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十刻ノ月  作者: 牧田紗矢乃
肆ノ日
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第陸刻 〈深夜の電話ボックス〉




 おれは、その少年に言ってやりたかった。

 おれたちは囚われている、助けてくれ、と。


 しかし、アナタと同化したおれに主導権はない。

 その、はずだった。


 二人の間に交わされる会話を聞き自分の無力をあざ笑っていた時、その声が外へ漏れていることが分かった。

 彼女ではなく、おれが喋っている。体も、思うように動かせた。


 外界に声で干渉することは最近もあったが、肉体を伴っていたのは遥か昔のことだ。


 久方ぶりの感覚に興奮を覚えつつ、おれは妙なことを口走っていた。少年を挑発するような文言ばかりを並べ立てているのだ。

 止めようと思っても、制御が効かない。


 救世主である彼に金縛りを掛け、仕舞いには夜にここまで出てくるようになどと言っている。アナタが困惑するのが感じ取れたが、おれにもどうしようもなかった。

 ようやっと体が自由に動くようになったのに気づいて、おれは逃げるように気配を消す。




 今のおれは明らかにおかしい。

 どうか、彼がここに来ませんように。彼が来たとしても、すぐにおれたちのおかしさに気付いて逃げ出してくれますように。


 神の存在など信じたこともなかったおれは、必死に祈っていた。

 それと同時に、むくむくと怒りの念が湧き上がる。


 あの小娘に違いない。あいつがおれたちに何かをしたのだ。そして、現在もおれたちを操って何かをしようとしている。

 姿かたちがないとはいえ、プライドだけは人一倍高いおれだ。愚弄するなど許せなかった。


 何としてもこの支配から抜け出し、この借りを返すのだ。

 おれは、そう強く胸に刻みつけた。

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