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赤い王国と青い王国

幼児向けの絵本を意識して書き上げました。一応、幼児むけということにしてありますが、話しが短いため、大人でもサラッと読むのにいいのではないかと思います。

 あるところに赤い王国というところがありました。ここでは誰もが当たり前のよう

に、全身真っ赤な服を着ています。そのことに誰も疑問を持ちません。それが当た

り前だと思っているからです。

 そして、少し前に赤い国で六歳の誕生日を迎えた少年、オニールも真っ赤な服で

全身を覆い、頭にも赤い帽子をかぶってお城に向かって歩いていました。

 すると前からは知り合いのぺディおばさんが歩いて来ます。

「やあやあ、オニールじゃないか。今日はお城に用事かい?」

「うん。王様が僕に頼みたいことがあるんだって」

「そうかい。それは名誉なことだね。気をつけて行くんだよ」

 そうしてオニールは、手を振ってぺディおばさんと別れました。

 しばらく歩いてお城が見えてくると、門の前に二人の門番が槍を持って立っています。

その門番二人の鎧も、真っ赤でピカピカ光っていました。 

 門番がオニールに気づいて話しかけます。

「何だい君は?」

「僕は王様に呼ばれて来たんだよ」

「ああ君がオニールか。どうぞ。王様が待っているよ」

 オニールはお城に入るとまっすぐに王様のところに向かいました。

 王様は太った人で、オニールが部屋に入ってくると、とても喜びました。

「よく来たねオニール。ええと……前に会ったのはいつだったかな?」

「一年前の大雪の日に、村の人がみんなお城に泊まらせてもらったときに会いました」

「そうだったな。相変わらず元気なようで安心したよ。ところで今日の用事だが」

 王様が合図をすると、王様の隣にいる大臣から、オニールに風呂敷包みが渡されました。

「中を見てみたまえオニール」

 大臣の声に頷くと、オニールは中を見ました。

「僕たちの国の服?王様、これがどうかしたんですか?」

「噂に聞いたんだが、この国から山を二つ越えて川を三つ渡ったところに、青い国と呼ば

れるところがあるそうなんだ」

「青い国?」

「そう。そこではみんな青い服を着ているそうだ」

「嘘だー。服は赤に決まってるんだ」

「わしだって信じられんよ。だから君に確かめてきてもらいたいんだ。そして青い国の王

様に会ったら、我が国自慢の赤い服をプレゼントしてきてほしい」

「僕は青い国なんてないと思うけどな。でも青い服しか着れない人たちがいるんなら、そ

れはとても可愛そうなことだね。ちゃんと赤い服を着させてあげないと」

 オニールは風呂敷包みを持ち、さっそく青い国を目指して旅立ちました。今の赤い国は、

麦の刈り入れ時期で、大人たちはとても忙しいのです。だから子どものオニールにしかこ

の仕事は任せられません。

 オニールは一つ目の山にさしかかったとき、ポポルの花が咲いていることに気付きまし

た。このポポルの花は赤い国で服を染めるのに使われています。

「そうだ。これを持っていって育てれば、青い国の人たちも赤い服を着ることができるぞ」

 そうしてオニールはポポルの花を何本か手に取りました。そしてまたどんどんと青い国

に向かって歩きだします。そしてついに青い国に着いたのでした。

「ここが青い国か。あれえ?本当に門番が青い服を着ているぞ」

「オニールが驚いていると門番もオニールに気付きました」

「何だいきみは?そんな赤い変な服を着て」

「何いってんだい。そっちの青い服のほうがよっぽど変じゃないか。僕は赤い国の王様

から役目を預かってきたんだ。青い国の王様に会わせてくれよう」

「門番たちは驚きながらもオニールを王様のところに案内しました」

 王様の部屋には、赤い国とは反対に、とてもやせた王様がいました。服はもちろん真

っ青です。

 オニールが部屋に入ると、その王様はとても驚いて言いました。

「何だ?その悪趣味な赤い服は?」

 驚く王様に、隣の大臣が説明します。

「赤い国というところから来たそうです」

「なんと、赤い国にはそんな服しかないのか?」

 オニールは自分の国の服がバカにされて、少しムッとしました。

「それはこっちのセリフだい。赤い国では青色の服なんて誰も着ていないよ。それに僕が

青い国に来たのは、赤い服をプレゼントするためなんだ」

「なに?赤い服を我々に?残念だがそんな派手な色の服は着る気にならんな」

 オニールの渡した赤い服を、青い国の王様はあまり喜びませんでした。

「せっかくここまで持ってきたんだから、貰うだけでも貰っておくれよ。それに、ここに

来るときにポポルの花っていう、服を赤く染めるときに使う花を摘んだんだ。これも置い

ていくよ」

「ふーむ、貰うだけでは私もいい気がしないな。私の方でも青い服を染めるときに使うザ

ボイのブドウを持たせてあげよう」

 オニールはザボイのブドウを貰うと、さっさとお城を出ました。こんなところ、早く出

て行きたかったのです。

 しかし帰りに城下町を歩いていたオニールは考えかたが次第に変わっていきました。周

りの人たちがみんな青い服を着ているのを見て、自分たちの赤い国の方がおかしいのでは

ないかと思えてきたのです。オニールは赤い国に帰ったら、みんなに青い服の素晴らしさ

を伝えようと決めました。

 赤い国に帰ったオニールは、早速、青い服の素晴らしさを赤い国の王様に熱心に話すと、

赤い国の王様もそれを信じて言いました。

「そうか。それでは明日の朝から早速そのブドウで赤い服を青く染めてしまおうか」

「うん、それがいいよ」

 オニールは大喜びし、赤の国ではみんなが服を青く染めることにしたと、青の国に伝えに

行くことにしました。

 しかし、ここでオニールには信じられないことが起こっていました。なんと、青の国では

みんなが赤い服を着ていたのです。

 オニールは急いで青い国の王様のところに行きました。

「やあオニール。君の言うとおりだった。服は赤い方がきれいでよい。民もみんな新しい

赤い服を気に入っておるぞ」

 赤い服を着ている青い国の王様を見て、オニールはもう何が正しいのかわからなくなっ

てしまいました。そして落ちこんでいるオニールに向かって、青い国の王様が言いました。

「せっかく赤い服も着たことだし、我々も一度、赤い国を見てみたいんだが、招待してく

れんかね?」

「わかったよ。でもがっかりしないでよね」

 オニールと青い国の王様たちは、すぐに赤い国に向かいました。しかし赤い国に到着し

たオニールと青の国の人たちはびっくりしました。みんなが青い服を着ていたからではあ

りません。きれいだった赤い国の人たちの服が、みんな紫色になっていたからです。

 王様までもが、服が紫になっています。

「見てくれオニール。赤い服を青く染めようと思ったら、このとおり紫になってしまった

んだ」

 村人たちは大慌てをしています。新しい服を用意して赤く染めた青い国の人たちにたい

して、赤い国の人たちは、着ていた赤い服をそのまま青く染めようとしたので、色が混ざ

って紫になってしまったのです。

「でもすごくきれいだよ」

 オニールの言葉に、周りのの人たちも次第に落ち着きを取り戻し始めました。それを見

た青い国の王様が一つの提案をします。

「どうだろうオニール?このさいみんながみんな自分の服を好きな色に染めてみては?」

「好きな色を?それはいい、やってみようよ」

 次の日の朝、オニールが家の外に出てみると、みんなが色とりどりの服を着て楽しそう

に踊っています。そういうオニールも、緑の帽子に赤のスカーフ、青の服に黄色いクツを

はいています。

「みんなきれいな服を着ているね。僕もいれてよ」

 そうしてオニールも輪の中に入って踊りを楽しみました。すると赤と青の二人の国の王

様がオニールのところにやってきて言いました。

「これから我が赤い国では、みんなには好きな色の服を好きなように着てもらうことにし

たよ」

「私の青い国でもそれは同じだ。こうなったのもみんなオニールくんが来てくれたおかげ

だ。ありがとう」

「僕は別に最初はそんなつもりじゃなかったんだ。でもそうなったのはすごくうれしいな。

僕もまだまだ着てみたい色の服がたくさんあるんだ」

 こうして二つの国の人たちは、これから自分の好きな色を選ぶようになりました。人と同

じなだけではなく、自分の好きな色を選ぶというのも大事なことのようです。


    

      終わり

読んでいただいて本当にありがとうございます。私なりの子どもたちへのメッセージを込めたつもりですが、いつのまにかそれは、自分自身へのメッセージになりつつあったのかもしれません。と……ここまでえらそうなことを書きましたが、ようするに「周囲にながされすぎないようにがんばろー」というぐらいの気持ちで、日々を過ごしたいなと思っている今日この頃です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 感想だけ。赤と青は発想がわかりやすくよかった。 ところで赤い国は赤ばかり。青は青ばかり。この点を細心の注意払ったらよかった。 「赤い色」‥生まれつき全盲の方に聞いてもらいたい。赤い色とは…
2007/05/18 16:02 ザトウイチ
[一言] 初めまして。 絵本のようにしているとあり、確かに可愛らしい感じだなと思いました。  オニールの青い国で出会った事は、視野を広げて成長していくので良いなと感じます。  周囲も関心を持ち変化して…
[一言] 赤色は情熱の色、青色は冷静の色。そういった色のイメージがあるので、それぞれの国に住む人の様子などが簡単に想像することが出来ました。赤の王様は太っていて、青の王様はやせているという設定も色のイ…
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