第一章「アンファング」-2
自宅から20分の距離を2分で走りきる持久力と安定性はやはり腕が良くなくてはできない。
「その辺隠さなくて良いの?」
「…その心の中で会話の大部分を話す癖を直せと常々言ってるだろう。それと、運命線がゆれている。隠しても無駄だろう」
「そーやってちゃーんと通じるし別に気にしなくても良いよ。ってかもうそんな時期か…」
二人は面倒くさいという感情を惜しげもなく辺りに撒き散らしながら職員室のドアを叩く。
「「失礼しまーす…」」
Side RURU
「ねぇねぇ!さえちゃん!今日編入生来るって本当?男?女?かっこいい!?かわいい!?ねえ、さやちゃあべっ!!」
「うるさい、さえちゃんゆうな!」
教室の窓際で騒ぐ二人の少女。
一人はストレートを腰まで垂らす空色の髪、きちんと着こなす制服から、清楚な佇まい。まさに生徒会長という落ち着きのある外見。しかし口を開くと取っ付きやすさが表に出てくる可憐さもある。名は海崎冴子。
もう一人は金色のツインテールを揺らす活発そうな少女。その目は輝きを内包し、元気溢れるそのしぐさは幼女のような微笑ましさがある。名は内原ルル。
「うー…まじいった…」
鼻を抑え唸るのさえ、可愛いげが溢れている。
「編入生は二人。男と女だ。女は知らんが男の方は期待していいぞ」
「えぇ!本当?かっこいいの!?」
「あぁ!強いぞ!とてつもなくな!」
思わず見惚れるほどの笑顔で少しずれたことをいう冴子。
先程までの快活さは何処へやら、ルルはうんざりした表情で呟く。
「…あー、いつものあれが…」
「なんでもな!試験官を2秒で潰したらしくてな、その手管は正に…!」
「おらぁ!そこの馬鹿二人!席につけ!」
ヒートアップしていく冴子を止めたのは教師の一声。既にホームルームは始まっていた。
「「すいませんっ」」
教師の目つきは血走り、その形相は悪鬼羅刹の類いであった。
あ、これキレてる。二人は面倒事は嫌いなので、そそくさ席につくのであった。
Side end...