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アリシア・ヴェリタス【哲学リョナ小説第3弾】  作者: ギデオン・ヴァンツ@週刊コロッセオ記者
・●第9章:ヴェリタスの天秤3 楽園の崩壊

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第8話:If the world ends tomorrow

主題歌:バイオハザードV リトリビューション/明日世界が終わるなら

https://youtu.be/ptLlDsMiug8?si=SW36WRg9bQRUBucP

「――長官。本気ですか? この予算案は……」


財務局長が、震える手で書類を握りしめている。

そこに記されていたのは、国家予算の根幹を揺るがすほどの、桁外れの数字だった。


『教育予算、対前年比200%増』


『治安維持部隊の装備への投資、300%増』


『スラム地区解体および「希望の特区」建設費用、無制限』


狂気の沙汰だ。

だが、振り返ったアリシアの眼は、太陽のように熱く輝いていた。


「本気ですわ」


アリシアは、静かに、しかし断固として告げた。

その声には、かつて母や妹に頼っていた頃の甘えは微塵もない。


「わたくしは、復讐を誓いましたの」


「ふ、復讐……ですか?」


局長が息を呑む。

一体誰への復讐だというのか。

アリシアは微笑んだ。その美しさに、室内の空気が張り詰める。


「ええ。……『痛み』を野放しにする、この不完全な世界すべてへの復讐です」


彼女の復讐は、誰かを傷つけることではなかった。

かつて友を奪った「理不尽」を。

かつて自分を捨てた「貧困と無知」を。

そして、かつて自分を壊した「絶望」を。

この世界から根絶やしにする。

愛という名の黄金で、この灰色の世界を埋め尽くす。

それこそが、義憤の女神と化したアリシアが選んだ、最大にして最高の「復讐」だった。


「金貨の一枚も残さず使いなさい。未来への投資です。……もし足りなければ、わたくしの私財をすべて投げ打っても構いませんわ」


アリシアの「復讐」は、迅速かつ慈悲深く、そして苛烈に実行された。


まず、教育改革。

彼女は、単に学校を増やしただけではない。

「無菌室」を作ることを拒否したのだ。

かつてのエラーラの理論、「痛みから学ぶ」こと。

かつてのアリシアの願い、「傷つかない世界」。

相反する二つの理論。アリシアは孤独の中で、それを高次元で融合させた。


『痛みは、避けられない。だが、その痛みに押し潰されて「無意味な死」を迎えることだけは、断じて許さない』


新しい学校には、あらゆる「道」が用意された。

座学が苦手な子供には、最新鋭の工房が与えられた。「技術」という翼を。

集団行動が苦手な子供には、静寂なアトリエが与えられた。「芸術」という言葉を。

そして、有り余るエネルギーを持て余す子供には、道場が与えられた。「武道」という規律を。


「落ちこぼれなど、一人もいませんわ」


視察に訪れた職業訓練校で、アリシアは油まみれの生徒の手を握りしめて言った。

護衛はリウだけだ。かつてのようにナラティブが先陣を切って露払いをする必要はない。アリシア自身の放つ「王気」が、周囲を圧倒しているからだ。


「貴方がたが計算式を解けなくても、その手が生み出す歯車は世界を回します。……それは、わたくしにはできない、尊い魔法です」


アリシアは、すべての子供に「居場所」を与えた。

かつて自分が親に捨てられた時、欲しくてたまらなかった「肯定」。

それを、国中の子供たちに降り注いだ。

スラムの孤児も、貴族の三男坊も関係ない。

生きていること、それ自体が「希望」であると、制度と予算と、何より彼女自身の言葉で証明し続けた。


街は変わった。

道端でうずくまる者がいなくなった。

なぜなら、うずくまっていれば、すぐに「お節介な」行政サービスの手が伸びてきて、その才能を見抜き、適切な場所へと引っ張り上げてしまうからだ。

絶望している暇など与えない。

アリシアの愛は、人々を幸福へと引きずり上げていった。


だが、光が強くなれば、影に潜む者たちは焦りを覚える。

深夜の旧港湾地区。

再開発の手から逃れた廃倉庫に、凶悪な犯罪者集団が集まっていた。

彼らは武装し、アリシアの政策を嘲笑っていた。

だが。


「……おや。まだ、こんな所にゴミが残っていましたのね」


闇の中から、冷ややかな声が響いた。

倉庫の入り口に、二つの人影が立っている。

月光を背負い、純白のドレスの上に軍服風の外套を羽織ったアリシア。

そして、その傍らで巨大なスケッチブックと警棒を構えるリウ。


「なっ、長官!? なんでこんな所に……! 護衛は!?」


「女二人だ!やっちまえ!」


犯罪者たちが武器を構えて殺到する。

数十人の男たち対、非力なエルフと、ただの画家。

普通に考えれば、蹂躙されるのはアリシアたちだ。

だが、アリシアは一歩も引かなかった。

彼女は、扇子で口元を隠し、冷酷に目を細めた。


「リウ。……わたくしの『復讐』を手伝ってくださいますか?」


「御意。……貴女のキャンバスを汚す羽虫ども、一匹残らず掃除しますわ」


リウが跳んだ。

彼女は武術の達人ではない。ナラのような破壊力もない。

だが、彼女にはアリシアへの「愛」と、「観察眼」があった。

相手の重心、視線、筋肉の動き。それらを瞬時に読み取り、最小限の動きで攻撃をいなし、急所へ警棒を叩き込む。


「な、なんだこの女!?動きが読めねぇ!」


リウが舞うように敵を制圧していく間、アリシアは戦場の只中を、優雅に歩いていた。

襲いかかる刃を、リウが弾く。

飛来する魔法弾を、リウが防ぐ。

アリシアの髪一本、触れさせない。

やがて、立っているのはアリシアとリウ、そして犯罪組織のボスだけになった。


「ひ、ひぃぃぃ! 許してくれ! 俺が悪かった!」


ボスが腰を抜かして命乞いをする。

アリシアは、ボスの前に立ち、その目を見据えた。

かつてなら、ここで「可哀想に」と涙を流していただろう。

あるいは、ナラティブに任せて目を背けていただろう。

だが、今の彼女は違う。


「……更生の意志は、ありますか?」


「あ、あります! 何でもします! 二度としません!」


「口先だけの反省など、聞き飽きましたわ」


アリシアは冷たく言い放った。


「貴方がたには、『痛み』を知っていただきます」


「ひっ! 殺さないでくれ!」


「殺しはしません。……貴方がたには、これから死ぬ気で『生きる』という痛みを味わっていただきます」


アリシアが指を鳴らすと、倉庫の外から、再編された正規軍の部隊が突入してきた。

彼らは、アリシアの命令一下、犯罪者たちを拘束していく。


「貴方がたのその体力、暴力衝動。……すべて、国のインフラ整備と、災害救助活動に向けていただきます。危険な鉱山、荒れ狂う海、崩落現場。……そこで、人々のために汗を流し、筋肉が悲鳴を上げる『痛み』を知りなさい」


アリシアは、ボスの胸倉を掴み、至近距離で告げた。


「それが、わたくしの『教育』です。……楽に死ねるなどと思わないでくださいませ。貴方がたが、心から『生きていてよかった』と泣いて命に感謝するその日まで……わたくしは、希望を与え続けますわ」


「は、はいぃぃっ!」


悪を根絶やしにする。

だが、排除するのではない。

そのエネルギーを「善」へと捻じ曲げ、社会の血肉とする。

これは、かつてエラーラが唱えた「有効利用」という冷徹な論理と、ナラティブが体現した「力による解決」という現実的な手段を、アリシア自身の「絶対的な愛」で統率した、究極の支配だった。


「……片付きましたわね」


アリシアが扇子を閉じる。

リウが、乱れた髪を直しながら、誇らしげに微笑んだ。

アリシアは、リウの頬についた煤を、ハンカチで優しく拭った。

そこには、互いに背中を預け合う、自立したパートナーとしての信頼だけがあった。


・・・・・・・・・・


数ヶ月後。

王都は、黄金期を迎えていた。

犯罪発生率は激減し、失業率はゼロに近づいた。

かつてのスラム街は「希望区」と名を変え、芸術家や職人たちが集う活気ある街へと生まれ変わった。

ネスト総合病院の跡地にある丘の上。

アリシアとリウは、夕暮れの街を見下ろしていた。


「……綺麗ですわね」


アリシアが呟く。

眼下に広がる街の灯り。それは、一つ一つが誰かの「生活」であり、「希望」の光だ。

かつて、友人たちを失った時、世界は灰色に見えた。

親に捨てられたと知った時、世界は漆黒に見えた。

だが今、世界は黄金色に輝いている。


「わたくしは、勝てたのでしょうか。……あの、運命に」


「勝てましたわ!」


リウは断言した。


「貴女は、過去の痛みに負けなかった。エラーラさんの論理にも、ご両親の悪意にも、飲み込まれなかった。……それは、誰の真似でもない、貴女だけの強さです」


アリシアは、空を見上げた。

そこには、亡き友たちの顔が浮かんでいる気がした。

セラフィナ、ロザリンド、ライラ、カエリア。

彼女たちは笑っていた。

『よくやったわね、アリシア』と。


アリシアは、リウの方を向き、その首に腕を回した。

甘えるためではない。

愛を伝えるために。


「記憶を失っても、親に捨てられても……わたくしの魂は、貴女に出会うことを知っていたのかもしれません」


「……光栄ですわ。地獄の果てまで、お供しますと言ったでしょう?」


リウは、アリシアの腰を抱き寄せた。

獣人の高い体温と、エルフの冷たい体温が混ざり合う。

二人の影が、一つに重なる。


「地獄ではありませんわ」


アリシアは、リウの唇に触れる直前、悪戯っぽく囁いた。


「わたくしたちがいる場所は、いつだって……『天国』に変えてみせますもの」


・・・・・・・・・・


王都の中心、王城「白亜の宮殿」。

その大広間は、歴史的な緊張と、張り詰めた静寂に包まれていた。

天井まで届くステンドグラスからは、七色の光が降り注ぎ、深紅の絨毯が敷かれた回廊を神々しく照らし出している。

今日は、王国の歴史において、特別な儀式の日であった。

『世界を救った大魔導師』への叙勲式。

それは、単なる名誉称号ではない。

王家直々に授与される「始原の星」の紋章。

この紋章を持つ者は、王と同等の権限を有し、王国のあらゆる法律を無効化できるという、絶対的な特権を与えられる。それは、法を超越した「守護者」としての証明であり、実質的な「生ける神」としての認定でもあった。

回廊の最奥。玉座の前に、二人の女性が並び立っていた。

一人は、エラーラ・ヴェリタス。

もう一人は、アリシア・ヴェリタス。

かつて母と娘であり、師と弟子であり、そして今は――相容れぬ二つの「正義」を背負う、他人同士。


「……まさか、魔法一つ使えぬ君が、私の隣に立つ日が来るとはな……」


式典の開始前、小声で囁かれたエラーラの言葉に、アリシアは眉一つ動かさなかった。

純白のドレスに、国防教育省長官の正装である金のケープを纏ったアリシアは、ただ前だけを見据えている。その横顔は、大理石の彫像のように冷たく、美しい。

エラーラは、その沈黙を「緊張」と捉えたのか、あるいは娘の成長への「畏敬」と捉えたのか、口元に不敵な笑みを浮かべていた。


エラーラ・ヴェリタス。

彼女は、紛れもなく「最強」だった。

過去数年にわたり、この世界を脅かしたあらゆる脅威――古代の魔獣、異界の侵略者、狂気の奇術師、さらには外宇宙の機械生命体に至るまで――そのすべてを、彼女は「魔法」でねじ伏せてきた。

彼女の救済は、常に「破壊」と共にあった。

敵を消滅させ、脅威を粉砕し、力で平和を維持する。

それが、エラーラの正義であり、彼女がすでにこの「紋章」を所持している理由だった。


対するアリシアは、真逆だった。

彼女は、剣も杖も持たない。

だが、彼女はこの数年で、かつて「犯罪都市」「貧困の巣窟」と呼ばれた王都の暗部を、根底から消滅させた。

敵を殺すのではなく、敵が生まれる土壌を、「教育」と「愛」という名のシステムで浄化したのだ。

彼女の言葉は、どんな魔法よりも深く人々の心に届き、彼女の施策は、どんな防御結界よりも強固に弱者を守った。

魔力はない。だが、その結果は、紛れもなく「世界を変えた魔法」そのものだった。


「……時間だ」


ファンファーレが鳴り響く。

国王が、恭しく二つの「紋章」を掲げた。一つはすでにエラーラの胸に輝いているものと同じ。もう一つが、今、アリシアに与えられるものだ。


「――アリシア・ヴェリタスよ」


国王の声が広間に響く。


「其の方は、魔力なき身でありながら、愛と知性をもって国を癒やし、人の心を救った。その功績は、伝説の大魔導師にも劣らぬ奇跡である。よってここに、王家の紋章を授け、その魂を讃える」


アリシアは、優雅に膝をつき、頭を垂れた。

国王の手によって、彼女の金のケープに「始原の星」の紋章が留められる。

その瞬間、会場を埋め尽くした貴族、軍人、そして各国の来賓から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。

それは、心からの敬意と感謝の拍手だった。


式典が終わり、二人は退場の途についた。

長い回廊を、二人の「超越者」が並んで歩く。

エラーラは、隣を歩くアリシアを、横目でちらりと見た。

その表情は、隠しきれない得意満面なものだった。鼻高々、という言葉がこれほど似合う顔もないだろう。

エラーラは、心の中で喝采を叫んでいた。

彼女の論理は正しかったのだ。

あの日、親友を失い壊れた少女の記憶を消し、あえて突き放し、痛みという試練を与えた。

その結果がこれだ。


(痛みは、人を進化させる。……私の教育は、間違っていなかった)


エラーラは確信していた。

アリシアも、今なら理解しているはずだ、と。

あの時の記憶消去も、両親の真実を隠していたことも、すべては彼女をこの「最強」の座へと導くための、必要悪だったのだと。

だからこそ、今ここで、二人は「対等な存在」として、初めて分かり合えるはずだと。

……だがそれこそが、アリシアが最も嫌悪する、生存者の『驕り』であった。

エラーラは、歩調を緩め、アリシアに声をかけようとした。


「……アリシア!」


その声は、珍しく優しく、そして誇らしげだった。


「見事だ!……君は、私の想像を超えた!君は私の自慢の……」


「娘だ」と言おうとした。

だが。

アリシアのヒールの音は、一瞬たりとも乱れなかった。

歩調も、呼吸も、視線も。

何一つ、変わらなかった。

彼女は、エラーラの声が聞こえなかったかのように――いや、存在しないかのように、真っ直ぐ前だけを見据えて、通り過ぎていったのだ。


「え……!?」


エラーラの足が止まる。

彼女は、通り過ぎていくアリシアの背中を、呆然と見つめた。

無視。

それも、怒りや憎しみを含んだ無視ではない。

道端の石ころや、壁の染みに対するのと同レベルの、完全なる「無関心」。

絶対的な、断絶。


「ア……アリシア君?」


エラーラは、思わずもう一度名を呼んだ。

世界を救った大魔導師の声が、情けなく震えた。

だが、アリシアは振り返らない。

彼女の視線の先には、回廊の出口で待つ、一人の人物だけが映っていた。

金髪の狐耳を持ち、大きなスケッチブックを抱えた、リウ・ヴァンクロフト。

アリシアがリウの姿を認めた瞬間、その冷たい表情が、春の陽射しのように溶け、心からの笑顔が咲いた。


「リウ!」


アリシアは、小走りにリウの元へ駆け寄った。

先ほどエラーラに見せた冷徹さが嘘のように、甘く、愛おしげな声。


「お待たせしましたわ。……退屈しませんでした?」


「いいえ、マイ・レディ。貴女の晴れ姿、この目に焼き付けましてよ。……ああ、その紋章、世界で一番お似合いですわ!」


リウが、恭しく、しかし親愛を込めてアリシアの手を取る。

アリシアは、リウにだけ見せる情熱的な瞳で、彼女を見つめ返した。


「行きましょう。……早く、家に帰って、お茶にしましょう。今日は貴女の好きなスコーンを焼きますわ!」


「ふふ、楽しみですわ。……あちらの方は、よろしいのですか?」


リウが、視線だけで後方のエラーラを指す。

アリシアは、振り返る素振りすら見せなかった。


「……あちらの方?何のことですの?」


アリシアは、不思議そうに小首をかしげた。


「ここには、わたくしと貴女、そして……これから守るべき愛すべき民衆『しか』いませんわ」


「……!」


遠くで聞いていたエラーラの胸に、言葉の刃が突き刺さった。

「存在価値の抹消」だ。

アリシア・ヴェリタスにとって、エラーラ・ヴェリタスという人間は、もはや「視界に入れる価値もない過去の遺物」へと格下げされたのだ。


「……そ、そんな……」


エラーラは、その場に立ち尽くした。

なぜ、無視なのか。

なぜ、あの瞳には、自分という存在が、もう、映っていないのか。

アリシアとリウは、腕を組み、楽しげに会話を交わしながら、光の中へと消えていく。

その背中は、あまりにも眩しく、そして遠かった。


「……計算が……合わない……」


エラーラは、誰もいなくなった回廊で、一人呟いた。

胸に輝く「始原の星」の紋章が、今はひどく重く、冷たく感じられた。

最強の魔力を持っても、時を戻せても、決して埋めることのできない「心の距離」が、そこにはあった。


宮殿を出る魔導車の中で、リウは静かに尋ねた。


「……本当によろしかったのですか?……あの方は、泣きそうな顔をしていましたわよ」


アリシアは、窓の外を流れる王都の景色を見つめながら、静かに答えた。


「あの方?……いったい、誰のことですか?……リウ。……この世には、二つの『救済』があります」


「二つ?」


「ええ。一つは、『破壊による救済』。……それは、劇薬です。必要な時もあるでしょう。ですが、日常には不要なものです」


アリシアは、胸の紋章に手を当てた。


「もう一つは、わたくしの『愛による救済』。ゼロをプラスに変え、誰も傷つかないシステムを作る力。……これからの平和な時代に必要なのは、こちらです」


アリシアは、リウの方を向き、寂しげに、しかし決然と微笑んだ。


「二つの太陽は、同じ空には並べません。……破壊の時代は終わりました」


それは、新時代の統治者からの、残酷なまでの「引導」だった。


「それに……」


アリシアは、リウの肩に頭を預けた。


「わたくしは、過去の亡霊を見ている暇など、一秒もありませんわ」


「……ふふ。罪な女王様ですこと」


リウは、アリシアの髪に口づけを落とした。

二つの「最強」が並び立った日。

それは、ヴェリタス家の完全なる断絶の日であり、同時に、王都が真の意味で「黄金の時代」へと足を踏み入れた始まりの日でもあった。

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