稽古に迷宮へ
私が建築の仕事から帰ると宿屋の前で背中で腕を組んで身体を左右に揺らしている少女がいた。
「エリス、また稽古かい?」
「うん!!師匠早く早く〜!!」
「食事を摂ってからにしてくれ、エリス」
「じゃあ早く食べてよー」
私はエリスを連れて酒場に赴いた。
「エリスはもう食べたのか?」
「ううん、まだ!奢ってくれるの?」
「ま、まぁね……食べたい物を頼みな、エリス」
「わーい、やった〜!!」
私は二人分の食事を頼んで、エリスと食事を摂った。
「美味しい、美味しいね師匠!!」
「美味しいね」
彼女は屈託ない笑顔を浮かべ焼き魚を頬張る。
私は苦笑していたように思う。顔に出ている気がしたから。
食事を終え、一度宿屋に戻った。
汚れても良い服に着替えた。
私が着替えている時にエリスがぺたぺたと肌を触ってきた。
「師匠って深い傷がないんだね」
「ああ、目立つ傷は負ってないからな」
「そろそろ稽古しようか?」
「うん!!」
「迷宮での実践をそろそろしよう、エリス」
「だっ迷宮……強い魔物がいっぱい居るところだよね?ほんとに行くの?」
エリスが初めて慄いた。
「さっきまで稽古稽古っていってはしゃいでいたのはエリスじゃないか。魔物を倒すには良いくらいだ。やめるか、今日は?」
「やぁ……やる。やるよ、師匠」
「そうか」
私は彼女を連れて彼女の自宅に赴いた。
玄関扉をノックしたら、彼女の父親が出てきた。
「帰ってきたか、エリス……ってどちら様です?」
「お父様、娘さんに戦いの基礎を教えているシェイラという者です。娘さんを迷宮に連れて行きたいのですがお父様はどうでしょうか?」
「どうって……強い魔物がいっぱい居るところでしょ?そんな危険なところにエリスを……エリスの安全は確保できるんでしょうか?出来るなら貴女に預けますが……」
「無理はさせませんので安心してください」
「私が行きたいって言ったんだパパ」
「そうか……気を付けて行ってくるんだよ。シェイラさん、無事に帰ってくるのを願ってます」
「わかりました。娘さんを無事に送り届けます」
「パパ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
私とエリスは見送られ、彼女の自宅を後にした。
迷宮に到着して、私は迷宮の大きな扉に掌をかざし、扉を開けた。
淡い青い光が私たちを染めた。
「迷宮……」
「10層まではF級冒険者5人パーティで進めるから、そんな身構えなくて平気だよエリス」
「私にはそれが簡単なのかわかんないですよ、師匠…….」
私たちは迷宮へと入っていく。
「私の後に着いてきたら平気だよ」
私は彼女が罠に嵌まらないように守り、迷宮を進んでいく。
「思ったより明るいんですね、迷宮って」
「ほら、お出ましだよ。はい、これも使って倒してみて」
私の前にゴブリンが5体現れ、立ち止まり、エリスに戦うように促す。
「えぇ……重っ……もうでぇ、うわっ」
先頭に居たゴブリンが棍棒を振り上げ、エリスに襲い掛かった。
間一髪で避け、彼女にとって重い短剣を振り上げ、襲い掛かってきたゴブリンに斬りかかった。
「やぁぁああぁぁ!!!」
斬られたゴブリンが立ち上がり、再びエリスに棍棒を振り下ろす。
「ウォーターカッター!!!」
エリスが身体の前に片腕を伸ばし、掌から水の斬撃を繰り出す。
「グギャャャーー!!」
一体のゴブリンを倒したエリスに残りのゴブリンが一斉に襲い掛かった。
ゴブリンの棍棒や槍、剣が当たる直前に水の球が現れ、水の球がゴブリンの身体に穴を開けた。
「グゲェェェーー!!」
4体のうち一体が倒れず、痛みに構うことなく、再びエリスに襲い掛かった。
エリスはゴブリンに剣を突き刺し、残ったゴブリンを倒した。
エリスはゴブリンに短剣を突き刺し、そのまま柄を離し、座り込む。
「こっ怖かったぁぁーー!!」
「上出来だ。見事だったぞ。さぁこの調子でもっと狩っていくよ」
「ちょちょ……師匠待ってくださいよぅーー!!」
私はゴブリンの身体から短剣を抜き、ゴブリンの血を払い落とし、鞘に収めた。
層のボス魔物は私一人で狩り、エリスが狩れそうなゴブリンやオーク、スケルトンは彼女に任せた。スケルトンは私が波照でとどめを刺した。
彼女は怪我を負ったが回復薬で治した。
迷宮を後にし、エリスを自宅まで送り届け、宿屋に帰った。




