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ナロウニア国立博物館物語  作者: 林育造
ナロウニア国立博物館 展示室
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展示室D:食べ物など

 本編中に出てきた画像は、基本的に林育造が撮影したもの、即ち、当たり前ですがナロウニア王国ではなく、実際に日本に存在するものです。


 ここではそれぞれの画像について、その正体について解説します。

 展示室Dは、「博物館の資料・展示品」にこだわらず、ケースケ達が作中で食べたものなどを含みます。

・食べ物など


焼肉串

挿絵(By みてみん)


 (バンブー)というのは軽く、縦方向には分割しやすく、横方向には切断しにくく極めて丈夫で、曲げ加工しやすい優れた素材である。ファンタジー世界に竹が生えている記述はあまり見ないが、良く出てくる屋台の「串」は何で作られているのだろうか。

 ちなみに、木で串を作って竹と同様の太さにするとくにゃっと曲がってしまい、同等の強さにするにはかなり太くしなければならない。試しにいろいろな植物で串を作ってみたのだが、杉や檜ではものすごく太くしなければ強度が出ないので肉が刺しにくく、パピルスはヒメパピルスを使ったのが良くなかったらしく何故かあっさりとへし折れた。

 結局のところ納得できる加工しやすさと強度があったのは画像のシュロヤシの葉柄と、意外に健闘したのがサトウキビの皮。サトウキビは見かけが竹っぽくてつまらないのでシュロヤシを加工してみた。


カエル乾し肉

挿絵(By みてみん)


 ウシガエルは特定外来生物に指定され、活きたものを築地で買えなくなってしまった。そのためマレーシア産の乾しガエルを用意したのだが、乾かすと水分の多いカエルはえらく縮んでしまうので、現地でも生が主流だそうである。従って、乾しガエルをわざわざ屋台で焼いて売っていることは少なく、煮ガエルも焼きガエルも基本的には生から作っている。

 ぶつ切りにした脚肉をタマネギ、唐辛子とともに炒めると(何の肉か気にしなければ)あっさりした白身肉で大変美味しい。香港や台湾での屋台料理にもあるが、某ナゲットよりよほど安全安心であろう。


蜜蝋

挿絵(By みてみん)


 ミツバチは安全なハチである。養蜂は長い歴史があり、だからこそセイヨウミツバチ×アフリカミツバチの交雑種が攻撃性を持ったときに問題視されたのである。

 もし、蜜をもたらすハチに激しい攻撃性があり、蜜の採取を冒険者に依存しなければならないようでは、蜂蜜の価格は同様に採取するのに危険を伴うフカヒレやツバメの巣のような位置づけになってしまうはずだ。そもそも、人を襲う(=肉食の)スズメバチ系のハチは蜜など巣に溜め込まない。熊がこれらのハチの巣を狙うのは、幼虫や蛹を食べるためである。その味の良さは、日本(の一部)でも高級食材として扱われているのを見ればわかるだろう。


フィギュア

挿絵(By みてみん)


 余ったガレージキットのパーツに伝説通りトンボの羽根を付けてみた。全体像も披露したかったが造形が判ってしまうと著作権の問題とか出てきそうだったので、顔が写らない後ろ姿だけに留めた。そのため接写ぽくなって髪の塗りがガタガタなのがばれてしまったが、ゲオルグだったらこんな下手な塗りは決してしないであろう。



ディスク

挿絵(By みてみん)


 フライングディスクは基本的にプラスティック製なので、木製の皿を引っ張り出してきた。小説内ではディスクで飛ぶ理由はそれらしく説明できたが、直径4mと言わないまでもこの皿は直径80cm近くあるのに、撮影がへたで全然大きさが伝わらなかった。自分の影を写し込めば良かったことに気づいたのは話がだいぶ進んでからである。


紅茶烏龍茶緑茶

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 ファンタジー小説の登場人物は紅茶が好きである。中世ヨーロッパで紅茶が主流だったのは茶葉を長い航海によって運搬するしかなく、その間に発酵が進んでしまって緑茶状態を維持できなかったからに過ぎない。輸入ではなく自国製品として茶葉を生産しているのなら緑茶があるだろうし、長距離を輸送するでもなく紅茶にしているにしては、小説を読んでいる限り茶葉の熟成に適した気候とは思えないのだが。

 画像はそれぞれ本物の緑茶・烏龍茶・紅茶であるが、3つとも日本産の茶葉を使って撮影している。他にも嗜好品としての飲み物は数多く存在するのだが、異世界人は紅茶とコーヒーしか飲んでいないようである。コーヒーに関しては非常に詳しいコミックが存在するので、ここでは論評しない。



レンズ豆

挿絵(By みてみん)


 かなり古くから食材として使われていた豆で、中世ヨーロッパでの「豆料理」といえば、これを使ったものも多かったはずである。だから中世ヨーロッパ風の異世界ではありふれた食材だと思われるが、転移したばかりの日本人では料理法も良くわからないに違いない。

 塩を入れて水から煮るだけで、簡単に「豆のスープ」ができあがるが、コクはないので肉片くらい入れた方が美味しいと思う。


緑豆

挿絵(By みてみん)


 こちらも豆としては馴染みがないだろうが、モヤシの原料にもなり、はるさめの原料でもある。従ってこの豆の場合には、発芽させて野菜として使うか、粉末にしてから団子状か紐状にして茹でると食べやすいかと思う。同じ「豆」であっても、どんな豆かによって味も料理法も結構違うものになるのが面白い。


インディカ米

挿絵(By みてみん)


 異世界に転移し、「米」を求める登場人物は多い。そのほとんどは米を発見することは叶わないのだが、発見した場合にはなぜかジャポニカ米で、あっさりとご飯として炊きあげてみたりしている。麦に比べて生産性の高い米は作物としては優秀だが、生育期に多くの降水を要求するし脱穀に手間がかかるので積極的に作りたい作物ではなさそうである。しかも世界的に見れば粘りの強いジャポニカ米は非主流派であり、異世界に米が存在したとしても画像のようなインディカ米の可能性が高いのではないだろうか。


アイスクリーム

挿絵(By みてみん)


巣蜜

挿絵(By みてみん)


 攻撃性のないミツバチの巣があれば、蓋をされた巣の一角に濃縮された蜜が保存されている。我々が店で購入するような蜜は希釈・均一化された薄いものであるが、巣から取ったばかりのものは結晶化一歩手前の濃いものである。アイスクリームは大量の甘味料を必要とするが、蜂蜜であればアイスクリーム用の甘味料として問題ない。

 一方のミルクは、乳脂肪分が含まれていれば何でも良いが、山羊ミルクは幾分癖があると感じる人が多いようである。もっとも、そんなのはバニラ(作中では匂い豆と表記)の1本もぶち込めば解決する程度の問題である。自分たちで消費するのなら、バニラビーンズの破片が残っていて商品価値が下がる心配はしなくて良い。


挿絵(By みてみん)


 物価の優等生、鶏卵。我々はその鶏卵に慣れすぎてしまって「卵」というと鶏卵をイメージしてしまうが、世の中には多くの「卵」が存在する。日曜日を半日程度使っただけで、鶏の卵2種はもちろんキジ、アヒル2種類が集まった。他に当然ウズラ卵も売っていたがアイスを作るなら大きさが足りないと判断して放置、ガチョウ卵もあったのだが「美味しくないよ」と聞いて、後の処分方法が頭にちらつき断念した。ネットなどで調べたところお菓子に使われるのは鶏が圧倒的で次がアヒル、ガチョウよりはエミュー(後述)の卵の方が味が良くお菓子向きらしい。


乾し肉・干イチジク・ナッツ

挿絵(By みてみん)


 異世界で間食、おやつ、携行食などに使われる乾燥食品。小説中の表現がおざなりなものの代表ではないだろうか。

 まず、乾し肉は腐敗防止と水分除去のために大量の塩を用い、それから乾燥するので恐ろしく固くて塩辛いものに仕上がる。現代に市販されているビーフジャーキーなどは、加工方法を工夫して乾し肉からかけ離れた柔らかさになっているものなのである。そのままだと小片を口に入れて長い時間かけてしゃぶるという食べ方か、湯の中に少量入れてスープの素として使うくらいだろうか。「囓る」ことができるほど口に入れてしまえば喉が渇いて仕方がないし、顎も疲れること請け合いである。

 ドライフルーツとして良く登場する干イチジク。甘さよりプチプチした食感が特徴だと思うのだが、小説の異世界人達は丸呑みでもしているのか、「口の中に甘さが広がった」と思ったらもう次の食材に移っていたりする。

時間かけて作ってるんだから味わって頂かないと。

 ナッツはこれ見よがしに、中世ヨーロッパでは知られていなかったであろうマカダミアナッツを並べてみた。基本的にナッツ類はカロリー量と保存性の良さから優れた携行食であるが、カロリーが高すぎてたくさん食べるものではない。


マルベリー

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 マルベリーなどと格好付けても、要するに桑の実である。昔は本州一帯で栽培されていた桑であるが、養蚕業の衰退とともに桑の実を食べる機会も減ってしまった。

 作中では高木の枝先などとほざいているがもちろん低木でも実を付ける。他は書いた通り、旬が短く傷みやすいので流通しにくい食品である。6月1日、上記卵の調達のついでに山梨県某所で摘んできたものだが、ここの摘み取り農場解放期間は2週間限定である。

 この他グミやヤマモモ


挿絵(By みてみん)


なんかも味は悪くないのに店頭ではほとんど見ない食材である。


水筒

挿絵(By みてみん)


 こんな便利な水筒があれば欲しい。そんな異常な機能付きなので通常見られないであろうものを組み合わせてみた。本体部分に使っているのはエミュー(比較的大きな鳥)の卵。表面だけ青緑~灰緑色をしており、中味は食用に、殻は削ると白い部分が見えて模様ができるので細工に使われる。上に載せたパーツはアカウニの殻。トゲだらけのウニだが、トゲを取ってしまえば本体は綺麗な模様の付いたこんな形をしている。ウニの殻もトゲの形状が特殊なパイプウニや、大型のラッパウニなんかは装飾品の他にランプシェードなどに使われている。モンスター素材も、もっと斬新な使い方を考えて欲しい。


グジマ

挿絵(By みてみん)


 グジマはそのままヒザラガイの高知県における名称で、太平洋側の一部を中心に食べられている。他にもイソアワモチやカメノテ、クロフジツボなど、手間がかかって可食部が少ないのが原因なのか味が良い割に食べている地方が限定的な海産物食材は多い。

 食ってみなければ味はわからない。とりあえず地元で食っているのなら、食ってみるのが基本である。


蠅取りリボン

挿絵(By みてみん)


 使い魔を使うことはあっても、トラップで使い魔を捕まえに行くことはあまり多くない。使い勝手が良くても意志や知能、或いは生態の問題で掴まりやすい使い魔は多いような気がする。ファンタジー世界の住人は、「使い魔」の存在を知っているのなら陰謀の相談などで危機感がなさ過ぎである。



おまけ:ナロウニア月報

挿絵(By みてみん)


 博物館の研究材料は税金や寄付で成り立っているので、研究成果を発表する義務があり、月報の形で発表している館が多い。一応、サイトとしての「小説家になろう」ができたのが2004年4月であったため、月報の号数はそこからカウントしてみた。サイトのロゴは『小』の字の縦棒がペンになっていてそこからラインが出ているわけだから、月報もデザインとしてこの図のようにすべきであった。著者名が思いつかなかったので作中ではほとんど触れていないが、設定上バックナンバーの記事目次が作ってあったりする。「最強の魔法は何か」など、他の小説で題材にされたものの他、「ステータス画面はどこに写っているのか」「転生回数に上限はあるか」「効率の良い風呂の温め方」といった自分で疑問に思った内容や「異世界の麺」「翻訳魔法の可能性」「チョロインの心理学」「こんにゃく無双」「異世界外来生物としての『ヒト』」など、いっそ短編の形で投稿しようかと思ったり、今後ネタに使うかもしれないものが並んでいる。実際、学芸員や研究者というのは、一般人から見れば至極どうでもいいことを大真面目に研究するものなのである。

 「麺」については、どんなに硬くてもパン、即ち小麦粉がある以上スパゲティ、うどん、ラーメン、そうめん辺りは作るのが可能であるはずだ。ビーフン、春雨になると原料の制約があるが、少なくとも小麦粉からどれが作りやすいかまでは実験してみる予定である。

 「翻訳魔法」については、普遍文法と脳の構造から、だじゃれ的な言い回し以外は対応できそうな気もする一方で、表音文字言語の同音異義をどうするのかという問題が付きまとう。普遍文法についてはノーム・チョムスキーの著作に触れないわけにはいかないが、運営に問い合わせたところ、規約上存命の人物名の記載はグレーゾーンらしいので少々困っている。

 ここまで怪しい作品におつきあい頂きましてありがとうございました。実習生編の最後に書いたように、一旦ここで完結とさせて頂き、怪しい画像が再び溜まった頃、戻ってくるかも知れません。

 読者の皆様の、ファンタジーな素材に関する(余計な)知識と(突っ込み)ネタの増加に役立てることができたとしたら、嬉しく思います。


 最後になりましたが、作品の世界観を破壊しかねない危険も顧みず、「ナロウニア」の使用を快く許可して頂いた月寝薪様に改めてお礼申し上げます。

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