々なので、若々しく見える。


「戦闘前に皆さんに言っておきたいことがあります。今回、ドワーフさんたちは戦わないでください」


 俺の言葉にドワーフ達が驚いた顔をする。ドワーフ達の数はエルフよりも多い。なぜかというと、彼らの寿命はエルフよりも短く、ムキムキで元気そうに見えるが彼らは老人に属している。また、戦闘面よりも武器や防具などを作らせた方が価値があるからだ。


「どういうことじゃ!ワシらに戦うなとは?」

「あなた達は抑止力です。精霊族に反乱の意思があるということを示していただければそれで充分です。後はこちらでやります」

「ふん、協力してやると言うたからな。お前に従うが、ワシ等は戦士じゃ。戦う覚悟はできておる」


 ゴルドーの声につられるように、ドワーフの爺様達が文句を言ってくる。うるさいので収拾はココナに任せて俺は作戦を実行するために国境の街が見える丘に上がる。

 すでにドワーフの街から離れて、国境の街近辺に到着している。リンの連絡さえあればいつでも作戦を開始できるのだ。


「どうするの?」


 いつの間のか爺様達の相手を終えたココナが横に立っていた。


「ココナか、ココナには話してもいいか」

「うん」

「俺の兵士が国境を越えた時点で連絡が来る手筈になっている。連絡がきたら俺は国境の街に入って司令官達を無力化する。それが出来たら合図を送るから、そしたらドワーフ達は雄叫びを上げながら国境の街に迫ってほしい」

「それだけでいいの?」

「ああ、あとは俺が上手くやる」


 俺の言葉にココナは大丈夫なのかと疑いの目を向けて来るが、ここは信じてもらうしかない。


「この作戦ならば、死ぬのは俺だけだ。ドワーフ達は俺に脅されたと言えばいい。ドワーフの大将が捕まっているから仕方ないと」


 俺はゴルドナのことを口にして、ココナの気持ちを軽くしてやる。


「本当に大丈夫?」


 そんな俺に対して、意外なことにココナが俺を心配するようなことを言ってきた。


「どうかしのたか?」

「あなたが死ねば精霊族の立場も危うくなる。私はあなたを護る」


 ココナの意外な言葉に、俺は目を点にしてボー然とする。


「どうかした?」

「あっいや。驚いただけだ。ココナがそんなこと思っているとは知らなくて」

「そう」


 ココナはそれ以上話すことがないのか、何も語らなかった。しばらく時を待っていると、国境付近で煙が上げる。派手な合図だが、リンからの知らせだ。


「ココナ。手筈通りに後は頼むぞ」

「わかった。ドワーフの誇りにかけて」


 ドワーフ達の動きに関してはココナに一任した。ゴルドー達もココナの話は聞いてくれるので、任せた方が安心できる。

 

 俺は森から出て素早く国境の街に入る。国境の街では兵士たちが慌ただしくしていた。街に住む元共和国兵も狼狽えるようにオロオロと街の中で人が行きかう。

 俺はその中で兵士たちを司令を出している場所を探した。


「おい!どうなっているんだ!」

「わかりません。現在現状を調べておりますが、何の報告もありません」

「物見は何をしている」

「一番近い物見は、国境と同時に攻撃されたモノと考えられます」

「王国の攻撃か?こんな辺境に仕掛けてくるとは、おい、念のためだ増援を要請しておけ」

「はっ!」


 どうやら兵士の多いところを探してたどり着いたところで司令官らしき男を見つけることができたらしい。

 伝令に出てきた兵士に不意討ちを食らわせて気絶させてから服を奪う。


「司令官!」

「なんだ!まだ何かあるのか」


 どうやら司令官で問題ないらしい。


「ちょっと失礼しますよ」

「なっ、なにをする!」


 司令官が叫び声を上げる前に俺は司令官を無力化した。司令室の奥に司令官と兵士を隠して、司令官の制服を奪って司令官の椅子に代わりに座る。


「報告します。北の国境より、ゴブリンの大群が押し寄せています」

「ゴブリンだと、そんな者に負ける帝国兵ではないぞ!」

「しかし、ゴブリンの勢いは凄まじく。ゴブリン達の中に魔法が使える者がいるとの報告がきています。現在交戦しておりますが、苦戦しております。この街の兵だけでは間に合いません!」

「では、どうする?」

「隣の都市にいる八魔将ネフェリト・ジャイガント様に救援を求めましょう」


 なっ!ネフェリト・ジャイガントて言ったら巨人族の王じゃねぇか。ランスと戦闘して西に向かったんじゃねぇのか。


「うん?ネフェリト・ジャイガント様は西に向かわれたと報告を受けたが」

「それは八魔将ネフェリト・ジャイガント様ではありません。巨人族副将のオシリス・ジャイガント様です」

「そっそうだったか?」

「はい。では、伝令を出しておきます」

「ちょっと待て!」

「どうされました?」


 俺は報告にきた兵士に近づいて兵士の体に手を触れる。雷魔法のスタンガンで意識を奪い、奥に寝転ばせる。これで多少の時間稼ぎになる。


「頼もーーー!!!」


 俺が安心していると、馬鹿でかい声で叫ぶ者がいた。慌てて外に出てみればとんでもないものが見えている。

 巨人、それは人が築いた門など何の意味も持たない存在である。街中に響く声は、門の外ではあるが、街を見下ろすように立っていた。


「あれと戦ったのか?」


 知らなかったランスが戦った巨人たちが三メートルから五メートルほどの大きさだったことなど。目の前にいる巨人ネフェリト・ジャイガントは15メートルもある大型巨人だということを。


「うん?主が司令官か?隣の街を離れるので挨拶に来たのだ」


 巨人は俺を見てニカっと笑う。


「それはご苦労様です」


 俺はばれないように挨拶を返し、ゴブリン達に今は来ないでくれと祈るしかなかった。


「ネフェリト・ジャイガント様とお見受けします。態々ありがとうございます」

「うん?ワシを知っておるのか?」


 どうやら間違いではなかったらしい。


「はっ!ネフェリト・ジャイガント様を見間違うバカはおりますまい」

「ガハハハハ!面白いことをいう奴じゃ。よし今度酒を御馳走してやろう」


 ジャイガントが笑う度に大地が揺れる。


「西へ向かわれると聞きました。ご武運轟くのを心待ちにしております」

「うむ。万事安心するが良い。それよりも、煙が上がっているようだが?」

「あれは合図の狼煙にございます。私共はネフェリト・ジャイガント様のように大きくないので、遠くが見えませぬ。あれは交代の合図ですので、ご安心を」

「そうか、其れならばいいのだ。ワシの勘が戦場のような空気を感じたのでな」


 ジャイガントの言葉に息を飲む。この化け物はここが戦場になるかもしれないと勘だけで来たのだ。でなければ挨拶に来るような相手出はない。


「そのようなことはありえません。我々帝国に逆らう者などおりません」

「それもそうじゃな。王国などすぐに蹴散らしてやるわ。まぁエルフの女子にも頑張るように伝えよ」


 そういうと片手を上げて、ネフェリト・ジャイガントが立ち去ろうとする。


「おうおう、そうであった。主の名前は何という?酒を飲み交わそうにも名前がわからねば尋ねることもできぬ」

「ヨハンです。ヨハン・ガルガンディアと申します」

「そうか、そうか。久しぶりに楽しい会話であった」


 またもジャイガントは、大きく笑い声を上げ大地が揺れる。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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