なみにからむ
夜の浜辺。焚き火の炎に照らされながら、二人は熱く絡み合う。
パチリと火の粉が爆ぜ、日に焼けた肌を焦がす。そしてそれを波がくすぐるように冷やし、
「もうここまで波がーーあン」
足を波が濡らし、そこに分け入ってくる別の足をぴしゃりと叩く。
クスクスと笑い合い、微笑みを口唇で挟んで溶かし、浜辺から身を起こそうとして、
波が足に絡む。
ズッ、と引き波と共に身体が引かれ、
「なに?」
足に絡む波には、ビニールのヒモのようなものが無数になびいていた。
コンビニやスーパーマーケットのビニール袋が日に焼けて溶かされ、一塊の帯のように伸びて、そこに飲料や洗剤のペットボトル、タイヤやチューブなどのゴムがまだらに水面から顔を出し、それらに魚や海鳥が絡め取られて腐れ果てている。
引き波と共に、ズズッ、と身体が引かれる。
「助けーー」
「たすけて」
自分が言いたかった言葉を言うのは誰か?
波に絡め取られパクパクと口を開く魚や鳥?
違う。
その中から伸びる手がある。逆様に足掻く足がある。海水に膨れ、日に焼けただれた顔がある。
「だずげで」
「ひいぃっ!?」
ズルリ、と身体を飲み込まれ、波に絡まれ引きずり込まれる。
伸ばす手は砂を掴むだけで、足はビニールがまとわりつき、そのまま波に拐われていく。
「だずげで」
その声は誰のものか? 波に絡まれ、もうなにも、わからなくなった。
マリンデブリの話です。
なにかのニュースだかドキュメントだかで見たビニールと海草の塊みたいなヤツがすごく気持ち悪くて、それが無感情に波で押し寄せて来て絡み付いてきたら怖いなぁ、と思って。
あとは砂浜でするのは色々大変だとかゲフンゲフン。