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十刻ノ月  作者: 牧田紗矢乃
参ノ日
28/50

第捌刻 〈結婚指輪を探して〉

 床に落ちていたものを拾い上げると、それは指輪だった。

 しかし、そのデザインに見覚えはない。しかも、それは一般に結婚指輪と呼ばれるばずのもので、なぜこんなものがワタシの家にあるのかが分からなかった。


 ――彼の落し物か?


 その可能性も一度は考えた。しかし、婚約指輪ならまだしも結婚指輪を落とすなんて……。彼が既婚者である以外にはありえないことだ。

 だが、残念ながら彼はまだ十代で結婚などしているはずもない。プロポーズ用の婚約指輪と間違えて買ったのかとも考えたが、それならば店員が教えてくれるはずだ。

 どう考えても辻褄が合わないそれを、ワタシは小さな小箱の中に押し込んだ。




 私が生まれ変わってから三年の月日が流れた。

 若い体を手に入れた私は、再び勉強をして大学へも合格した。前の体の時は学資がなく、大学への進学なんて考えもしなかったけれど、こうして数年間社会人をやっていた時間のある私にはバイトをしながらであれば大学へ通うことができる程度の貯金がある。

 それを利用して毎日を楽しく、忙しく過ごしていた。


 しかし、バイトの掛け持ちと課題という組み合わせは多大な疲労感を私に与える。気がつけば私は睡魔に引きずられ、眠りに落ちていた。




 その後、私は身の毛もよだつような経験を一度にした。突然砂嵐を映し出すテレビに、奇妙な嗤い声。突如として背後に迫った謎の人物に、バットで殴られもした。


「けひひ」


 すぐ真後ろで聞こえた嗤い声に、ふと記憶が呼び覚まされた。

 この嗤い方、どこかで聞いたことがある。


 ――あれは……、彼が連れて行ってくれたお化け屋敷?

 そういえば、そこでナニかをこの身に受け入れた。そのおかげでこの顔を手に入れたのだ。

 その時のナニかは「けひひ」と嗤っていなかっただろうか。


 懐かしさを覚えると同時に、違和感も浮かぶ。


 ――あの時、確かにソレは私の中にいたはずだ。それがどうして今更こうして私を襲うのだろう。

 もしかして、契約切れ……?


 契約などした覚えもなかったけれど、そうとしか考えようがなかった。


 ああ……、これで終わりなんだ。私の人生、短かったね――。

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