053-ネムの才能
「うーむ.....やっぱりわからんな」
『ええ』
俺はとある画面を前に、考えを巡らせていた。
それは、「ラー・アーク」の解析結果だった。
「動力炉は反物質だとしても、皇国の技術体系でここまで辿り着くのは不可能だな」
ラー・アークは何らかの形で皇国に流れ着いたオーパーツであり、それは皇国に不相応な技術を与えた。
技術が発展しているように見えて、技術に振り回されていたのはこれが原因だ。
基礎のスキルツリーが伸びていなかったのだろう。
「駆動部分は殆ど解析して、こっちの技術体系に適用できるんだが........問題は、武装なんだよな....」
あの凄まじいエネルギーをどこに回していたのか、砲塔の本来の最大出力ならば15分間撃ち続ければホールドスターのシールドを完全に破壊できたはずだ。
その砲塔なのだが、原理が分からない。
『こちらのレーザー砲と同じく、何かを経由させて変調した光線を放つエネルギー兵器なのですが....その”何か”が全く未知の鉱物です』
「これの量産は出来ないか.....」
『ただし、未確認の存在であるドローンの攻撃機構に、これと同じようなものが組み込まれていました』
「......何?」
どうやら、この騒動はそう単純なもので終わらないようだ。
さて、日々の業務に忙しい俺だが、ネムとルルにも構ってやらないといけない。
娘のようなものだからな、妹も俺が出かけるときに寂しがっていたし。
「だが、こんなことでいいのか?」
「うんっ!」
俺はネムの遊び.....おままごとに付き合わされていた。
ただ、そのおままごとは少々過激だった。
「さあ、掛かってきてっ!」
「ルル....これは一体?」
「その.....魔法の鏡で、見た騎士様に影響されてしまって....すみません!」
おもちゃのサーベルで、ネムと戦う事になってしまった。
だが、意外に手強い。
「やあーっ!!」
「くっ!!」
俺は運動は不得手だ。
妹にもすぐ抜かされたし、体育の成績も振るわなかった。
だが、ネムはその一挙手一投足に、才能を感じさせた。
......まあ、獣人は寿命が短い分、成熟するのが早いらしいので、俺が単純に圧倒されているだけかもしれないが。
『そこです! 胴ががら空きですよ!』
「オーロラ、お前どっちの味方なんだ!?」
しかも、オーロラが手助けするせいで、俺はますます追い詰められていた。
まずいな、ここで負けるとちょっと悔しいぞ。
だが、強引に攻めるのも大人げない。
俺が落としどころを探っていると、ネムが先に折れた。
「大丈夫か!?」
「ぜぇ....だ、大丈夫っ....はぁ......」
瞬発的に体力を上げていたようだ。
これも獣人の特性か?
とにかく、これ以上続行できそうにはなかった。
「オーロラ、教練用の武器はあったか?」
『対人訓練用はありますが....もしや、剣士にされるおつもりですか?』
「いや.....少しでも目的をもって楽しめるものがあれば、この退屈な城塞も少しは輝くと思っただけだ」
『そうでしょうか.....』
ネムは確かに才能を持っている。
俺が汗びっしょりになっても綺麗な勝ち方を見つけられなかった。
瞬発力、洞察力も合わさっているところを見ると、指揮官向きかもしれないな。
「出来れば二人には戦ってほしくないんだが.....なんでこうも才能があるんだろうな」
俺はぼやきながら、汗を流すためにシャワー室へと向かった。
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