表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十刻ノ月  作者: 牧田紗矢乃
参ノ日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/50

第弐刻 〈一緒に遊んだ結末〉

 何者かの声に従って瞳を閉ざしてから、どれほどの時間が流れただろう。

 そろそろいいのではと思ってゆっくりと目を開くと、そこは見慣れた近所の公園のベンチの上だった。

 突然変化した景色に、理解が追いつかない。


 ――これは、どういうことだろう? いわゆる瞬間移動という奴を実体験したのだろうか。


 ワタシは困惑しながら口元に手を当てる。すると、大切なものがない事に気づいた。


「マスクっ……」


 あの、学校を模したアトラクション施設に落としてきてしまったらしい。

 どうしよう……あれがないと家までの間ワタシの素顔が晒されることになってしまう。

 そんな肝心な時に限って、彼の姿はどこにも見当たらなかった。でも、悪戯好きな彼のことだ。もしかしたら近くの茂みに隠れていて、ワタシが困る様子をにやつきながら眺めているのかも知れない。

 呼んでも姿を見せないであろう事は想像がついたので、ワタシは俯きながら足早に公園を出る。

 ここから家まではそう遠くない。精々歩いて五分程度の距離。人に会うことだって、そんなに滅多にあることでは……。


 安心しかけていたワタシの正面から、二つの人影が近付いてくる。まだ若い、高校生くらいの男二人だ。ワタシは極力目を合わせないように気をつけてそっぽを向きながら通り過ぎようとした。


「おい」


 すれ違いざま、一方が声をかけてきた。私は内心毒づきながら背中越しに返事をする。


「何?」

「ガキはさっさと帰んな。こんな時間までうろついてっと、補導されんぞ」


 冷やかすようなその口調に、むっとしてワタシは振り向いた。


「おっ、美人」


 途端に先ほどとは違うほうの男が歓声を上げる。

 それも何かの厭味かと訝しんだが、少年たちの表情は偽りとも思えなかった。


「あの……、失礼します」


 どうあしらっていいやら分からなかった私は、目を伏せて再び歩き出した。


「ケッ、フられてやんの」


 少年が茶化す声が聞こえる。まさか、あれでナンパのつもりだったのだろうか?

 妙なこともあるものだと思いながら、通りの角を曲がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援よろしくお願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ