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十刻ノ月  作者: 牧田紗矢乃
弐ノ日

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13/50

第参刻 〈電車の中に居る夢〉





 タタン、タタンと音が鳴り、小気味いいリズムが体を揺する。

 どのくらい揺られてきたのだろう。もうそれも分からないほどに時間が経った。


 自分がどこにいるかも分からない。


 誰も坐っていない向かいの席の窓から差し込む西日だけが、現在のおおよその時刻を教えてくれていた。

 目を瞑っても、薄いまぶたを通して夕陽が感じられる。


 電車の中は嫌に静かだった。

 タタン、タタンというレールと車輪が奏でる音以外、何も聞こえない。

 子供の泣き声も、疲れたサラリーマンのいびきも何も。時が止まったような静けさだった。

 なぜだろう、この電車には自分以外は誰も乗っていないのに違和感がない。


 ……ああ、そうか。おれは皆と逝き先が違うんだっけ。

 おれは独り。いつまでも。

 誰か、おれと一緒に来てくれる奴はいないのかな。

 ……いるわけがないか。


 何時間も前から色が変わらないように思われる空を見つめ、静かにため息をついた。

 夕陽の色に染め上げられた自分は、血にまみれているようだった。車内も真っ赤。


 凄惨だな。


 軽く笑おうとしたが、笑い方が思い出せなかった。


 この電車には、車掌は愚か運転手だって乗っていないことだろう。


 それでも電車は進む。

 電気が供給され続ける限り。


 ああ、おれは独りきりか。

 寂しいもんだな、独りってのは。


 ぼやいてみても、聞いてくれる相手がいなければ虚しいだけだった。

 わかってはいても、相も変わらずに真っ赤な光を投げかけてくる夕陽に、語りかけてしまう。


 おれは独りなんだよ。お前はどうだ?


 ……そうか。



 おれは、ひとりだ――。

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