分岐編
このあと分岐します。
今日は学校に来た時点から何かが違っていた。
校舎の雰囲気、がいつもの様にひっそりとしていない。
どこか、ざわついている雰囲気、と言うか。
人影を見たわけではないけど…誰か、俺達以外にも登校してきている人がいるらしい。
珍しいこっちゃ。
まぁ、あの、あの! あの!! 武者小路バカと二人きり!!! と言う状況を脱した、と言うだけでもよしとしておこうか…。はぁ……。
「無許可で歩行を停止されると、少々逡巡を感じます。何ですか? 排泄行為ですか?」
「道ばたでするのか。俺は」
マーキングするのか。俺は。しかし…、
「その前にな……この腰縄を解け!」
「家の前からな! 紐付きで連行されるって! どういう事よ?!」
「近所のおばはんがビックリして見てたぞ!」
「次回の逃亡後は、手錠の着用に踏み切らせていただきます」
「そのものか! 俺は! そのものとして扱うのか!!」
「ご安心ください。テレビカメラが来たらジャンバーで隠す予定です」
こねぇよ。こられてたまるか。
「さぁ! きりきりと。きりきりとっ!!」
紐の端をぎっちりと握りしめた武者小路に引き立てられ、連行される俺。
あぅぅぅぅ………。
収監の時間は迫ってきていた。
あああ。
早く仮釈放の身となりたい…。
これから…つらいつらい懲役の時間が始まろうとしていた…ううっ。
姿は見てないけど。
校舎のどこかではしゃぐ様な甲高い声が聞こえる。
…ありゃ、女の子だ。紛れもなく。
あああ。
そっちに行きてぇなぁぁぁぁ。
バカ天才と顔つきあわせる補習なんかじゃなくて…。
出会いが必要だよ。やっぱしぃ。
うん。
腰縄付けられて、強制連行なんかされてないでさぁ…。
違った形の青春が…ほすい……………。
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(あ…やっぱり、いたんだ)
女の子はスカートのポケットに手を入れ、どれにしようかと悩んでいた。
「う~~~んとぉ~~~」
俺は少し後ろで順番を待っていた。
頭の中で決まったのか、スカートからずぽ、と手を抜く。
握りしめた掌が開くと、そこには剥き出しの小銭が。
…豪快だな。男と変わんねぇ。
何というか…小銭入れとか、ポーチとか、何かそんなちまちましたもの持ち歩くのが女の子、と言う感じがしていたんだけど。
一方的にそう、思いこんでいたのかな。
俺もポケットの中の小銭を握りしめ、取り出そうとした…。
「あっ…!」
女の子の声と俺の声がハモった。
床に響くちゃり~んという小銭の跳ねる音。
そして、転がっている五百円玉…と十円玉。
つい反射的に、五百円玉を拾おうとした俺と彼女の指先が…ぶつかりそうになった。
「あっ…!」
え…俺んだよな…?
「すいません。私のです。その五百円玉」
「え…?」
掌の中の小銭を数える。確かに!五百円足りない!………様な気がする。
よく憶えてはいないが。
「返してください」
やたらきっぱりと言い切るその女の子は、俺の指先につままれた五百円玉をすい、とつまみ取った。
その仕草が、かちん、ときた。
「君のって…名前書いたるわけじゃねぇだろ?」
「でも、私のです。だってほら。五百円足りないもん」
彼女は手を広げ、小銭を見せてきた。
なるほど、ふんふん。五百円…………足りないかどうか、どうして俺に判るというのか?!
「判るわきゃねぇだろっ!」
「でもそうなんですっ! アナタが落としたのは十円玉。はい」
当然の如く、その茶色の硬貨を渡してくる。
ちょっと待て。四百九十円は小遣い不足に苦しむ高校生には貴重だぞ。
「いや、俺が落としたのが五百円だから」
「私です!」
「俺俺。おれおれ」
「おれおれ詐欺ってこの事?」
「違います」
「だって詐欺じゃない!」
誰とも知らぬ女の子が、びしっ、と指さしてくる!
むかつく。かっわっいっくっねぇぇぇぇ!
詐欺師呼ばわりかい。
どちらも証明は出来ないのは判ってる。それだけに、どう解決つけていいのか思いつかないのがまたむかつく。
とにかく!
引き下がれるかぁ!!
「正直に言え! 素直になれよ! 十円だったんだろ?! なぁ?!」
「ずうずうしーい!! アンタこそ素直になりなさいよ! 私から五百十円も巻き上げる気?! 犯罪よ! それ!」
「なんで五百十円なんだよ! 十円がアンタんだ、と言ってんだよ! はい! 十円!!これで解決だな! ああよかったぁ!!」
「なんでよっ! 良くないでしょ! この犯罪者! 泥棒! 詐欺師! 鬼畜っ!」
き、鬼畜までいくかこの野郎ぉぉ…。
「でぇ…なに買うか決まったぁ~~?」
「それを決めてるわけじゃなくって!!」
「わたし、おれんじじゅーす」
「誰だ?! この人の話を聞かないヤツはっ!」
「天文部の人でぇす」
この、場の空気を読む、と言う事を一切しない女の子はあくまでもどこか眠そうな声で語り続ける。
「乃々子ちゃ~ん。のどかわいた。じゃんけん勝ったのわたしだよぅ。早く買ってきてよう」
「お金取られちゃったからダメっ!」
「取ってねェだろ!!」
「あぁ~不良さんですかぁ~。初めまして」
……………………………。
いや…頭下げられてもな…。
「天文部…部活か?今日は」
「そうでぇす…ぐふふ」
ぐふふって…何故笑う。ここで。
何故その気味の悪い笑い…?
何故、そんなねぶたいしゃべり…?
総てが謎に包まれた女はその、乃々子と呼ばれた、こにくたらしい女の子の腕に縋り、じゅーす、じゅーすと繰り返している。
小学生か。お前は。
「だってお金ないもん! おれおれ詐欺に引っかかりそうなのよっ!」
「違う!! 二つの意味で間違っている!!」
「じゃ、アナタでもいいです。はい」
「何だ、その手は?」
「じゃんけんの勝者はじゅーすを手にする権利があるのです。だから。はい」
また…また…理屈がこんがらがるような事を……。
「とにかく!」
俺の手の中からすっと、二つの硬貨が消える。
「これは私のです! アナタのものだって証明出来ないんだから! 私のもの、と言う事になるでしょ!」
え………えっと……そうか?……いや! 違っている!
「そんな強引な理屈聞いた事ねぇ!」
「返せよ!」
手を伸ばし、むしり取り返してやるつもりだった。
だった。
そうなるはず…なのに。
俺の身体は不意に浮き上がり…気が付くと天井が足下に見えた。
え……?
んぐぉがはぁぁぁっっっっ!!!
俺は廊下の床に叩きつけられていた。
「………ぐぉはっっ……」
…背中から落ちた……ぐふっ…い、息が出来ねぇ………なんだ、何が起こった???
「最後は暴力に訴えるってわけ?! さいてぇ!! さすが詐欺師!! 人間として最低ねっっっ!! 暴力なんて下劣極まりないわぁっ!!」
今、お前が振るったのは…ぐへっ……暴力じゃないってぇのか?
し、死にそう。
「当然の天罰! これに懲りたら詐欺はもう止めなさいっ! 判ったわね!!」
「まあまあ」
何故、お前が止めに入る…? と言うつもりだったが…まだ声が出ねぇぇ。
ぜひゅー、ぜひゅーと、止まる寸前の呼吸をかろうじて繰り返してる俺にその眠たいしゃべりの女の子が話しかけてきた。
「初めましてぇ。二年、天文部副部長の西木真智子ですぅ」
女の子が深々と頭を下げてくる。
このシチュエーションが、互いに自己紹介するのに相応しいのかどうなのか。
俺にはもう…判らなくなっていた……。
「は、初めまして…ぜひゅー…二年の秋元有馬っす…ぜひゅー…いつも元気な高校二年生ぃぃぃ…ぜひゅー」
「それにしてもぉ…乃々子ちゃんにかなうわけないでしょお。あほですねぇ。乃々子ちゃん家は合気道一家なんですからぁ。ファミリー合気道なんですよぉ」
なんじゃそれ…?
「お父さんが師範で、お兄さんが師範代、ってぇ、なかよし家族なんですからぁ」
「…おおむね…話はわかった……ぜひゅー…ぜひゅー」
乃々子とやらは、少し離れた所に立って憎々しげな目でこちらを見ている。
「しかし…」
心に思う事が素直に口に出る、近所で評判の正直者、つまり俺は、その女の子を一言で表した。
「かっわいくねぇぇぇ…ぜひゅー」
「ぐふふふぅ…あれでも可愛くさせる方法があるのよぉ」
眠そうな語り口調は、何故か俺の意識を薄れさす。
頭を振って正気を取り戻すと、何とか起きあがり、真智子ちゃんとやらに向き直った。
「どうやって…ロボトミーか。前頭葉を切り取るか?」
「そんな手荒な方法じゃなくってぇ…」
真智子の目がきらん、と光る。
「催眠術ぅ~~~」
聞いてるこっちが眠くなりそうだった。
意識がすっと……すっと遠のいていくぅぅぅ。くらくら。
き、気をしっかり持て。俺。
「な…何なんだ。それは」
「ぐふふふぅ………趣味なんですぅ……」
「思うがままに人をあやつるって……ぐふふ…ものごっつ、すんばらしいと思いませんかぁ…?…」
危険だよ…危険すぎるよ。このおんな。
「そうよねぇぇ~。乃々子ちゃん」
「あによ」
真智子がその肩をいからせている乃々子とやらに言う。
「それじゃあカレシも出来ませんねぇぇ~」
「あうぅっっ!!」
クリティカルヒット! 乃々子が仰け反って苦しんでいる!
よし!! それだ! いけ!真智子ちゃん!!
「男兄弟に挟まって育ってきたからがさつだしぃぃぃ~」
「おうっっっっ!!」
いいぞ! 弱まっている!!
「なまじ腕が立つから、男の人が近づいてこないしぃぃぃ~」
「んくぅぅぅっっっ!!」
そこだ! そこを攻めるんだっ!
「口も達者でぇ~悪口三昧だしぃ~~」
「はぅぅっっっっ!!」
よし!! いいぞ! 追いつめているっ!!
するり、と乃々子に近ずいていった真智子がその耳元で囁く。
「そんな、大嫌いな自分にさよなら! そんな方法があるとしたらぁ~」
「どうするぅ?」
にやり。
何だ。この展開は。
話しかけられた方は顔を赤らめている。
にやにやとその顔を眺めている真智子。
「いいの! 私はこのままでっ!」
一声怒鳴ると、乃々子は走り去っていった。
呆然と眺める俺達二人。
「あぁぁ…!」
突然、真智子が気の抜けた大声を上げた。
「な、何?」
「じゅうすぅ…! 乃々子ちゃんじゅうす忘れてるぅ…」
ふらふらと乃々子の後を追う真智子。
それを見送る俺。
それにしても…。
気味の悪い人たちだ……。
嵐が去り、校舎内は静けさを取り戻した。
ふぅ、と安堵の息を吐き、当初の目的の為、自動販売機に向かった。
思い出した。
五百十円取られたままだ。
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追いかけた時にすでに二人の姿はなく、どこにも見あたらない…。
どうする…行くか…?
屋上に部室があるのは知っている。
しかし…あの扉は…。
昨日の不可解な出来事がまだ、頭の片隅に残っている。
多少ビビっているのも認めよう。やっぱわかんないものはコワい。
かといって…五百十円…う~~む…。
生活苦…の重い三文字が背中にのし掛かる。
いや、実際は結構な額の金を親父から預かってるから、さしあたって困るという事はないんだけどねぇ…。
ま、まあ、今日の所はいいか。また会う事もある…あまり会いたくない人たちだが…。
犬に噛まれたと思って諦めるというのも…一つの手か。
形容が少し違う様な気もするが。
とぼとぼと教室に戻っていく。
金を失い、自由を失い、これから辛い懲役の時間…くくっ。
結局ジュースを買っていない事に気付いたのは、自分の教室の扉に手をかけた瞬間だった。
どこまで俺は…。
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「多大な時間のロスがあった様に見受けられますが?」
「突発的アクシデント。その上、なんも買ってない。その上…くくっ…五百十円…」
「次回以後、この様な不手際の可能性が存在するのなら、文書にして三日前には提出してくだされば許可書を発行します」
「だせるか」
人の話を聞けよ。お願いだから。
「さもなくば腰縄付きで…」
「あぅぅぅぅ!!」
ああ。
ああああああ。
絶望って…きっとこんな瞑い色をしてるんだ…。
武者小路が着てる学生服の色の様な。
暗黒の時間が、その黒いベールを俺の目の前に落としていった…。
あぅぅ。
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本日、懲役十日目。
年内一杯“お勤め”があるって。
うわぁ。えりーとさらりーまんみた~い………って。
………虚しい。
「本日は自習。換言するならば自主的学習行動に従事していてください」
なんですと?!
「私は諸用あって、監視義務を一時的に放棄致します」
「監視だったのかよ」
「劣悪な学習効率の低下しか喚起しえない状況と、対象人物の無能さが相まって、効果的な学習活動はもとより不可と判断致しております。いやいや…」
「さらっとひでえ事言ってたような気がするが。気のせいか?」
「それでは…今から、拘束を解き、職務を放棄致します」
そういうと学生服の内側から白刃をすらりと引き抜いた。
…って?!
なげぇ!! なにそれ? なに? ドスですか?!
任侠ですか?
「家の小刀を拝借してきました」
やべぇって。そんな長いの。
「当方の予想外の行動を取られると武者小路傷害保険の被保険対象外となります」
どうして…そう言ういい方しかできねェかな…。アンタって人は。
本人ギャグのつもりでやってんのかな…もしかして。
はぁ……笑わなきゃいけないのか…俺……。
当たり前のようにその小刀で、武者小路は俺の腰縄をぶつり、と切断する。
切れ味もスゴそー。
物珍しげにしげしげと眺める俺に、武者小路は平然と言い放つ。
「当家では包丁も同種のものを使用しておりますが?」
「…」
メシ作ってんだか、出入りなんだか…。
往生したれやぁぁぁっっ!!とか言いながら……鰯とかさばいてんのか?
おまえんちのかーちゃん。
「放棄って…どっか行くのか?」
「以後、本日中の秋元氏の活動は…総て自由です。ふふふ」
にったり、と薄気味悪りぃ笑みを浮かべ、武者小路がこちらを見ている。
蛇に睨まれた方がなんぼかマシ。
まして目的が一緒なら。
「…つまりあれだ。ついてこいと」
「好奇心を押し殺すは愚の骨頂、と申しますな」
「…何企んでやがる……」
「同行を希望する、と正直に換言致しましょう」
「無論、自由行動を宣言した以上、強制は在りませんが」
このバカ天才がそう言い出す…って事は……。
二重三重の罠をすでに張り終えている、と言う事を意味している。
俺にだって学習機能はあるんだい。
勉学に向かないだけで。
ま…正直に認めよう。俺も興味はある。
このクソ真面目野郎が“放棄する”と言う言葉を使うぐらいだ。
理由があるはず。そして、その理由は…
おそらく、全科目白紙提出に絡んでいる…はず。
そう、俺のカンが囁いている。
「挑発されちゃ、後には引けねェな」
「ふふ…しからば、まいろうぞ。ご同輩」
「時代劇か」
武者小路はにやり、と笑みを残すと、すたすたと先に立って歩き始める。
俺達二人は、全く無人の校舎の中を歩き続けた。
ゴム底のひたひたと言う、どこか情けない音だけが、静謐な廊下に響いていた。
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武者小路バカ天才はこれで白紙提出したのか、この為に。
屋上の一隅にかけられていたビニールシートが武者小路の手によって剥ぎ取られた時、その理由は明確となった。
「何ですかぁ。これ?」
「俺に思いつくのは魔法陣とか呼ばれているアレしか…」
「他に想起出来るものが何も存在しないと…?」
と言われてもな…。
「いいのですね?! その解答で?!」
「…うっ」
俺は必死で記憶の中を探った!
巨大な丸が床に書いてあって、アヤシげな文字で彩られている。
真ん中にあるのは…三角形を二つ組み合わせた星マーク…だかなんだか。
そうだよな…やはりこれは、魔法陣、と呼ばれているアレにしか見えない…。
「それで正解です」
「早く言え!!」
某クイズ番組か。あの脂ぎった司会者みてぇな事すんな。
………お前…ああいうテレビも見るんだな…ちょっと不思議。
悪魔召喚の儀式だと?
その為に何ヶ月もかけて屋上に魔法陣を描いていたのか。
「何でこんなとこに?」
「厳密性を最大限に考慮した結果です。総ての呪をこの細密さで記述するにも直径三メーター二十八センチの真円を必要とし………」
「家でやれ!!」
「一般家庭において、これだけのスペースの確保は容易為らざるものが」
「陣の歪みを最小にする為にこのコンクリート面をサンディングし、扁平率0.03%を実現! 今ここに“魔”なるものならあらゆる種族を呼び出す事が可能!という万能魔法陣の完成を…」
「もういい」
好きにせい。
何でそんなもん。アヤシいヤツだとは知ってはいたけど。
「この為に…白紙提出したのか」
そのにったりとした笑顔、やめれ。
「召喚儀式は人目を憚る方が吉かと。ふふ」
「総て計算通り。ふふふふふ」
「って…事は、補習中の俺の代役教師の件も……?」
「…教師相手の心理操作は容易いモノでした。ふふふ。心中察するに御し易しと…」
まぁ…どうでも良いケドさぁぁぁぁ。
「何で俺がここにいなけりゃいけないわけ? 寒いから帰るぜ」
「補習期間中の出席簿は不肖、この私に一任されてます。私もヒトの子、つい、明日から記帳する事を失念する可能性も……いやいや…」
いやいやじゃねぇよ。
「簡単に言え! つまり明日から俺はずっとサボリにされるってぇ脅迫だろ?! そうだべ?!」
「ご賢察、誠に重畳」
くっそやろおぉぉぉぉ………………。
「そう言えば、質問に答えてないぞ。何で俺がここにいなきゃならないんだ?」
武者小路は相変わらず薄気味の悪い笑顔で俺を睨んでいる。
が、気付いた。
その目だけが少しマジになっていた。
「いずれ判ります。この召喚がうまくいけば…積年の自問に一つの結論が…」
「ん…?」
「まぁ…いいでしょう。ふふふ」
何だよ。言えよ。はっきりと。
頭の上に?マークを一杯並べている俺にかまわず、武者小路がなにか唱え始める。
これが“呪”というやつか…?
もうすでに暗記しているのか、固く目を閉じ、指を立てて握り、何かぶつぶつと言っている。
何も見ないであれだけしゃべれる、というだけで…ごいすー。
頭いい人は違うねぇぇぇぇ。
それは何語だかさっぱり判別がつかない“言葉”だった。
英語じゃないし…なんかわかんない発声はあるし…昔の日本語のような所も少しあったような気がしたが、そう聞こえた、と言うだけの事かもしれない。
とにかく…早く終わんないかな。
たいくつぅ。
「それでははりきって!どうぞぉ!!」
いきなり、バカ天才が叫んだ。
それ、なに。…なによ。それ? お笑いの司会者?
「なにをはりきれっていうのよぉっ!!」
え???
気がつくと。
魔法陣の真ん中に女の子座りしてる…女の子がいた。
普通さぁ…どどぉ~~ん!!とか、ぴかぁっっっ!!とか!
何かこうハデな一騒ぎがあって! どばばばぁぁぁんんん!!と現れるのが…。
なにこれ。
「地味だねぇ…」
「実質本位、と言うのです」
さいですか。
「連れてこられた方はハデも地味もないわよ!」
「そりゃそーだ」
しかし…これは、どうみても。う~ん。ふつーの女の子。
「眷属にもの申す」
何だ?…武者小路。
「智慧の森に住む者成りや? また、生命の樹に宿りし者成りや?」
「言いたい事は判るけど…どちらでもないわ」
ん?…ん?
女の子はすっと立ち上がると…武者小路に向き直り話し始める。
その姿からは…黒い影の様に何かが立ち上っている。
それを目にしただけで…俺はふがいなくも背筋に汗が伝うのを感じていた。
「我は眷属にあらず、真祖なり!」
その声には怒りがこもっていた。
不機嫌さを隠そうともせず、射る様な鋭い視線を武者小路に突き刺す。
「智の力のみ秀でたる者よ。強力無比を誇るのなら、そは滅の端となろう。心して返答せよ!」
武者小路は動じていない。いつもの…いつも以上の冷ややかな瞳でその女の子を見下した様に睨み付けている。
「ふっ……。失したと言う事か…。…不調法、誠に平伏す。巳が名は武者小路景光。以後、御別懇を」
「及ばず! 我を解け!」
その女の子のいらだちが…周りの空気を重くする様だ。
胸苦しいまでに、重々しく対立した雰囲気の中、俺は思いきって口を挟んだ。
「あのさぁ」
「…?」
「イマドキの言葉で話そう。うん。聞いてて疲れる」
「それもそうね」
女の子はあっさりとうなずいた。
「私は…日常会話そのままの語法ですが?」
「だから聞いてて疲れる!って言ってんだよ!!」
武者小路のばかが何か“印”を結ぶ、と言うのか何なのか、手を組み合わせてぼそっ、と呟くと、陣の上に覆い被さっていた重苦しい空気がぱぁっ、と晴れていく。
ふと、風に気付いた。
その時初めて。
今まで………屋上だってのに…風も止まっていたのか…。
恐るべし。武者小路。
何してたんだよ。わかんねぇぞ。まったく。
「“魔”ではないと?」
武者小路が女の子に問いかける。
なにやらそこにいるのが気味悪いのか、そそくさと魔法陣から出て来た女の子は憾みがましい目でバカ天才を見つめている。
「これで呼び出しておいて“魔”ではないって? 意外と間が抜けてるわね」
「道理では。しかし論理が不整合です」
「我は真祖。不死者。ノスフェラトゥと言えばおわかり?」
「なんと?!」
「元々召喚される存在ではない。が、この陣と術者は強力すぎた」
「…」
女の子は魔法陣の縁に書いてあるなんやうねうねした文字の一部を指さして言った。
「あなた…これ呪が違ってる…」
「なんと?!なんと?!」
「優等生にしては珍しいミスだなぁぁぁ。えええ? 武者小路景光く~ん」
すっげぇうれしい。ば~か。ば~か。
自らのミスを明らかにされ固まっている武者小路の周りをぐるぐる回りながら!
ここぞとばかりに!!
俺は! 力の限り! ヤツのココロの傷をえぐりたてる!!
「ミスぅ??? ミスですかぁ?? ド天才の名を欲しいままにするむ~しゃちゃんがあぁぁぁ?? 単なるか・き・ま・ち・が・いですかぁぁ??」
「…っ」
「いやぁっはぁ~。そ~言う事もあるんだねぃ。ひひひひひ」
「だめじゃぁぁん。むしゃちゃんったらぁぁ。女の子間違えて呼び出したりしちゃぁぁ。んん? なぁ? ねぇ? ねぇねぇ? どうよそのへん?」
「んく…っ…」
「むしゃちゃんじゃなくて、これからはむちゃちゃんですねぇぇ」
「む~ちゃちゃ~んっ」
「……ぐ」
いいぞ! 弱ってる! あの! あのっ! あの武者小路がっ!
俺の一言一言に弱ってるぅぅ!!
すっげぇ楽しい。
「…どうしてそんなにうれしそうなのか、わかんないけど。もう帰ってもいいかしら…?」
「眷属以外に用は為し。すでに縛は解かれてある」
ことさらに冷たく装った様な声で武者小路は言った。
「修練が足らぬか…」
ぼそっ、と言い残すと、そのままふらりと立ち去っていった…。
目元がきらっ、と光っていたのは俺の見間違いだろうか…。
泣くなよそれぐらいで。
時代劇め。
で、ああ面白かった、の後で…よく考えると…。
どうするんだよ。
この子。
「でどうする?」
「どうしたらいいのよっ?」
俺に聞かれても。
「ごく単純な事を聞くけど、これで帰れないの?」
「元々召喚されるような悪魔的なものなら、帰る力もあるんでしょうけど! 私は無いの! そういうのは!」
「だってここから…」
「聞いてなかったの? 人の話! 私は不死者。ノスフェラトゥ」
「ってなによ」
「…ばかね。そう言うのウトい人? 平たく言うと…」
「ふんふん」
「吸血鬼よ」
そうですか…あの血を吸うという映画とかで有名な…。んう?
「悪いヤツですか?」
「相手次第。映画じゃないんだから」
そう…普通と変わらないのかも。
あはあはあは。
隣に吸血鬼がいるって…この状況はどうよ。どうよ?
生命の危機?
身にせまらねぇ生命の危機だな。テンション低くぅ。
「…召喚出来るものだったのか…」
「無理矢理、ここに連れて来られたのよっ! 拉致監禁よ!犯罪行為っ!」
かといってどうするわけにも。
「悪魔じゃないの?」
「どっちでもいいわよ。この」
ふてくされた様に横を向く、この目の前の女の子は…極めて普通。
吸血鬼、とか言われてもなぁ。
それに…なんですか? そのペンダントの十字架は。
「確か色々ダメなものがあるんじゃなかったっけ? 何、その十字架」
「…いいでしょ! どうだって!」
実に投げやり。
「日の光も平気?」
「嫌いなだけよっ。ニンニクもね!」
「聖水とか」
「普段持ち歩いてる人がいるなら、困る事もあるでしょうね。持ってる?」
「生まれてから一度も。持ち合わせた事ねぇっす」
「じゃ、たいしたこと無いじゃん」
「そうっすね。そういえば」
ホントに血を吸うってアレなんかい??
「私一応“真祖”だから…」
「なんすか、ソレ?」
「血を吸われて吸血鬼化した従属ではなく…生まれた時から…気が付いた時から、人の命を吸い取って生きる者だった…って事…」
「…」
突然、何?
その女の子は無言のまま、じっと見つめてくる。
「…あんたにそんな事言ってもしょうがないじゃん…」
「…実にその通りだけど…んん?」
「……」
何だ、また動きが止まった。
じっと何か考えている。
いきなり、ふらり、と立ち去っていく。
「あ…どこ行く?」
「…?…どこかに行こうなんて…考えた事無いわ…考えても…」
言葉を吐き捨て、歩き続ける。
小さく呟いたその言葉の終わりは風に紛れてどこかに消えていった。
俺の足も動き出していた。
知らないうちに。
「当てがあるのかよ」
「在ったらどうするの…? なかったらどうするのよ…?」
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廊下をひたひたと。
彼女の後ろについて行く。
武者小路のバカめ。責任取らずにどうするってんだ。
俺が取るのか…責任って…なんでだぁ???
割り切れない気持ちを抱いたまま、何となく後ろについて行く。
あのまま屋上で寒いままいてもしょうがない、と言う理由だけだ。
あの不可思議な儀式は一応置いておこう。
目の前の彼女は、自分を吸血鬼とか言ってるけど、
本当かどうか疑わしいと思っていた。
例えそれが本当でも嘘でも。
目に映るこの風景は圧倒的に…普通だった。
「どこまでついてくるのよ」
「俺もこっちに帰るんだよ」
教室によって荷物を取ってくる、と言うのは考えない事にした。
それでも、彼女はそう慌ててはいない。
「こんな事よくあるのか?」
「在るわけ無いでしょ。元々召喚される者じゃないんだから。そんな話聞いた事がない」
「これは全くのイレギュラー。本来、あり得ない事よ」
「それにしちゃ、落ち着いてるな」
「…」
「もっと慌てふためいて、元の場所に戻せ、と迫るのかと思った」
「…理不尽には慣れてるのよ。元々」
振り返り、彼女が見せた笑顔は…太々しく見せかけようとしていたが、その中に淋しさを隠し切れていない。
「金あんのか?」
「……」
「ないならおごる。温かいのでも飲まない?」
「いらない」
いきなり振り返り、指をさしてくる。
何で怒ってるんだ?
「って言うか、何にも知らないのね?!」
「は?」
「生き血以外は、栄養にならないのよ。私たちにとってね!」
「……」
「なるほど…理不尽だ。蚊みたいなもんか…」
「蚊………………………」
「蚊ってなによぉっ!!」
大激怒。
「お、くるか」
恐怖というのは雰囲気だ。コワそうなとこにしか恐怖はない。
こんな昼日中、見た目普通の女の子がなんだかんだって、そんなのコワいわけない。
来るならきてみろぃ。
「コワくないの?! わたしがっ!」
「要は噛みつかれなきゃいいんだろ。ほれほれ」
「……ふ~ん」
壁に這っている何かのパイプなのだろう、それを掴むと…いとも簡単にむしり取った。
「んげ」
ものすごいバリバリと音を立てて、それでも、まるでそこに置いてあるのを軽く持ち上げただけみたいにごく自然に。
千切られたパイプから、ぼたぼたとボルトやら壁の破片やらが落ちる。
「知らないって言うのは幸福な事ね。同時に不幸でもあるけど」
にやり、と不敵な笑みを浮かべると彼女はその千切られたパイプを手に、にじり寄ってくる…。
や、やばいかも。
…宿直の先生に怒られてしまう。
いや、そうでなく。
やばげな雰囲気…仕方ない…とっておきの隠し球…
話術だ!!
「…そんだけ力があって、吸血鬼。不死者ってこたぁ長生きするんでしょうな。じゃ、何で理不尽に慣れなきゃいけないんだ?」
「………」
動きが止まった。よし!!
「こんな…力じゃどうしようもないの。そう言う事もあるの…」
「それすなわち! 無力なり!」
「うっ!」
びくり、と彼女の身体が雷鳴に怯える様に硬直し……動きが止まった。
よし!!
「ほほぅ…動揺したか…未熟者め。腕の力があるのは結構。“魔”の力があるというのも仮に認めよう。だがしかし! 貴君に足りぬのはココロの力だっ!!」
びしっと指さす!!
「………っうっ!!」
彼女の手の中の千切られたパイプが、がらん、と音を立て床に転がる。
……は…入ったか?
彼女の身体がふらふらと揺れている。
入ってる。入ってる。
話術。話術。
「他人には力為し得ても、自らに力及ばぬ限り! その存在には意味がないっ!」
「………くっ」
予想外の事が起きた。
彼女の瞳が潤んだと同時に…大粒の涙が溢れ出してくる。
え…?
「…なによぅ…………そこまで言う事ないでしょっ!!」
そう言うと彼女は顔を覆い、しゃがみ込んでしまった。
クールぶっている仮面が呆気なく剥がれる。俺のクソはったりの一言で。
いじけ気味の吸血鬼少女は弱々しく呟いた。
「いいの。どうせだめだもん。私なんか…私なんか…」
うじうじうじうじ。
いや…そう言う反応をされても…。
目の前に座り込んで泣き出してしまった女の子を前にして…昔こういう事があった様な気がしていた。
でじゃぶーとか言う奴だ。
でも…その記憶の中の光景で、俺は小学生だった。
あの時は…どうしたっけ。
どうやって泣きやませたんだったっけ…。
「ま、まぁ…とにかく、ここから離れよう。壊したのがバレたらまずい」
ぐしぐしと涙を手の甲でぬぐいながら立ち上がる彼女は記憶の中の女の子にそっくりな様に思えた。
「いいから、泣くなよ。もう」
「……」
どうしたらいいのか。
あれからもう結構時間が経ったはずなのに…俺は何の答えも見つけていなかった。
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とりあえず、手を引いて、表には逃げ出したものの…いくとこって。
俺んちぐらいしか。
「どっか、行くつもりだったとこ在るのか?」
あれからずっとぐずぐずと泣き続けている彼女は、顔を伏せたままぶんぶんと首を振る。
髪の毛がばさばさと揺れる。
「うち今、誰もいないから。吸血鬼がいても誰も気にしないから」
「………………………」
しゃべってよ。
「行くぞ」
「………!」
手を掴んで引っ張ると、振りほどいて…いやがる。
強引にひっつかんで引っ張っていく。
歩みは遅く、引く手は重いが…大人しくついてくる。
もう。
恥ずかしいのを少し我慢して…。
俺は彼女を家まで連れて行った。
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何か家まで戻ってきてしまったが……状況は1ミリの変化もなかった。
「メシ食うなら、何か用意するぞ」
そのな。
カーテンのはじっこを掴んでいじいじするのは止めろ。
「どうせ食べたって…なんにもならないもん」
はぁぁぁ………。
そうですか。
「他に何か食えるものは?」
「…………詮索されるの嫌い」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………。
そうですか。
「布団だけ用意して置くから。風呂は勝手に入ってくれ。俺、寝る」
「俺、明日も補習で学校だから」
「学校……他に誰かいる?」
「あのバカ天才がいる。アイツの生き血吸っちゃえよ。俺が赦す」
勝手に赦されて武者小路は大迷惑だろうが。
「じゃ」
俺は二階に上がり、ベッドに潜り込んだ。
その後彼女がどうしたのか…
俺は知らない。
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「本当に一緒に行きたいのかぁ?」
「補習だぜ。しかも、教師役があれよあれ。武者小路バカだぜ」
俺が心配していたのはまた顔を合わせたら…険悪な雰囲気になってしまうのではないか、と言う事と…。
会話がまた、小難しくなってしまうのではないか、と言う事だった。
武者小路の生き血の件は知らんぷりだ。
「いいの。学校久しぶりだから」
「同い年ぐらいに見えるけど…」
「詮索はしないで。約束でしょ」
へいへい。
と言う事は…素直に出て行って武者小路と鉢合わせ、と言うのは…避けたい。
いらねぇってのに迎えに来るバカ天才と時間をずらす為に、俺達はかなり早めに家を出た。
もしかしたら、校門が閉まっているかもしれない。
武者小路が鍵を預かっているのなら…少し待つ事になるな…。
もう少し時間をかけるか…。
「どうする。コンビニ寄る?」
「寄って何買うのよ。トマトジュース?」
「飲めるんなら、金出すよ」
「お金なんか…何とでもなるわよ。こうすればね」
彼女がほんの少しだけ、スカートの裾をまくってみせる。
なるほどね。
全く一文無しなのか…。
校門は開いていた。
もう、宿直の先生が開けたのだろう。
「俺、ちっと何か飲み物買ってくる。ホントに何もいらない?」
「いらない」
どこに行く気なのか、俺には判らない。
本気で補習を受ける気なのかも。どこまで本気なのかも。
「どこの教室か判る?」
「適当に歩いてく…行かないかもしれないし。どうでもいいし…」
ふらり、と彼女は離れていった。
その後ろ姿はすぐに角に消え…俺は追おうとは思わなかった。
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重い足を引き摺り、重い心を抱え、階段を上がった廊下の角を曲がったらいきなりバカがいた。
西木真智子、と言う気持ち悪い生物が。
「というわけです」
いきなり現れてそれかい。
「はいわかりました」
「話し合わせないでくださいぃぃぃ」
いいから。
それで納得して帰って。お願いだから。
「ついにこの時がやってまいりましたぁ。催眠術しょーぉぉ。本日、天文部部室にて、だいっ、こうっ、かいぃぃぃぃ!」
「…聞こえなかったふりで、そのまま流してもいいんだけどな。一応、聞いとこうか。誰が! 誰にぃっ!! 何をするのかあっっっ!!!」
「私ことぉ、大催眠術師予定、趣味の日曜催眠術師、西木真智子嬢がぁ……」
自分に“嬢”をつけるな。
「間宮乃々子嬢相手に繰り広げるぅ……催眠術ショーでぇす。観覧ご希望の方はぁ…住所氏名年齢等、お葉書に…」
「じゃ…行くから。俺」
「まってぇぇぇぇ!!」
ええい。すがりつくのはよせっ。
「別れろ切れろは芸者の時にぃいう言葉ぁぁぁ」
「違う世界に行くんじゃねぇ!」
「誰かいてくれないとぉ、催眠術が証明出来ないのぅ」
「第三者の証言が必要と言う事か?」
「ほめたたえる愚者が必要ということなのよぅ。ホームズのワトソン君みたいなぁ」
存在そのものが異世界だよ。アンタはもう。
「わかった! 気が向いたら行く!! だからもう離せ!」
「あなたはだんだんきがむいてくるぅ………」
目の前で何か揺らしてんじゃねぇ。
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はふぅ。何とか振り切ったか。
さて……どこ行くかねぇ…?
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// 選択肢
// 天文部部室に行けば。自己催眠は人間を猫化出来るか?編へ
// あの扉が心に残っていれば。降り注ぐ聖歌、遠い夏の果て編へ
// 教室で待っているのが吸血鬼。ノスフェラトゥ編へ。
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このあとは各編へ。
お好みのままどうぞ。ブックゲーム形式になってっかな?
随時アップしていきます。よろしくぅ。




