校区探検に行こう
校区探検というものは、どこの学校でもするのでしょうか。わたしの小学校では、班でコースをつくって、回ったところのサインなりハンコなりをもらってくる、というふうにやっていました。某大手ドーナツチェーン店に行くとドーナツをくれるので、わたしなんかは積極的に狙っていましたね。今考えると迷惑がられていたように思います。
しかし子供の発想というのは面白いもので、店だけでなく、「◯◯くんの家」だとか、はたまた「◯丁目にあるつばめの巣」なども回っていました(つばめの巣でどうやってサインをもらうんだろう?)。また、「M山→H山」というコースもよくやっていました。低い山とはいえ、たかだか二、三時間でふたつも山を登ろうだなんて、スケールのでかさに驚かされます。そして、ちゃんと時間内に間に合っていたのも不思議。
当時はインターネットも普及していなかったし、新しい地図を買うという発想もなかったので、なぜか小学校創立百周年の記念本に折り込まれていた地図を参考に歩いていました。……当時から数えて、三十年前の地図です。当然道が大きく変わっていて、迷うことがよくありました。しかも班でぞろぞろと動くので、よくはぐれる人がいました。さんざん探し回った挙句、ドーナツ屋さんでもらったドーナツを食べていたときには呆れましたね。
この校区探検で、他にもいろんなドラマが生まれました。どういうわけか先生と一緒に歩く機会があったのですが、先生が突然「このあたりに○○さん(地元のミュージシャン)の家がある」と言い出し、わたしは知りもしない人だったのですが、(主に先生の独断により)行くことになりました。アポなしの訪問だったので、結局かなり迷惑がられて追い返されました。ちょっとショックです。
それから、坂道を登っているとき、上からなにかがものすごい勢いで転がってきました。友達が足でキャッチすると、それは一個のりんごでした。誰かが上で落としちゃったようです。今でも忘れられない衝撃的な出来事です。
わたしはこの校区探検がとても好きだったので、放課後や休日も友達と自主的にやっていました(さすがにサインはもらいませんが)。不思議なのは、あえて「校区探検をしよう」などとは言っていなかったことです。なんとなく、しようという雰囲気になっていました。このへんのフィーリングは、大人にはないものだなと思います。
自主的な校区探検では、たいがい駄菓子屋巡りになっていました。買ったお菓子を持って、公園に行くというのが定番です。でもそこは校区探検、ひとつの公園で遊んだあとは、わざわざ一、二キロ離れた別の公園に移動したりしていました。途中で泥だんごづくりなどにハマッてやめどきを失った場合には、後ろの予定をキャンセルすることもありましたが。
前述のM山やH山にもよく連チャンで登っていました。到底会いそうにも思えないのに、なぜか同級生と出くわすこともありました。みんな当時流行っていたゲームボーイ片手です。最近は外出先でDSばかりやっていて怒られている男の子をよく見かけますが、わざわざ山に登ってゲームをするという意味不明な発想がいかにも小学生らしいですね。たぶん、彼らも外が嫌いなわけではないのだと思います。大人は外で遊ぶか家のなかで遊ぶかという二択で考えがちですが、彼らは純粋に「楽しいこと」を合体した結果、山でゲームをしようということになったのでしょう。