幕間 S級パーティ神狼の牙
シェイラがディルカンに到着した頃、彼女の師匠が属したS級パーティである《神狼の牙》の面々はカルナ・ナッツィについて愚痴を漏らしていた。
屈強な身体付きをした《神狼の牙》のリーダーは右手に球形の氷を入れたアルコールのないオレンジという果実ジュースが注がれたグラスを持ちひと口も飲んでいない。
「カルナの奴、また迷宮か?ウチの戦闘狂は今ごろなにを狩ってるのやら……今の時期、どこかしらに竜が暴れてるから助けてくれ、なんて依頼はないしなぁ」
「カルナさん、一人で竜を一体倒せるなんて規格外でしょ!このパーティで、満足して……ないですよね?確か何年前にパーティから逸れて、誰かを稽古してましたよね……たしか?」
「規格外は有り難いことだけど、街や村を全壊するのは遠慮してほしいよね。まったく彼女は……」
「僕らを見放して、ソロで行くって言いそうですね……いつか」
ロバスト・スヴァグの愚痴に頷いて面々がカルナが規格外と評していく。
竜をカルナ一人で倒したことを漏らしたのはレイエンデ・アッルティッドで魔法使いでスープを啜っていた。
依頼達成するが街や村を全壊することを愚痴るのはテーブルの中央に置かれた晶魔石から別の依頼を受けている少年の声だ。
いつか《神狼の牙》を見放してソロになるとか考えただけで大損害なことを言う弓使いのスパンナ・セトスという少年。彼はブドウという果実のジュースを飲んで骨付き肉に齧り付いている。
ディルカンから北東の大陸のメデルハヴェットという都市のある酒場に食事を摂っている《神狼の牙》だ。
メデルハヴェットという都市には迷宮があり、攻略はされていないが、彼らのパーティ《神狼の牙》が攻略候補に挙げられている。
迷宮の攻略候補に挙げられているわけは、76層まで到達して層のボスの魔物をカルナが狩って冒険者ギルドに持って行ったからである。
S級パーティが受注する依頼は神亀の月には中々降りてこない。
S級パーティしか受注出来ない依頼が幾つも有れば、都市の危機が迫っていることになる。
平穏な暮らしを望むのは当たり前で——だが、カルナは平穏な暮らしを望みはしない。
毎日渇望していた、彼女は。
「スパンナ、グルリグはまで寝ているのか?待つのは待つで退屈だな」
「はい、姿を見せないということはそうだと思います。迷宮に潜るんですか、ロバストさん?」
「迷宮か〜今からは憚られるなぁ」
ロバストがスパンナにパーティメンバーの一人であるグルリグ・ブロムマのことを聞いて首を鳴らした。
「早朝から潜るなら良かったですね、こんな中途半端な刻限だと難しいですね」
首を横に振ったロバストにスパンナは頷いた。
神亀の月は夏の季節で、春は妖精の月、秋は不死鳥の月、冬は竜の月となります。
神狼フェンリルは魔物でもあり幻獣でもある設定です。
スウェーデン語群で、メデルハヴェットは地中海ですが関係ないです。ロバストは頑丈でスヴァグは弱いです。酒に弱いからです。
スパンナは弓を引く、です。レイエンデ・アッルティッドはいつも笑顔なを逆にしたのです。