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十刻ノ月  作者: 牧田紗矢乃
壱ノ日
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第参刻 〈目の前をナニかが通り過ぎていった〉




 ワタシは醜い。人様の前で晒すことのできないような顔をしている。

 顔の下半分――特に右側――の口の端から耳にかけて、大きな裂傷の痕が残っているのだ。しかも、この傷痕は薄くなることはあっても消えることはないらしい。

 それを誤魔化すため、いつも顔の半分ほどが隠れるような大き目のマスクをし、伸ばした髪を右側へ流して顔の大部分を隠していた。


 それでも尚周囲の人々はワタシに好奇の視線を向ける。

 ワタシには、それが耐えられなかった。

 ワタシは人の視線を避けるように外出を控えるようになった。




 あれは、彼と喧嘩別れした日のことだ。

 彼の浮気が発覚し、ワタシは彼に詰め寄った。

 今となっては記憶から綺麗さっぱり抜け落ちてしまっているのだが、あまりにも思いつめてしまっていたその時のワタシは果物ナイフを片手に握りしめていたという。


 身の危険を感じた彼がワタシの手からナイフをもぎ取ろうとした時、揉み合いになって結果ワタシの顔を切り裂いてしまったらしい。

 加害者として警察署に連行された彼は、うわごとのように「俺たちの間に動物が通った」「その後に彼女を見たら怪我をしていた」という供述をしたと聞いた。


 予想もしなかった出来事に、彼も混乱していたのだろう。


 こうして、ワタシは生涯残る彼との思い出を文字通り刻み付けることとなってしまったのだった。

 お見舞いにやってきた彼は何度も頭を下げ、ワタシも彼を赦した。


 けれど、ワタシたちの仲が元通りになることは決してなかった。




 あの日からもう四年。早く新しい男性ヒトを見つけたかったけれど、声を掛けてくれる男性ヒトなどほとんどいない。

 加えて、ワタシは外出を忌避するようになっていた。必要最低限の外出しかしないワタシには、出会いのタイミングがひときわ少ない。

 運よく声を掛けてくれる人に出会ったとしても、マスクを外した姿を見れば誰もがその場を立ち去った。


 あからさまに恐怖の色をにじませる人もいたし、やんわりと理由をつけて立ち去る人もいた。

 反応は様々だったけれど、その中にワタシを受け入れてくれるヒトは一人も居なかった。


 そして、いつの間にやらワタシは『平成の口裂け女』という蔑称で都市伝説的な噂を流されるようになっていた。

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